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英雄譚のその後で

作者: ティラナ

連載にしようか考えている作品です。

拙作ですが、よろしくお願いいたします。

 


 ────異世界へと転生した1人の男がいた


 ────彼は前世の知識と生まれ持った魔法の才能を活かして、仲間とともに魔王の討伐に成功する


 ────これはそんな英雄のお話











 ジリリリリリリリ……!


「んあぁ……。 朝か……」


 けたたましいベルの音とともに目を覚ました俺は、手探りで枕元にあるそれを停止させる。

 日が長くなり最近ようやく明るくなり始めたが、人々が動き出すにはまだまだ早い時間だ。

 俺は一人ベッドから抜け出してリビングを通り抜けて洗面所へと足を運ぶ。 洗面台に取り付けられた鏡に映るのは、茶色の髪に緑色の瞳をした青年だった。

 別に何を驚く必要もない。

 これが俺の、今世での姿なのだから。


 蛇口を捻って冷たい水が溢れ出すのを両手で掬い、塞がりそうな瞼を強引にこじ開ける。

 壁に掛けてあるタオルで顔を拭いたらリビングと一体化しているキッチンに向かった。 いわゆるリビングダイニングキッチンってやつだ。

 昨日のうちに買ってあった食材を魔法式冷蔵庫から取り出し、魔法で火をつけたコンロにフライパンを乗せ卵を焼いて行く。

 今日は目玉焼きにしよう。 パンで挟みやすいようにターンオーバーで。



 今の名前は、アルベルト・マークイズ・ダルク。

 まぁ、今の名前なんていうわけだから昔の名前があるわけで。 その名前に関しては関係ないし、いまさら名乗るつもりもない。 ただ、まぁ、前世では日本の社会人だった。

 大学を卒業して社会人として働いて3年。 仕事柄、年齢の近い異性と出会う機会もなく、結婚とかどうするかなぁとボンヤリと悩んでいたところ暴走した自動車に轢かれて死んでしまった。

 それが気が付いたらこのファンタジー世界にアルベルトとして生を受けていたわけだ。


 初めこそ苦労はあったものの、慣れて仕舞えばどうということはない。 いまとなってしまっては、本当に前世なんてものがあったのかも怪しくなってくる。 前世に俺が生きていた証拠なんてどこにもないし、もしかしたら妄想か夢の類なんじゃないかとも思うときがある。

 薄情かも知れないけれど、前世の家族や友人を恋しく思うことはもうほとんどない。 この世界に俺の家族はいて、友人もいるのだから。


 さて、卵が焼きあがり、魔力式のトースターに入れていたパンもちょうどよく焼きあがった。


「そろそろ起こしに行くかな」


 布巾で軽く手を拭いてから、俺は先ほどまで自分がいた寝室に向かった。

 この家は一人で住むには広すぎる。

 リビングダイニングキッチンと、そこから繋がる寝室と仕事部屋、客間。 それから二階には書斎と今はまだ物置として使っている部屋が2つある。

 間違いなく一人用の家ではない。 実際に俺も一人で住んでいるわけではないのだから。


 寝室に入ると、同居人は掛け布団の中に頭まですっぽりと収まっており、真ん中のあたりがこんもりと山になっていた。

 たぶん、胎児みたいに丸まって寝ているんだろうな。


「ルーチェ、もうそろそろ起きないと学校遅刻するよ?」


 そろっと掛け布団を捲ると、予想通りの姿で美少女が眠っていた。 いや、どちらかというと美女だろうか?

 俺と同い年の彼女は、その小柄な体格のせいもあり外見は実年齢よりも幼く見える。


 金色のストレートヘアを腰よりも少し上くらいまで伸ばしており、ベッドに広がるそれは一種の芸術のよう。

 肌は透き通るような白で、サラサラとしていてとても触り心地がいい。


「うにゅう〜」


 窓から差し込む朝日が眩しかったのか、もぞもぞと動き出した。 何かの幼虫みたいで面白い。


「ほら、起きて」


 背中をトントンと叩きながらそう声をかける。

 美少女────ルーチェの朝はいつもこう。 いまさら驚くことでもない、俺たちにとっての日常だ。


「んぅ〜……んっ」


 何かを探すように伸ばされた手が俺の胴体を捉えると、ギュと抱き着いてきた。 そのままもぞもぞと動きながら、俺の体に自分の体を擦り付けるように近づいてくる。

 ルーチェは朝が弱い。 それは彼女自身も言っている。

 本人は寝起きが悪いと言っているけれど、俺にとっては役得以外のなにものでもない。


「もう、しょうがないなぁ」


 思わず緩んでしまう頬を隠そうともせずに、俺はルーチェを抱き寄せる。

 シンプルながらも肌触りのいいパジャマがルーチェによく似合っている。


「んん〜」


 俺が頭を撫でてあげると、ルーチェは気持ち良さそうに甘い声を漏らした。

 あぁもう、可愛いくらいしか言葉が出てこない!

