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道標  作者: 篝火瀧華絵
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出会い

-2015年-

年が明け、大切な彼女といまだにヨリが戻せない僕は休みの日が憂鬱で仕方なかった。

テレビをかけてないと寂しさに襲われる。

携帯をずっと見ていないとどうにかなりそうだ。

人見知りの僕は出会いの場へ行くのが苦手。

だけど誰かと繋がっていたい。

そういう時は決まってSNSで交流を探す。

良く言えば出会いを、悪く言えば暇つぶし。

いつものようにプロフィールをスクロールしながら気になった女性に定型文を送る。


僕は調理の仕事をしていて一応専門学校も出た。

調理と言っても様々だけれど、僕がしているのは調理でも繊細さがいる技術職。

(僕は〇〇県在住22歳で調理の専門職をしています。よければ仲良くしてください)

こう送るとたいていは良いイメージを持って返事をしてくれる。

その日も何となくスクロールをしながらさっきの定型文を気になった女性に送ってみた。


すると24歳と表記されていた女性からこう返事がきた。

(メッセージありがとう。私実はもうすぐ27歳になる既婚者なんだけど、料理とお菓子作りが好きなんで、気になって返事しました!こんな私ですが良ければ仲良くしてください)

既婚者!?年齢詐欺!?

突っ込む所が沢山だが、僕は暇つぶしなので

(よろしくね)と送り、そこから僕達のやり取りは始まった。

彼女はアスナと言ってこれも後に知るのだがハンドルネームだった。

本名は茉莉奈まりなで、すごくマメだしノリも良く、70km程距離は離れているのだが僕の地元に近いからかいつしかサイト上ではなく直接やり取りをするようになった。


僕はさっきも言ったが人見知りなので電話では基本無口なのに、寂しがりだから電話をしてしまう。

そんな僕に優しくまりなは付き合ってくれた。

まりなとは僕が地元に帰った時に一度お昼ご飯を食べただけだが、27歳には見えないしましてや子供や旦那がいるなんて思えなかった。

時期だからってバレンタインチョコまでくれる気遣いはさすが年上だと思い感心をした。

その時にキスぐらいは出来るかなと思った僕を最低だと思ってくれていい。


それから数日が経ち今日も仕事が終わりまりなに電話をする。

いつもみたいに電話に出て笑って喋ってくれる。

だからまりなには僕の今でも大好きで将来は一緒になりたいと思う女性がいる事を告げた。

するとまりなは泣きながら

「孝君とその子が幸せになれるよう祈ってるね」と言ってくれた。

僕は暇つぶしだし、運が良ければ既婚者を都合良く遊べるかななんて思ってだけれど、まりなは違うと素直に思った。


僕達は気付くと毎日連絡を取っていた。

それは寂しいからというのもあるし、まりなが結婚生活に悩んでいたというのもあった。

まりなは男の人を愛した事が今まで一度も無く、恋というものがそもそも何なのかを知りたかったようだ。

だからこそ一途に別れた彼女を想う僕を素敵だと言ってくれた。


そんなある日事件は起きた。

3月になりまだ寒いが少し暖かさが出てきた頃だった。

休みだった僕は前日もまりなと夜中まで電話をしていたので昼過ぎに起床した。

携帯を見るとまりなから(助けて、変な人がいる)と連絡がきていた。

慌てながら冗談混じりで返事をするとどうやら変な人につけられていたらしい。

まりなはよく変な人に遭遇するらしいという事は聞いていたがまさか今日遭遇するなんて。

僕は少し後悔をして、連絡をすぐに返せなかった事を謝りその夜まりなに電話をした。

すると彼女は酔っ払っていて

「私って孝君の事...好きなのかな?」と言った。

僕はそうだろうと分かっていた上で「なんで?」と静かに問いかけた。

「変な人に付きまとわれたときに私が真っ先に助けを求めて1番に顔が、旦那でも他の誰でもなく浮かんできたのが孝君だった。」


僕はこの時正直に言うとこうなるように計算していた。

昔からどうやったら女の子が僕に興味を持つか試行錯誤し、恋に落ち告白してきたら振るという子供じみてなおかつ最低なゲームをやっていた。

その癖が出てしまった。

そしてまりなに対しても、あと少しで落ちる!そう確信してしまい好きと言わせようと思ってしまったのだ。

これが後に後悔する事になるのだが...


まりなには「最近連絡を取ってるから俺の顔が浮かんだんじゃない?恋かどうか決めるのはまだ早いよ」と伝えた。

もちろんこれも計算だ。

連絡を取り続けて2ヶ月弱、会ったのは一度だけ。

それでも今のご時世恋に落ちるのは簡単だ。

僕もだけれど世界は愛に飢えているのだから。


それから10日程経ったある日、僕は今でも大切で、大好きな元カノのゆめに電話を掛けた。

今の近況が知りたいというのもあった。

もちろんまりなと出会ってからも夢には連絡はしていた。

僕はもちろんだが、夢にも僕しかいないと思っていたし、思いたかった。

何回かコールがなり「...もしもし?何?」と少し小声で焦ってる様子だった。

「お疲れ様。何してるかなって思って...」

と言った直後に

「誰からの電話?」と低い声が夢の近くから聞こえた。

「友達だよ!ごめん、彼氏と一緒にいるから電話切るね!」そう言われプツリと切れた。


確かに僕と彼女は今は別れていて友達だ。

付き合ったり別れたりで、それはいつも彼女からの発信で決まる。

だとしても彼氏が出来たのなら別れてからの思わせぶりな態度はなんなんだ?

僕だってまりなや他の女の子と連絡は取っている。

最低だと分かっているがそれでも夢には僕だけであって欲しかった。


そして夢におもむろに自分の気持ちを送った。

(彼氏がいるなら言ってくれたらいいのに。俺とは別れたけど1番だとかそんな事言われたら誰だって期待するよ。)

完全に身勝手だ。

それに対し夢から胸をえぐるような言葉を突き刺された。

(彼氏の事言えなかったのはごめんなさい。言いづらくて...ゆめが何度も付き合ったり別れたりしたの分かる?孝君と結婚したいとも思ってたけどそんなの言ってくれなかったよね。)

僕は愕然とした。

夢はまだ大学を卒業したばかり。

僕はまだ社会人としてもうすぐ3年という所。

付き合っていた時は金銭面や夢の現状を考えて言えなかったのに...

それでも夢が望むならもちろん結婚をしたかった。

その事を送ると夢からこうきた。

(そんなの今更言っても遅いよ。言い訳でしかない。)

それでも夢を諦められない僕がいる。

どうせすぐ別れるだろうと思ったがやけにむしゃくしゃする。

自分の浅はかさにも身勝手さにも。

まりなに電話したが、今日は電話出来ないと言われた。

分かってる、僕が招いた結果だ。

でもこの苛立ちは止まらない。

そして僕はお酒に溺れた。

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