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番外編 19.8 ルーナ商会の混乱

またまた番外編ですみません。



「なあ、これまたレミーナ様が開発した物なんだろう?」


「そうそう。商売する者には有り難い教本だよ」


ルーナ商会の作業場の一角で従業員の2人がプリンターの前で、印刷されて出てくる紙を見ていた。

その2人の後ろで大量の紙を重ねて魔法でスパッと四辺を切って、同じサイズの紙を用意している従業員が、プリンターの操作をしている2人に話しかけた。


「それ、俺も欲しいんだよ」


「だよな? 俺、もう買ったんだ」


「マジで?」


「おう。在庫の管理するのに重宝するから買えって言われて、従業員価格で買った」


「おっ? 従業員価格?」


「そうそう。元々こうやって何冊もすぐに出来るから結構安めの値段設定にしてあるけど、従業員が内容を知らないのはどうかって事で、買いやすくしてくれてるんだぜ」


「なら、俺も買って帰るわ」


「そうしろそうしろ」



―――――数日後


「なあ、結構大量に教本出来てると思うんだが、なんでこんなに在庫が無いんだ?」


作業台の端に角を揃えた大量の紙を置き、ウィンドウカッターでバッサバッサと四辺を切っている彼は、ここ数日紙だけを切る作業に飽きていた。


「……他の街に卸してる……」


プリンターの前に居る彼は、片割れが違う仕事に駆り出されてしまい一人で5台のプリンターを操作していた。


「え? どれ位?」


「印刷したそばから全部」


「は?」


「そう思うよな?!」


プリンターを操作している彼は、青白い顔で裁断をしてる彼ににじり寄る。


「おっおい! 危ねぇだろうが!」


「あ…………」


「おい、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないよ!! この間まで5台を2人でしてたんだぞ? なのに1人だよ1人! 魔力がそんなに必要ないとはいえ、印刷したこの量を何度も運ぶのに体力がギリギリだよ! しかも、教本と一緒にプリンターまで注文が殺到して、相方がそっちに取られたんだよ!」


「「「「「それはお前だけじゃない!」」」」」


教本を製本していた従業員達が突っ込みを入れた。


「こっちは10人で作業するはずが、5人だぞ5人!!」


「そうだ! 製本数が増えてるのに魔力の多い奴がプリンターの製作に取られたんだ!」


文句は言っているが、目も手も作業からは離さない。

目は血走り、手は神業ともいえる速さで紙を纏めて糸で留めていく。

作業台に製本された教本が積み上がると、出荷のため別の場所へ運ばれていく。

作っても作っても終わりが見えず、また、成果を感じる間もなく教本が運ばれていき、鬱々とした気持ちが積もっていく教本製作チーム。


「なあ、思ったんだけどよ、うちで製本しなくても、プリンターさえあれば他の街でも作れるんじゃないか?」


「「「「「あ!」」」」」


「だからプリンター製作に人員が取られたんだろ!!」


「「「「「あ……」」」」」


教本製作チームは泣く泣く自分達の作業を続けた。




―――――一方プリンター製作現場では


「いいか?! 教本の注文が殺到して、各所で混乱が起きていると思う! この混乱を収めるためにプリンターを増やす事が決まった! 各自スパウターを製作してくれ!」


「「「「「「「「「「はあ?」」」」」」」」」」


作業場にぎゅうぎゅうに押しこめられた彼等は、ここに来て初めて自分達がプリンターを製作しなければいけない事を知らされた。


ルーナ商会は販売・製作・開発・事務と4部署で構成されており、部もそれぞれ分野が分けられている。

それゆえ、商品は製作部と開発部で作られ、また商品によって担当が分かれているため、担当商品以外の製作に携わる事はほとんどない。

これは、魔力属性が商品製作に関係しているからであり、ついでに情報漏えい防止の対策でもあった。


しかし、思ったよりも製本作業に人員を沢山沢山の人手が必要となり、担当外の部員だけでなく他部署の者も教本製作に駆り出されていた。

それもそのはず。今までの商品は魔石を使用した魔道具。

一つ一つの魔石に魔法を刻印していくためかなり高価な商品だ。

製作できる人物が限られるし、購買層も限られる。

そのためスローペースでの製作でも何ら問題なく、また従業員も一魔道具に最低3人居れば十分だった。


しかし教本は、紙を綴っただけの物。

印刷には魔石を使用しているが、商品自体には魔石が必要ない。そう、刻印の作業よりも印刷・製本の作業がメインなのだ。

その上、商品価格が低く、商売関係の人だけでなく、子供の勉強のために買う人も増え、購買層が広くなってしまい需要が急激に高まったのだ。


「スキャナー・プロジェクター・外箱は用意している! 君等にはスパウターの魔法陣を刻印してもらいたい!」


「んなもん出来るわけないだろう!!」


「魔石担当の仕事じゃねぇか!!


ブーイングがそこかしこで上がる。

『魔石担当』とは、魔石に魔法陣を刻印する人の事である。

主に魔力量の多い者で、各魔道具に対し1~2人の担当者が決められている。

担当を重複している事が多いが、だいたい刻印作業をしていていつも魔石を手に作業しているのでそう呼ばれている。


「分かってるよ!! でもな!! 『タイマー10』○玉と防犯ブザーの製作で魔石担当はてんてこ舞いなんだよ!!」


「「「「「「「「「「また新商品?!」」」」」」」」」」


「そうだよ!! また新商品だよ!! 俺だって映写機チームで外箱作ってるのに、教本の検品やら梱包に駆り出されて困ってんだよ!! こっちだって受注が溜まってんのにskごいげぽjdかsヵjg!!」


奇声を発して髪の毛を振り乱す様子に、集まった者達はドン引きだ。

そして、皆思った。


((((((((((レミーナ様、新商品は一つずつにしてくれ!!!))))))))))






その後、教本製作チームに出来上がったプリンターが持ち込まれ、大量の印刷が行われた。

プリンターは、魔石を砕いてインクにした契約用の特殊魔インクの魔力を感知しコピーする魔道具だが、書類を幾らでも偽造できる可能性があるため、信頼のおける領内の役所にしか出荷されていなかった。

レミーナが町の魔道具屋で見かけなかったのもそのせいである。


そのため、他の街で教本製作が行われると思っていた製作部の従業員達は、その事実を知ると膝から崩れ落ちた。


((((((((((勘弁してくれ!!))))))))))





この教本フィーバーの後、印刷屋としてルーナ商会で新たな部門が立ち上げられたのは言うまでもない。




読んで下さりありがとうございます(* ̄∇ ̄*)


今日から、デンシバーズさんでコミカライズが連載開始です。

これもひとえに皆様のおかげです!

本当にありがとうございますm(__)m


本編が中々進まなくて申し訳ないですが、夕方にもう一度更新する予定です。

そちらは本編の続きですので、また覗きに来てみてください(*´ω`*)

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