 しかも本人はこれをほとんど無意識でやっているのだから恐ろしい。 天然の小悪魔め……!

 しばらくこの甘美な時間を堪能していたいけれど、朝という時間は限られている。 今日が休日でない以上、そうそうゆっくりもしていられないのが悲しい。


「ほ〜ら。 あんまりのんびりしてると遅刻しちゃうよ〜?」


「あんたは大人しくあたしの抱き枕になってなさい……」


 トントンと背中を軽く叩きながら声をかけると、余計に抱きしめる腕に力を込めてきた。 女の子の力だから、苦しいほどではない。

 むしろ素直に嬉しい。


「ふふ、よしよし」


 もうしばらくはこの甘美な時間を堪能してていいかな……。

 いや、遅刻しないようには気をつけるし……うん。

 それにいつものことだから、これを含めての時間だったりするのだから自分で自分に呆れてしまうね。


 ルーチェの抱き枕を務めることおよそ10分。

 ようやく目が覚めてきたらしい。


「んっ……」


 俺から離れて、ゴシゴシと目を擦っている。

 その瞳は濃いピンク色で、アメジストのようだ。


「目、覚めた?」


「ん」


 俺の問いかけに、ルーチェはこくんと頷いて答えた。

 多少は俺が整えたものの依然として髪は乱れまくりで、前髪が簾みたいに顔にかかっている。


「朝ごはん出来てるよ」


「……着替えるから先に行ってて」


「了解」


 いくらなんでも着替えてるのを目の前で見るわけにもいかないから、俺はキッチンに戻って料理の仕上げに入る。

 トーストはもう一度軽く温めなおして、目玉焼きはそれほど覚めていないからサラダと一緒にお皿に盛り付ける。

 食器棚からグラスも2つ出しておく。

 飲み物は牛乳がルーチェのお気に入りだ。


 そんなこんなをしていると、着替えを済ませ顔も洗い終えたルーチェが洗面所から出てきた。

 サラサラの髪質のおかげか寝癖は付きにくいらしく、朝髪を整えるのは早いらしい。 まぁ、サラサラ過ぎて困っていることもあるらしいけど。

 そしてルーチェはリビングに来るなり一目散に目的の場所────部屋の隅へと向かった。


「デルタおはよ〜」


 そう言いながら、自分の寝床で寝ていた一匹の黒猫を抱き上げた。

 この子はルーチェが10歳の頃から飼っている猫で、一応は魔獣の一種だ。 基本的に大人しくて、普通の猫と変わらないからペットとして何の問題もない。

 ………が、俺にとっては可愛いライバルでもある。

 朝は俺よりも先に挨拶をしているし、帰った時も俺よりも先に挨拶をしているし。 しかも、ルーチェは自分自身を『デルタ様のドレイ』と表現してるし。

 まぁ、美少女なルーチェが小動物を愛でている様は相乗効果で可愛さが倍増なんだけどね。


「おはよう、ルーチェ」


「ん、おはよ」


 何となく俺に対しては素っ気ないように聞こえるかもけれど、別にいまさらだし本当に素っ気ないわけではないから気にしない。


「冷めないうちにご飯食べよう?」


「えぇ〜、朝は食べなくていいよ」


「朝食べないとしっかりと一日保たないでしょ。 一口でもいいから食べて」


「う〜……。 デルタ〜」


 デルタへと逃げていこうとするルーチェを引き戻し、何とか一緒に朝ごはんを食べた。

 ルーチェは半分くらい残していたけど、いつものこと。 だからと言って初めから半分にするのは何となく俺のポリシーに反するから嫌なんだよね。 同じものを作るなら同じ量にしたい。



「寝起きのルーチェ、今日も可愛かったよ」


 朝食を食べ終えて、洗い物も終わったタイミングでルーチェの耳元にそう囁きかける。

 すると、恥ずかしかったのかやや頬を赤く染めながらばっと飛び退いた。もう一緒に暮らし始めて一年も経つけど、こういう初心な反応がまた可愛い。


 なんて思いつつルーチェの反応を見ていると、グッと足を踏まれた。


「いーったい、痛い痛い痛い」


「ふんっ!」


 まぁ、なんて言うか本気で怒っていると言うよりもいわゆる照れ隠しだ。 ただのツンデレちゃん。

 本人は腕を組んで怒ってますよ〜とアピールしてるけど、今にも『ぷんぷん』とか言い出しそうな感じで可愛い。

 そう分かっているからこそ、足を踏まれていてもついつい頬が緩んでしまう。


「もちろん、いつも可愛いけどぉおぅ!?」


「あんたはもう少し節度というものをわきまえなさい」


 さらに甘い言葉をかけようとしたら、今度は言葉より先にテーブルにあったペーパーナイフが飛んできた。 それを間一髪のところで避けるけど、あと少し気がつくのが遅れてたら顔に突き刺さってたわけで。

