本日の死傷者は合計4名です。
お久しぶりです、亀&亀裂更新になってしまってすみません!
今回はside:unknownです。弥佳紗が襲撃された裏が少しは明かされるかも?
清蓮学園での火災発生がトップニュースとして世間に駆け巡った日の夜。
今日が昨日に変わる時刻。
東京サークルのディストリクト1某所にて。
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「申し訳ございません」
中心街から少し離れた所にある夜の町。
バーやキャバクラ、ホストなどが犇めき合う煌びやかな場所。
そこに位置するとある店のVIPルームでは、一人の女が床に頭を擦り付けて震えながら謝罪していた。いや、謝罪というより命乞いに近いかもしれない。
ただ謝るだけならこんなにも声は震えない。
そしてその声が向けられた先では、男が黒い皮貼りのソファーに座ってゆったりと寛いでいた。
彼はソファーの端から出た左腕をダランとさせ、右手で紅い液体が入ったグラスを傾ける。
血のように紅いそれを味わうようにゆっくりと燕下する女に言葉を返す気など微塵も見られない。
そこに何も存在しないかのように土下座する男を無視してグラスを揺らして液体を弄ぶ。時折口元を近付けては大きく息を吸い込み中身を味わう。
しかし、そんな些細な行動が場の緊張感を募らせていく。
何も言わない。
何の反応も見せない。
銀髪の男の部下にとってこれほど怖いことはない。
そして、床に這いつくばる女が全身を痙攣させ始めた頃に男が問うた。
「何が?」
本当に何に謝られたのか分からず疑問に思っているかのような声で聞く。
しかし床に這いつくばる女は目の前にいる己の主が何も知らないはずがないことを十分理解しているが故に震えは止まらない。
むしろ酷くなりながらも必死に答える。
「に、に任務に失敗したことです」
「どんな?」
「黒羽弥佳紗が暫く動けないように負傷させることです」
「誰からの依頼だったっけ?」
「……様です」
「で?」
「はい?」
「だーかーらー、お前は今回の仕事が如何に重要か承知して臨んだんだよね?そうでしょ?」
サイドでユルく紅い髪紐に縛られた滝のように流れる銀髪を弄ぶ男。
天井に吊るされたクリスタルシャンデリアから発せられる落ち着いた光りが彼の美貌を余すことなく照らす出す。
彫りの深い赤色の瞳、薄い唇に陶器のように白くきめ細かい肌、高くて真っ直ぐな鼻筋。
人間のはずなのに、温度を一切感じさせない男はまさに彫刻の様。
もしこうして口を開き、声を発することがなければ人間であると確証を持つことはなかったであろう。
「何で失敗したの?」
「…それはっ、予想以上に、」
「僕は”言い訳”ではなく、”理由”を聞いてるんだよ」
「っ、違います!!データと違って…」
「…ふーん、そ。………あ、キミにつけた3人とも戻ってこないんだよねー」
「!?」
「正確には、死体としては戻ってきてるんだったっけ?」
「……っ、今度こそ私めが必ず成功させてみせますので、もう一度……」
「ねぇ、『黒椿』なんて名前、僕がつけたんじゃないんだよ」
「は?」
「なーんかね、敵も味方も関係なくボトッと命を切り捨てるところが椿に似てるから、僕たちは『黒椿』なんて呼ばれてるんだって……馬鹿馬鹿しいよね。
始末するなら一撃。
証拠も残さない…そんなのあたりまえ、でしょ?」
「あ、……」
「……あぁ、そうそう。依頼主の内の1人がとある食品メーカーの社長さんなんだけどね、その人が言ってたんだ。ライバル会社に最新式の業務用電子レンジが納品されるって。
それに依頼もくれたよ。
『ライバル社の新製品を潰してほしい』ってさ。
……丁度いいと思わない?君の最後の仕事に、ね?」
突然脈絡の無いことを喋り始める男。
紅い唇を歪めて妖艶な笑みに幼子のように無邪気な声。
相反する二項。
どこか黒椿の長たるその男にはその矛盾が似合っていた。
そして彼がカランカランと音をたてて下駄に足をかけると、突如として3人の黒服の男達が現れて女を囲む様に陣取った。
「シュラ様?」
女が掠れた声で主の名を呼ぶ。
男はそれが聞こえていないかのように表情一つ変えず、黒い着流しに白地に紅い椿が描かれた羽織を肩にかけ女の横を通りすぎる。
下駄の音が響く。
銀髪はシャンデリアの光を反射し、ルビーのような深紅の瞳は虚空を写す。
一秒一秒が長く、重い歩み。
それは男がドアノブに手をかけたと同時に終わりを告げる。
辺りの空気が急激に異界から現に戻った気がした。
そして彼はクルリと振り返って一言だけ、
「お前たちなら分かるよね?」
と残した。
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この僅か数時間後。
「大手食品メーカーの工場で新型業務用電子レンジからミンチ状の遺体が発見された」
というニュースが世界中を駆け巡ったのだった――。
今回もこの作品を読んでくださった皆様に感謝を。




