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24 出発1日目 ~お勉強 その3~

「……冒険者はギルドで教えて貰えるから一概に言えないけど……でも、うちの領民は、モンスタービートを知ってるから実の生る木は切らない。だから、実の生る木を切る者は、マルナ領出身者じゃなくて移住してきた者っていう事になると思うの」


「……そうですね」


「それと……実の生る木を切る人って『ちょっとくらいなら良いだろう』って考えてするんだと思う。それって、要は『小さな犯罪なら犯しても大丈夫だろう』って心に隙を持ってる危うい人だと、私は感じるの。……だからね、実の生る木を切っちゃう人は、大小関わらず犯罪を犯すかもしれない要注意人物だったり、他領民の可能性が高い人、だと私は思ってる」


「……厳重注意でも伐採を止めない者は、いずれ大きな犯罪に手を染めかねないという事ですか……」


「……そうなる……かな?」


「「「……」」」


考え込むニールの呟きに曖昧な返事をすると、スーさんやトゥーンさん達は沈黙していた。


「レミー様はそこまでお考えなのですね。……オルコ様もご存知ですか?」


「言った事は無いけど、お兄様も同じ考えじゃないのかな?」


「……そうですね、オルコ様ですから」


真面目な表情からいつものにこやかな顔に戻ったニールのおかげで、緊張感が漂っていた馬車内の雰囲気が和らいだ。

いや、そんなに真剣に聴く事なのかな?

トゥーンさんとベーマーさんから、何とも言えない視線を向けられながらニールとの勉強会はまだまだ続いた。




草原や林、森と植生が色々と変わる景色を眺め、ニールと『マルナ領の地理講座』と『薬草や食糧になる植物』のおさらいをしながら進む事4時間。

第2の都市モルナが見えてきた。


いや~、うちの馬車って速いのね。

ゴアナ国王都から領地に帰って来た時も思ったけど、何でだろう?

振動はあんまり無いから、たぶんサスペンションとかが付いてるんだろうけど仕組みがさっぱり分かんない。

車輪に一つずつ『回転』の魔道具が付いてるから速いのかも。

ただ、お高いんだろうなあ……。


「レミー様、モルナはムルナと同じく、領都マルナに次ぐ大きな街です。街の概観はマルナと同じで、4ブロックに区分けされ円形をしています。しかし、街の特色としてマルナと違う所がありますが、お分かりになりますか?」


「えっとね、ムルナは近くに湖があるから農業に力を入れてて、こっちのモルナは魔の森との距離が近いから、監視と魔物素材に力を入れてる……んだったと思うわ。それと街道がフール領や小国に繋がってるから、輸入品も積極的に取り扱ってるんじゃなかったかしら」


「さすがレミー様ですね。小国からの輸入品には、賞味期限を加味して領都にも運ばれない物もありますから、我が領の商人は必ずモルナに立ち寄ると言われています。魔物素材も人気の輸出品ですからね。こちらでしか手に入れられない食材や調味料などはここから、邸宅の方に運ばれています」


「へえ~。見てみたいわ」


「……それはまた今度の楽しみにとっておきましょう。モルナを通り過ぎて30~40分程で魔の森との分岐になりますので、そこで昼食にいたしましょう」


「はーい」


モルナに寄れないのか……残念。

また行けるといいなぁ……。


モルナの外壁の横を進み、異空間倉庫と新作の魔法鞄の中を確認しながら、昼食のメニューを色々と考えてスーさんとおしゃべりしていれば、あっという間に分岐路に。

一部樹木が無いスペースがあり、恐らくここが休憩や野営に使われる原っぱなんだろう。

その原っぱの奥の方で馬車が停止すると、


「では、少し遅くなりましたが昼食にしましょう」


ニールの声掛けで、全員で昼食の準備になった。

ベーマーさんとアラスさん、エドワードとアルバートが周辺の魔物の確認に行き、バーデンさんとウェルナとミアンが馬の世話を、トゥーンさんと私で昼食作りをする事に。


「ここの休憩所には、このように石を積み上げて作ったかまどがあるので、すぐに調理が開始できますが、竃が無い休憩所もありますし、草原や森の中では自分達で設置しなければいけません。また、テントを張る場合には地面を固めたり草を刈ったりしなければならない事もあります。それは今日の野営で教えますので、今は昼食を作りましょう」


「はい」


ニールとスーさんは私を見守る事に徹するようで、離れた所でこっちをチラチラと見ている。

気になるんなら近くに来ればいいのに。


「水魔法が使えるなら水を用意して来なくてもいいですが、水魔法が使えない場合は必ず飲料用と予備の水を準備して下さい。アイテムボックスの容量が個人で違いますので、十分な水を確保できない時は道中で補充しながら進むのが常識です」


まあ、そうよね。

命を繋ぐのに一番大事なのは水だもんね。

大鍋を竃に置きながらしゃべるトゥーンさんに頷いていると、ニールが薪になる枝や木材をそっと置いて行った。


「また、我々冒険者は極力荷物を減らし、魔物素材や薬草等を沢山持って帰れるように、食事はほぼ保存食です。貴族の方々は料理人を連れて行き、その場で作らせる方も居ますが、生の食材は正直荷物が増えますし腐る心配がありますから、保存食や現地調達するのが一般的です」


そう言うと、トゥーンさんは革袋を手に持って大鍋に水を入れ始めた。

ええぇぇぇ……。

亜空間倉庫にメッチャ食材あるのに、作っちゃいけないのか?!

調理器具もバッチリだし、たぶん私作れるのにぃぃぃ……。


「分かりました。では、昼食は保存食なのですか? この鍋はどうするのですか?」


「俺達は保存食ですが、レミーナ様達はご自分達で用意されると訊いていますので、レミーナ様が決めて下さい。鍋はスープを作ります。木の実やキノコ・野草はどこでも採れますし、水だと味気ないですからね」


お? 私が決めてもいいんだ?

ニールに『好きなようにしてもいいの?』とアイコンタクトすると頷かれた。

ホントに? マジで? いやっほーい!


トゥーンさん達の昼食を詳しく訊いてみると、硬めのパンにベーコンと干し野菜を挟むんだって。

竃があるからここではパンとベーコンを炙るけど、炙らなくても問題は無いから保存食としてはベーコンを持ち歩いている事が多いらしい。


どうしても保存食じゃなくて調理した食事にしたかったので「火を使って調理してもいいのか」と尋ねれば、一瞬キョトンとされたけど「構わない」と嬉しい返答が。

そこからの私の行動は早かった。

ニコニコしながら薪を竃に入れて着火魔道具で火を点けた後は、水を入れたフライパンを火にかけて干し野菜を3種類入れて戻し、水を切ってハサミで野菜をチョキン。

ついでにソーセージもハサミで切って、野菜と一緒に炒めてコンソメで味付け。

トゥーンさんが置いた大鍋には、干し肉と干しキノコを削いで細切れにして入れて、後は現地調達の野草を待つ状態にした。


「え? は?」


あまりの高速調理にトゥーンさんは目が点。

ニール達も、目を丸くして私を見ていた。

首を傾げて苦笑いで誤魔化したけど……ニールのキラキラな視線が痛いです。


皆が集まって来て、私の作った料理にびっくりしていたけど、私としては自分で調理した野菜炒めが美味しかったし、大満足♪

ただ、昼食中、ニールだけじゃなくイェネオミナスの皆の視線も痛かった事が予想外だったよ。


読んで下さりありがとうございます。

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