25 出発1日目 ~お勉強 その4~
遅くなりましたm(_ _)m
昼食を無事終えた後、物言いたげな視線をスルーして、馬車に揺られる事10分程。
コラスィ丘陵地の麓までやって来た。
ここコラスィ丘陵地は、度重なるモンスタービートで土地が削られ、山脈が丘陵地になってしまった土地だ。
元の山脈のままであったら私達にとても有利なのだけど、魔物達の激突や踏みしめは強力で、モンスタービートが起こる度に低くなっていると言われている。
それを阻止する事は出来ないのでせめて足止めになればと、この丘陵地は樹木伐採が禁止されており、かなりの密林になっている。
このコラスティ丘陵地に入ると、街道に影を作るほど葉が生い茂り鬱蒼とした雰囲気に変わる。
そんな中にある坂道を越え頂上まで来ると、木々の隙間から物見櫓の様な物が遠目に映った。
「レミー様、あの建物がある所に監視村があります」
「ああ、罠地帯と魔の森の監視と、コラスィ丘陵地の警備をする拠点ね」
「はい。ここの街道の他、マルナとムルナからの街道でしか魔の森には行けませんので、必ず監視村で入森の手続きをしなければなりません」
「生存確認のためね。分かったわ」
手続き時に、罠地帯の事を教えて罠に嵌まる事を防ぐ目的もある。
モンスタービート対策に地道に10年かけてコツコツと罠を設置しているのに、それを台無しにされたら堪ったもんじゃないしね。
「本日はコラスティ台地の麓で野営を致しますので、心積もりをしておいてくださいね」
ニッコリと笑いながらサラっと言うもんだから、聞き逃す所だった。
「ん?」
「この辺りはあの監視村から状況把握の見回りが行われていますので、比較的安全なため、まずは野営の雰囲気を味わって頂こうと予定しています」
「そうなのね。分かったわ」
どんな場所にテントを張って、どんな感じで調理とか夜の見張り番とかするのかな?
楽しみだ♪
スーさんから温かい眼差しが注がれているけど、気にしな~い。
ソワソワしている私の横で、ここぞとばかりにニールが『コラスティ台地の歴史』をしゃべってるけど、イェネオミナスの2人の口数が少ないのが気になる。
まあ、野営になったら色々と教えてくれるんだろうし、今はニールの声をBGMに大人しくしときましょうかね。
「―――というわけで、コラスティ台地での伐採許可がある者は、書状を持っているか、もしくはギルドカードに記載があります。採取に関しては自由ですので、日々の食糧にするために周辺の村民が森にいる事もあります」
「……そうなのね。でもね、あのね、ニール。監視用の櫓がバッチリ見えるんだけど……。監視村には今日は行かないんじゃないの?」
「ああ、馬車が邪魔になりますから監視村で預かって頂くんですよ。大抵の方は、魔の森への入森手続きと一緒に預けます。そうですよね?」
「……はい。この街道は休憩所以外に馬車を停車してはいけませんから」
「へ~」
置物と化していたトゥーンさんとベーマーさんだったけど、ニールに藩話を振られたらちゃんと答えてくれた。
うん、話はしっかり聞いてくれてるんだね。
村への入り口を告げる木看板が見え、馬車が左へ曲がりもうすぐ村へ着くだろうと思って、何かする事があるのかニールに尋ねてみた。
「そうですね……。今日は馬車を預かって頂くだけなので、身分証明を用意する事くらいですね」
「分かったわ」
魔法鞄に手を突っ込んで、私の身分証である商業ギルドのカードとバルフェ家の紋章が入った短剣を掴んで出しておいた。
「あの……すみません。買い足したい物があるので、俺達は少し買い物をしてもいいですか?」
私とニールの会話が途切れるのを待っていたのか、トゥーンさんが申し訳なさそうに言って来た。ニールの顔を見てみれば特に気にしていないようだったので、
「どうぞ、その間に私は馬車を預けたりこの辺りの事を聞いたりしておきますから」
と、イェネオミナスの皆が買い物に行きやすいように返事した。
うん、まあ、ニールが張り切って色んな話をしてくれるだろうしね……。
監視用の櫓の前を通ると領兵が居て、そのまま少し進むと馬車が停止。
トゥーンさん達に続いて馬車を降りると、モルナと同じように村は守護壁―――高さ2メートルの簡易的な煉瓦作り―――に囲まれていて、外周には畑が広がっていた。
「ようこそ、アルバ村へ。魔の森へ入森するなら冒険者ギルドか領兵詰所で……ってぇ?! ニール様が居るって事は、レミーナ様の野営訓練ですかっ?!」
入り口に立っていた領兵さんの挨拶が、途中から驚愕の叫びに変わっちゃったよ。
トゥーンさんやニール達に遮られて私が見えないみたいだから、ヒョイッと身体を横にずらして領兵さんから見える位置に動くと、領兵さんは目と口を大きく開けて固まっちゃった。
……えっと、どうしたの?
首を傾げていたら、ニールとトゥーンさんが領兵さんと話をして、イェネオミナスの皆は村へ入って行った。
「では、レミー様は詰所で手続きをしましょう」
にこやかに言ってくるニールの隣の領兵さん―――たぶん門番さん?―――、口は閉じたけどまだ目が丸くなったままなんだけど、大丈夫なの?
ま、いいか。
ニール達と詰所に向かえば、詰所の領兵さん達もなぜか門番さんと同じ反応。
……マジでどういう事?
困惑した顔でニールを見てもにこやかな表情のままでよく分からないので、スーさんに尋ねるような視線を向けてみた。
「ふふふ。どうやら本当にレミー様が野営訓練をするとは思ってなかったようですよ。しかも、魔の森で」
ああ、そうか。大人でも、魔の森に行くのは躊躇するくらい危険だもんね。
なのに、10歳の子共が行くなんて、そりゃ死にに行くように見えるか。
領兵さん達は、きっと心配してくれてるんだろう。……ついでにマジで行くの?! って驚いてる感じなのかも。
「そう。……早く手続きしましょう」
何にも言えませ~ん。
私も、まさか魔の森で野営訓練して来いって言われると思わなかったし、客観的に見ても10歳児が魔の森に入るのは自殺行為だと思うもん。
読んで下さりありがとうございます。
更新ですが、年末まで毎週出来そうです。
引き続き読んで頂ければ嬉しいです。