 まぁ、それも照れ隠しだと思えば可愛いもんだ。

 俺が避けられると信じて投げてくれてるわけだしね。


「当然、こんなことはルーチェにしか「【引っ張れ】!」……いふぁいれふ」


 ニッコリと微笑んで言葉を続けていると、ルーチェの魔法で俺の頬が両サイドからムニッと引っ張られた。

 ルーチェの使う魔法は古代魔法。 自分の求める現象を魔力によって再現する魔法だ。

 複雑な事象も再現できる反面、高度な魔法能力とイメージ力が必要になる。 間違ってもそう簡単にできる代物ではないんだけど……。


「ふふふ、おっもしろ〜い。 いい気味ね」


 本人は俺の顔を見て大笑いしながら満足そうに頷いた。

 無様な姿を晒すのは不本意だけど、ルーチェが喜んでいるなら何よりだ。 ただ、いい加減に頬が伸びちゃうんだけど……?


「ほら、早くしないと遅刻するわよ」


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、そそくさと自分の身支度を済ませたルーチェが言葉を投げかけてくる。

 ルーチェはめんどくさいと言う理由で化粧をしないし、女子にしてはだいぶ身支度にかかる時間が短い。 自分に興味のないことには全く時間をかけないルーチェらしいし、ルーチェは何もしなくても10人いれば10人が振り返る美少女だから問題ない。


 ただ、魔法を解除してもらわないことには外に出れないんだけど……。

 魔法に対する理解と力はそれなりにある方だけど、残念ながら俺はこの魔法を解除することはできない。 解除の仕方が分からないというよりも、ルーチェの魔法の力に俺の魔法の力が敵わないというのが理由だ。

 まぁ、正確には頑張ればできるけど、朝からそんな疲れることはしたくないと言うのが本音。


「ふぉっほ、ふぁっへ」


「ぷっ、ふははははは! しょうがないわね〜、直してあげる」


 気が済んだのか、手を軽く一振りするだけで魔法を解除してくれた。

 なんだか伸びてしまったような頬を片手で擦りながらルーチェに目を向けた。


「ふぅ〜、いきなり魔法使わないでよ」


「変なこと言った罰よ。 せいぜい反省しなさい」


 別に変なことを言った覚えはないんだけどなぁ、と思いつつそんな言葉はぐっと飲み込む。

 ルーチェのこれは何度も言うようにただの照れ隠しだ。 本人も可愛いと言われるのは嫌いじゃないけれど、恥ずかしくてどうすればいいか分かっていない。 だから、ついつい反撃(?)に出てしまうようだ。

 以前、『素直に『ありがとう、アルベルトもかっこいいよ』とか言ってくれればいいんだよ?』とか冗談っぽく言ったらいつも以上に酷い目にあったな……。


「ん」


 どこか遠い目をして身支度を終えると、ルーチェがコツンと自分の手を俺にぶつけてきた。


「ふふ、可愛い」


 これは彼女の手を繋ぐことの催促だ。

 本人は口で言うのが恥ずかしいから、態度で示しているわけだけど、それが余計に可愛らしい。


「また引っ張るわよ」


「それは勘弁して欲しいかな」


 そう言いつつも手は繋いだまま話そうとしないのだから、余計に可愛らしい……。

 いや、うん。 ルーチェがとにかく可愛いんだよね。


「マグノリア魔法学園まで私たちを運べ────【ワープ】!」


 ルーチェの命令に従って、地面に魔法陣が浮かび上がった。

 さっきの魔法とは比べるべくもない超高等魔法。

 それを簡単にやってのけるんだから、俺の嫁・は最高に可愛い。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「光には、直進、屈折、反射という3つの特性があります。 これは太陽の光でも、松明の光でも、光魔法による光でも変わりません」


 カツカツと耳に心地よい音を立てながら、黒板に光を表す白い矢印を何本も書いていく。

 それは理科の授業なんかで教わるものとほとんど同じだ。

 これを習ったのは前世ではいつ頃だっただろうか。 中学校に上がった頃か……?


