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プロローグ
-2025年-
まだ少し肌寒く、しかし日差しが暖かい。
ふわりとなびく風と共に、あの時の事が鮮明に浮かんできた。
横に座る君が手を繋ぎ笑顔で
「孝君、何考えていたの?」と言った。
「昔の事だよ。」少し笑いながら答えた。
そういうと君は
「孝君は本当に自分の事言わないよね、どんな昔の事だったか教えて?」と、少し寂しげな表情で僕の目を見ながら問いかけた。
僕の横にはいつも笑ってくれる君がいる。
こんな風に今があるのはきっとあの頃があったからだろう。
だから僕のあの時の気持ちを伝えるのは自分勝手かもしれない。
だけど、こうやって僕が将来を共に過ごす君にあの時の事を伝えるのが本当はいいのかも。
と、優柔不断な僕はずっと言えないままこうやって時間を費やしてきた。
「ねぇ、辛い事?...私の事?無理に聞くのは駄目だって分かってるけど...教えてくれない?」
不安な表情だけど真っ直ぐ僕を見る瞳に僕の迷いは消えた。
あの頃の事を何年もかけてやっと今話せる。
僕は決意をした。
「えっと...じゃあどこから話そうかな?」
僕は昔の記憶を懐かしむように語り出した。