「光の直進、これは簡単で、光は何もしなければ真っ直ぐに進むよーってこと。 途中で勝手に折れ曲がったりはしないの」


 ここはマグノリア魔法学園。

 永世中立国、マグノリア魔法学園国だ。

 学園国というのもおかしな話であるけれど、この国は国土の全てが学園の敷地であり、学園長が国のトップを務めている。

 文字通り、学園の国である。


 この国に通う生徒は実に多国籍だ。

 ギアルト王国やセプトール帝国、フィーフィア王国といった三大国はもちろん、ネシア諸島連邦やパンゲア公国をはじめとした様々な小国からも魔法を勉強するために人が入ってくる。

 入学資格はただ1つ、魔法を扱う才能があるということだけ。 入学試験で行われる魔力審査で一定の基準さえ越えれば、誰でも入学することができる。

 入学金や授業料は存在しているが、奨学金の貸与を受けることもできる。 マグノリア魔法学園で学び一流の魔道士となれば食いっ逸れることはないから奨学金を受けようとするものは多い。


「そして、光を発する物質のことを光源と呼びます。 いい? これテキストに書いてないからね?」


 そう言いながら、光源という言葉に赤いチョークでアンダーラインを引いた。


 マグノリア魔法学園は国としては狭いものの、国としての機能は一通り揃っている。

 学生寮や教員用の一戸建ての並ぶ住宅地区。

 生徒や教員が休日を過ごすための、繁華街。

 授業で魔物退治を行うためのゲルド大森林。

 普段の物資は近隣諸国からの輸入に頼っているものの、いざという時に備えての食料や物資の生産地区。

 そしてこの学園国のメインである、マグノリア魔法学園校舎。


 これがマグノリア魔法学園国。

 俺たちの暮らす国だ。


「さて、じゃあ実際に実験を行ってみようか。 各班ごとに配られたコップに水を注いでください」


 そして、俺はこの学園で教師を務めている。

 今年で2年目だけど、実際に担任を持つのはこの春からだ。 去年は副担任と教科担当だけだった。


 二度目の人生を手に入れた俺は、田舎の小さな村で幼少期を過ごした。 別に村を追い出されたという過去もなければ、村が盗賊やら戦争やらで滅びてしまったわけでもなく、ごくごく普通に日々を送っていた。

 ただ、俺にはチートというには程遠いものの、魔法使いとして食べて行くのには十分な魔力があった。 それに前世の知識を踏まえつつ、畑仕事をより効率的にしたりたまにやって来る魔物を返り討ちにしたりしていた。


 そして俺は12歳になったタイミングからは、農閑期になると近くの街に出て冒険者として小銭を稼ぐようになる。

 まぁ、農作業やら魔物撃退で磨かれた魔法は意外と強かったらしく、小銭どころか農業をするよりもいい稼ぎになってしまったわけなんだけど。


 そんな生活を送ること三年。

 15になった俺はこのマグノリア魔法学園に入学することになった。

 そのあとは色々とあった末に四年間の学園を18で卒業し、19から22までの三年間を魔法の研究やら教員としての勉強に費やしていまに至る。


「そしたら、そこに木の棒をゆっくりと入れてみて」


 俺が教えているのは『魔法応用学』という科目だ。

 既存の魔法に新しい使い方を見出し、魔法道具の製作やらより幅広い範囲での活用を目的としている。

 そんなわけで、この科目を受講するのは3年生と4年生。 今回は3年生の『魔法応用学1』。

 一応、必修の科目ということもあり、同じ授業をほぼ毎日行っている。 ……やっている内容は高校までの理科の授業なんだけど。

 今やっているのも中学校レベルの物理だし。


 俺の専門は前世の知識を活かして、科学的観点から魔法を解析して今までとは違ったアプローチで、魔法を生み出すこと。

 例えば魔法もエネルギー保存則に従うという点に着目した魔法の研究によって、魔力というのは質量を持たないエネルギーの粒子であるということを解明したりした。

 あとは実用的なものでは、カメラの開発とか蓄音機の開発、魔力式の自動車の開発なんかだな。 あとは、魔力を試験官のような瓶に詰めて必要な時に取り出せる仕組みを作ったね。

 ……まぁ、言って仕舞えば地球の科学者が歩んだ道をなぞっているだけなんだけどね。



 キーンコーンカーンコーン



 授業の終了を告げるチャイムが鳴り、ちょうどいいところで話を閉じる。

 実験器具はもう片付けてあるから、今日は時間通りに終わることができそうだ。


「はい。 それじゃあ、今日の授業はここまで。 最後に課題のプリントを配りま〜す。 次回の授業……明後日までに解き直しまでやって来てね〜」


「「「えぇ〜」」」


 今回の確認プリントを前から配ると生徒たちが声と表情で抗議をして来る。

 確かに宿題ってめんどくさいからねぇ、その気持ちはよーくわかるよ。 けど、教師の立場から言わせてもらうと宿題には重要な意味と価値があるんだから、どうにか頑張って欲しい。


「勉強っていうのはアウトプットが大切なんだから、頑張れよ〜」


 ニッコリと笑いながら抗議をスルーする。

 黒板に書いてある文字を魔法でササッと消してからチョークをケースに仕舞っていく。

 板書に使った自分のノートやらテキストを片付けていると、ノートとペンを持った女子生徒がやって来た。


「先生、少し質問いいですか?」


「あぁ、うん。 いいよ」


 早く移動しないと次の授業に間に合わない、という気持ちをグッと飲み込んで笑顔で答える。

 そもそも、授業後に質問に来てくれるのは素直に嬉しい。

 意欲的に取り組んで、最終的には魔法に関わる仕事に携わってくれたら教師として教えた甲斐があるというものだ。

 推薦欲しさにいい顔をする奴は好きじゃないけど、この子はそういうタイプでもないから大丈夫かな。


「確か、【光の矢】とか【シャイニング・スネーク】とかの魔法は光だけど途中で曲がっていたと思うんですけど、それはどうしてですか?」


「あぁ、あれは正確には光とは言いにくいんだよね。 あれの正体は光を放ち続ける魔力。 それが矢とか蛇の形をとって突き進むんだ。 光を放つことで相手の目を眩ませたりする目的があるから広く使われているんだよね。 そして最後に残っていた魔力が爆発を起こすことで破壊力を得るっていう仕組みなんだ。 だから、好きに動かすことができる」


 女子生徒の質問に黒板を使いながら説明をしていく。

 光の矢もシャイニング・スネークも、簡単にいうと矢と蛇の形をした光源を生み出す魔法だ。

 もちろん、光源そのものは光の特性に従うわけではないから魔力次第で好きに動かすことができる。


 ま、高度なものだとレーザー光を思うままに捻じ曲げるものもあるけど、あれは打ち出す前に決めておかないといけないしね。 光の速度に人間の思考速度が付いていかないわけだし。


「なるほど。 つまり、あれは光ではなく光源を ってことですね」


「うん、そういうことだね」


 この子は応用魔法学への関心がだいぶ深いらしいけど、反面、古代魔法に対しての関心は著しく低いらしい。 そんなことをルーチェが零していた。


「分かりました。 ありがとうございます」


「いえいえ、どういたしまして。 他に聞きたいことはない?」


「はい、大丈夫です」


 女子生徒が席に戻り片付けを始めたのを確認してから、俺は荷物をまとめて次の授業の準備をするべく準備室へと入った。




 5限まで終えたところで俺はようやく職員室へと戻ることができた。

 時刻はおよそ17時半。

 部活動に打ち込む生徒は光魔法によって照らされたグラウンドやら闘技場やらで頑張っているようだけど、そうでない生徒はぞろぞろと学生寮へと向かう時刻だ。

 ルーチェみたいにワープを使える生徒はいないからね。

 ま、残念ながら授業が終わったからと言っても、教師の方の仕事はまだまだ残っているんだけどね。


「お疲れ様です」


「お疲れ様〜」


 隣の席のシューヴァル先生と軽く挨拶をしてから自分の席に座る。

 シューヴァル先生の耳は長く横にピンと立っている。 いわゆる、エルフと呼ばれる種族だ。

 エルフの寿命は長く、若くして死ぬ場合を除くと平均して150歳くらいまで生きることができる。 そんなわけで、見た目が俺よりも少し年上の青年くらいのシューヴァル先生だけど、実年齢は40歳が近かったりする。


 そして仕事机に置かれているのは、パソコンをイメージして俺が開発した事務処理用の魔法道具だ。 もとは冒険者ギルドなどの受付で使われていたギルドカード登録用の水晶版で、それアレンジして様々なことができるようにしたもの。

 さすがに特別詳しいわけでもなかったから1からパソコンを作るなんてできません。

 これも日本のパソコンと比べればできることなんて限られていて、俺の持っているものは授業用のプリントを作成するのがやっと。 けど、それでもこの世界においてはとんでもない技術革新なんだけどね。

 パソコン型魔法道具が開発されても仕事はなかなか終わらないのだから、これがなかったらと考えるとゾッとする。

 日本でも教員のブラックさ加減は度々問題になってたしね〜。


「ダルク先生、少しお時間よろしいですか?」


「あ、はい。 大丈夫ですよ」


 先ほどまで俺と同じく事務作業をしていたシューヴァル先生に呼ばれたので、作業の手を止めて振り向く。


「先生のクラスのレヴィンなんですけが、いかがですか?」


「と、言いますと?」


「いえ、彼は授業態度こそ真面目なのですが、成績が伴っていないように思えまして。 日頃どのような様子なのかと」


「あぁ〜、彼ですか……」


 レヴィンは俺の受け持っている1年2組の生徒だ。

 平民の出で、奨学金を受けて通っている。

 運動神経は平均よりやや上、筆記試験は平均よりやや下だけど、魔法の実技はダントツの学年最下位。

 彼の魔法の能力では、本来ならば入学できるわけがないんだけど、俺と学園長が彼の才能を見出して特別に入学させた。

 そのせいもあって俺のクラスにいるんだよね。


「彼は通常の魔法に関する適性がかなり低いようですね。 今はそのことで苦労するかもしれませんが、心配するほどのことではないと思いますよ」


「そうですか」


 俺の言葉にシューヴァル先生は少しため息まじりに答えた。

 それも仕方がないのかもしれない。

 彼の才能が開花するまでは他の生徒について行くことすら難しい。 才能が開花しても、この学園の基本的な授業カリキュラムには沿わないから苦労することになるだろう。

 それでも放っておくには惜しいから学園で使い方をマスターしてもらおうってことなんだけどね。


「本人のモチベーションを維持できるように、連帯を取っていきましょう」


「そうですね。 よろしくお願いします」


 シューヴァル先生の言葉に笑顔で頷いた。

 先生は先生で苦労が絶えません……。



 ふと時計を見ると時刻は午後の6時半。

 いくら日が伸びて来たとは言っても、さすがにこのくらいの時間になればだいぶ暗くなってきた。

 明日の授業準備はだいたい終わってるし、あとは中間テストの問題作成とかかなぁ。 まだ後ろの方は授業が間に合うかどうかわからないけど、前の方の範囲はそろそろ問題を作り始めてもいい頃だろう。

 後回しにしたら後々苦しむ羽目になるし、今のうちにやっておくか。

 よし、今日は7時半には帰ろう。

 部活が休みだと早く帰れるね!


「ダルク先生、少しよろしいですか?」


 決意を胸に秘めていると、小走りで職員室に入ってきたヴルヴォン先生に声をかけられた。

 今年で60になるヴルヴォン先生は、白髪混じりの気の良いおじちゃん先生だ。 お爺ちゃんというにはまだ若いだろう。 気の良いおじちゃんとは言っても、この人は世界有数の魔法薬の開発者であり、その道においては神と呼ばれることさえある。


「あぁ、はい。 どうしました?」


「生徒同士の揉め事がありまして。 決闘で決着をつけることになったので、審判をお願いできますか?」


「あぁ〜……構いせんよ」


 決闘の審判をするのはこの学園での俺の役目の1つでもある。 魔法決闘主任教諭、とかいう仰々しい役職だ。

 具体的には、今回のように生徒同士の魔法決闘を行う際の審判。 それから、何らかの条件をかけて闘う場合にはその条件が守られるように監視と協力をすること。

 審判ができる先生は他にもいるんだけど、条件をかけての闘うの場合は主任である俺のところに来る事になっている。

 それはつまり、今回は何かの条件をかけての闘いということだ。


 ふぅ、とため息をついてから俺は手短に審判の準備を始めた。

 ついでにヴルヴォン先生に決闘の概要を聞く。


 今回の決闘は、クレイン・レヴィンと同じく俺の持つクラスのオーガスタ・タペストが決闘を行うらしい。……入学したての一年生が何をやっているんだ。

 その理由なんだけど、魔法能力の低いクレインに対してタペストが罵声を浴びせた。 クレイン本人は事実だからということで我慢していたらしいけど、それを良しとしなかったのが彼の幼馴染で同じクラスのリリアナ・レヴィン。

 オーガスタに対してつっかかっていったものの、相手にされず、最終的には突き飛ばされたらしい。

 その時に転んで擦り傷を負っており、それがクレインの心に火をつけたのか今回の決闘に繋がったようだ。

 全く、なんて血の気の多い奴らだよ……。


 ちなみに、クレインとリリアナの苗字が同じなのは別に結婚をしているからじゃない。

 彼らは二人とも平民の出で、家名というものが存在しない。 そういった場合は生まれ育った村の名前を苗字として使うのが通例だ。 つまり二人はレヴィン村のもしくはレヴィンの町の出身ということだろう。

 ちなみに俺もルーチェと結婚してダルク姓を名乗るまでは、生まれた村の名前を使っていた。


 しかし────


「クレインか……」


 彼は入学初日から色々と問題を起こしてくれているな。

 入学から一ヶ月ちょっとで条件ありの魔法決闘なんて、記録に残っている限り前代未聞だぞ。


 魔法決闘は学園としても推奨している。

 その表向きの、生徒向けの理由としては生徒同士で決闘を行わせることにより、自分自身の魔法能力を高めさせるというもの。

 それはもちろん嘘ではないし、大切な役割の1つだ。


 しかし、魔法決闘にはもう1つの大きな理由がある。


 それは生徒のストレスを適度に発散させ、コントロールすること。

 これくらいの歳の若者はどうしても反抗期やら何やらで精神的に不安定だ。 そんな中で、彼らは魔法という強大な力を手に入れる。 そうすれば少なくない生徒はまるで自分が何でもできるようになったと錯覚し、力に溺れ、横柄な態度を取るようになる。

 それをコントロールするのが、魔法決闘だ。

 本来ならばただの無秩序な喧嘩になっていたものを、教師がコントロールすることによって師と弟という上下関係を作り出す。 学級崩壊を食い止めるための重要な仕組みの1つ。


 ま、そんなんじゃ強い奴が余計に調子に乗るという弊害もあるのだけど、そんな奴は適度なところで教師がお灸を据えてやっている。

 どんなに天才と呼ばれていようと、七賢者はおろか教師に勝てるような奴はそうそういないからな。



「さて……」


 やって来たのは第2闘技場。

 授業で模擬戦を行うための場所で、直径にして50メートルはある円形の闘技場だ。 スイッチ1つで発動する結界が備え付けられているから、生徒のレベルでは逆立ちしたって外に魔法を漏らすことはできない。

 それに、結界の外には噂を聞きつけた生徒たちに加えて、先生の姿もちらほらと見受けられる。 いざとなったら生徒の身を守ってくれるだろう。

 ま、万が一にも危なそうなら俺が二人を中断させるし。


 そんな闘技場に20メートルの間隔を開けて、二人の生徒が向かい合っている。

 俺はちょうどその二人の間。


「互いの主張と要求をこの場で宣誓してください。 まずは、オーガスタ・タペスト」


「はい」


 俺の言葉にはっきりと返事をしてから、オーガスタがよく通る声で声を張り上げた。

 肩口まで伸ばされた金色の髪に、武術にはあまり向いていないであろう線の細い体。 決して暗いわけでも、不健康そうというわけでもないが、闘う人間には見えない。

 貴公子然としているさまは、貴族のおぼっちゃまといった感じだ。


「僕はこの名誉あるマグノリア魔法学園に大した魔法の才能もない奴が通っていることを許せない。 これは本人にとっても、周囲の人間にとっても、決してプラスにはならないのだから。 僕が勝ったら、レヴィンにはこの学校を辞めてもらおう!」


 まぁ、いかにもな魔法至上主義だな。

 それもタペスト家なら仕方がないか……。

 タペスト家はギアルト王国の貴族で、王家に匹敵すると言われるほどに歴史が深い。 加えて、先祖代々家長が王国の魔術師団長を務めているという背景もあり、魔導師であることを誇りに思っているようだ。

 現当主はそうでもないものの、『魔法こそが最高』みたいな思考を持つことも少なくない。

 オーガスタの場合はさらなる理由もあって捻くれちゃってるんだろうけどね。


「次、クレイン・レヴィン」


 対するクレインは、外見は普通な男子だ。

 いや、普通と呼ぶには十分に整っているが、不特定多数からモテまくるというほどでもない。 言うなれば中の上から上の下といったあたり。


「はい。 僕は、僕のことをいくら悪く言われようと構いません。 事実ですから。 けど、リリアナにはしっかりと謝ってもらいます」


 中身は草食系。 優しいが、悪く言えばヘタレ。

 それでも芯はしっかりとしていそうだ。

 そして、今回の原因となったリリアナは結界の外の見学席から不安そうにレヴィンを見つめている。


「両者、相手の要求に問題はないか」


「あぁ」

「はい」


 俺の確認に対して二人は応用に頷いた。

 それを見届けてから俺は一歩後ろに下がった。

 両者、それぞれ手に持った杖と木剣を構える。


「ただいまより、オーガスタ・タペスト対クレイン・レヴィンの魔導決闘を開始する。 制限時間は15分。 両者、マグノリア魔法学園の生徒として恥のなきように闘え! 武器を構えて────




 始め!」


 俺の声を合図に、両者ともに魔法の準備を始めた。

 一年生ということもあり、比較的初歩的な魔法だ。 それでも、オーガスタは基礎をしっかりと叩き込まれているせいか、精度が高く構築のスピードも早い。


「アイスランス!」


 先に発動したのはオーガスタ。 その杖からは5本の氷の槍が放たれ、クレインへと迫る。

 数も氷の密度も一年生としては申し分ない。 3年生の平均と同じくらいだろう。


 しかし、その氷の槍はクレインへと近づくにつれて目に見えてその速度を落とした。 それどころか、3本は形を保てずに霧散した。

 そして残りの日本もクレインの木剣によってやすやすと叩き落される。

 オーガスタの魔法はクレインに届くことすらなく消え去ったが、かろうじてクレインの魔法発動を妨害する結果は得られたようだ。


 これは決して、オーガスタの魔法が未熟だったわけでも、元からそういう魔法というわけでもない。 本来ならば、破壊されなければ何かにぶつかるまでどこまでも突き進む魔法だ。

 これはクレインの体質に理由がある。

 彼は世界的にも例のない、『自分の意思とは関係なく魔力が体外へと漏れ続ける』体質の持ち主だ。 そのおかげで、自分の思い通りに使える魔力が少なく、うまく魔法を発動させることができない。

 しかしその反面、相手の魔法がクレインの魔力に邪魔されるということも起こる。 早い話が、空気中を進んでいたボールが水の中に入ったらスピードが落ちるのと同じ理由だ。

 そして、やがて周囲の魔力とぶつかり合って損耗し消滅する。


 言ってしまえば『魔法を無効化することができる体質』。

 普通の人にはそんな芸当はそうそうできない。 全身から魔力を放出するには、全身に神経を集中させるという、集中すればいいのか全体を意識すればいいのかワケのわからない事態を招くからだ。

 だからこそ、その体質に気がついた俺と学園長は彼を入学させた。

 その才能は間違いのないものだから。


 初めこそ魔法を連発していたオーガスタだけど、そのほとんどを魔力の壁に阻まれてしまってどうすることもできない。

 やがて魔力も尽き始めたところでクレインが勝負に出た。


 自らの木剣に魔力を纏わせて、魔法を切り崩しながら突き進む。

 武器や自分の体を強化するのは魔法の基礎だ。 それが出来なければ、万が一の時に自分の体を守ることすらできないから。

 しかし、入学して一ヶ月で使えるとは。

 俺が思っている以上に努力をしているようだ。


 そして見事にオーガスタの元へたどり着いたクレインはその喉元に木剣を突きつけた。

 喉元を至近距離で凝視しているみたいだけど、気がつかないものだろうか……?

 まぁ、いいか。


「勝負あり!」


「僕の勝ちだ。 約束通り、魔法適性の低い人への態度を改めてもらうから」


「………そんな」


 俺の声でクレインは木剣を下ろし、オーガスタは膝から崩れ去った。

 名門のタペスト家としては、平民上がりの人間に無傷で敗北となっては精神的にくるものがあるのだろう。

 ……あぁ、あとでしっかりとフォローしてあげないと。


「タペスト、約束守ってもらうからな」


「わかっ、たよ……」


 クレインの言葉にオーガスタは顔を歪めながらもなんとか頷いた。

 そして、そんな空気をぶち壊すようにリリアナがクレインに抱きつく。


「もう! 心配したじゃない!」


「い、痛い、痛いから……」

 

 おい、お前ら。

 メンタルボロボロになってるオーガスタの前でイチャつくな。

 そう思って止めようとしたところで、オーガスタがムクッと立ち上がった。


「お前ら、僕をバカにするつもりかぁぁぁあああああああ!」


 怒りに任せて発動させられた炎の魔法は完全に暴走し、オーガスタ自身の肌を焼きながらもクレインたちへと迫る。

 ……これはマズイかな。

 制御を捨てた分、威力が高くクレインのところまで到達してしまいそうだ。 そして2人は咄嗟のことで反応できていない。

 それに、このままでは……。


「やめろ、タペスト。 これ以上はお前自身が保たない」


 クレインたちへと放たれた魔法を消滅させ、魔法の発生源であるオーガスタ腕を掴む。 剣など握ったこともない、細くて華奢な腕だ。


「せ、先生……」


「それに、せっかく綺麗な肌なんだから大切にしろよ?」


 そう言いながら、懐からルーチェお手製の魔法薬を取り出して腕にかけてやる。 すると見る見るうちに焼けた肌が元の白さを取り戻していく。


「……どうして」


「ん?」


 それは何に対する疑問だったのか。

 俺が仲裁に入ったことか、自分の魔法があっさりと消されたことか、回復薬を使ったことか。

 それとも、“彼女”の秘密をあっさりと暴いたことか。


「…………なんでもない、です」


「そうか」


 すっかり元どおりになった手を放してやると、オーガスタはゆっくりとクレインたちの元へと向かった。

 先ほどのような怒りはない。

 今の間にクールダウンをしてくれたようだ。


「リリアナ・レヴィン……。 突き飛ばして、悪かったな」


 そこにあったのは素直な謝罪。

 多少は言わされているという気持ちもありそうだけど、反省の念も見られるからいいだろう。 怒りに任せてとんでもないことをしてしまった手前、居心地の悪さが拭いきれていないな。


「でも、ボクは絶対にお前みたいなやつは認めないからな!」


 最後にオーガスタはクレインにそう言い残してから、地面に落ちた自らの杖を拾って闘技場から走り去っていった。 名門タペスト家の跡取りとして、大衆の前で乾杯するほどの屈辱はないんだろうなぁ。

 強くあることを求められ続け、男として育てられた彼女ならなおさら。


 時刻は19時15分。

 あぁ、これから後片付けと報告書を書いて……。

 タペスト公爵家に連絡を入れて、ご家庭に今回のことを報告しないとなぁ……。


 あぁ……家に帰るのは21時近くなりそうだ。

 ルーチェには先に帰るように言っておこう……。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字 >>名門タペスト家の跡取りとして、大衆の前で"乾杯"するほどの屈辱はないんだろうなぁ。
[気になる点] 恋愛ジャンルなのに、それらしい描写があまり無いのは何故でしょうか? あと、この短編だと色々と中途半端に思えます。出てきている情報が中途半端なのが多いので。 [一言] 面白かったです。…
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