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番外編 18.5 レミーナ観覧

大変お待たせして誠に申し訳ありません。

読んで下さり本当にありがとうございます。



ジョンを助手にして、紙とペンを配らせ、拙いながら言葉を紡いでいく。


「覚えたいことなどを書き写すのにお使いください」


そう説明すると、兄やニール達が微笑ましそうに見ているのが視界の端に映る。


(……授業参観みたい……)


兄達だけでなく、他部署からも勉強に来ている人達も微笑ましそうに私を見ている事に、恥ずかしさで転げ回りたくなる。

顔が赤くなってないかな……。


「では‥‥‥、表計算、グラフについてですが、表計算は数値の集計・分析に用いり、グラフは一目で数値が分かるように図にした物です。例えば、今回私がニールやウェルナに調べるように言ったのは、他国貴族の入国人数です。書類でよく見る表は、縦一列のものです。それを、項目を増やして縦列を追加したのです」


黒板に7つの連続した日付を横に書き、縦線を入れる。


「元々、私は国ごとの人数が知りたかったので横の項目に国名を設定します。」


日付の左側に国名を縦に書いていく。


「そして、区切っていくと‥‥‥。」


横線を入れていき、碁盤の目を作る。


「このようになります。縦列と横列が交差するところが、知りたい値になります」


こんなんでいいのかなぁと思いながら自分の言葉で説明していく。前世の記憶では、余り数学が得意ではなかったようで、専門用語や細かい説明が出来ないのだ。

最下段と最右列に合計項目をつければ、縦列ならばその日の合計人数が、横列ならばその国の合計人数が、解ることを説明すると、ヤミツさんから唸るような声がした。

そして、表計算のいいところは、調べたいテーマに対して沢山の項目が設定できるので、詳細なデータが解る事・比較対象が出来る事・変化を追える事などだと話すと、兄達は全員かぶりつきで聞いてきた。


「比較出来るとはどういう事ですか?」


「変化を追うとはどうやってだ?」


身を乗り出して聞いてくる兄達に、タジタジになってしまう。


「えっとですね、比較が出来るというのは、例えば違う仕入れ先から五種類の同じ商品の見積を出してもらうとします。この場合、各仕入れ先から一枚ずつ書類が来ますよね?ですから三社から見積をもらえば三枚になります。商品の順番はきっとバラバラでしょう。書き方も違うでしょう。これを表計算に当て嵌めますと、調べたいテーマを[値段]、横列の項目を[商品名]、縦列を[仕入れ先]にします。すると、同じ商品でも仕入れ先によって値段が違うことが、一目で解ります」


「むむむ‥‥‥。」


連れの人の眉間にシワが寄る。解りにくかったかな?


「うーん、ジョン。仕入用の商店別価格表を持ってきてくれる?」


挙げた例の実物を見てもらった方が早いかと思い、見せることにした。

先に兄達の台に持っていき、皆で見てもらう。そうすると、細かな値段の違いがあるが解ってもらえた。


「このようにお店によって値段が違いますので、購入先の参考に出来ます。項目を変えれば、マルナ領地の街別税収や領費の支出等も作成出来ると思います。何枚もの紙を捲ることなく一枚にまとまっていることが見易いのです」


「なるほど‥‥‥。」


「それから、変化が追えるという事ですが、片方の項目を日付、もしくは関連したものにするとできます。例えば、私の魔道具の売上の変化ですね。調べたいテーマは[個数]、日付の項目は[1ヶ月ごと]にします。もう片方は[商品名]。そうしますと、月毎の売上個数が解りますので、売上が伸びているのかどうかが解ります。ジョン、月別売上個数表を持ってきてくれる?」


仕入用の商店別価格表と同じように見せる。

最近になるほど数字が多くなっているから、売上が伸びているのが解る。


「そして、変化をもっと解りやすくしたものがあります。それが、[グラフ]です。モンスタービート会議で使われたので、ご存知でしょう? あれは、年数による数の変化を線で表していました。これも同じです。しかも、単位が同じなので、同じグラフ上に数種類の商品の変化を記すことができます。このように」


月別売上個数表と一緒に保管してあった月別売上グラフを見せる。そして、グラフには、折れ線グラフや棒グラフ、円グラフなどがあり、変化や比較、割合が一目で解りやすく理解できる事を説明していく。


「ああ、そう言えば、あの時はレミーのいう通りに書いたから活用法が解らなかったし、その後のゴタゴタで忘れてた‥‥‥」


ハッとした表情で呟いた兄。

おう。そうだね。即刻領地に帰ってきて、領政の指揮を取ってたから、振り返る暇なんて無かったよね。兄よ、お疲れさま。


「‥‥‥というのが、表計算とグラフですね。他にも活用法があるかもしれませんが、今思い付くのはこのくらいしかありません。」


後で困るのは自分なので、解らないことはハッキリと解らないと言っておく。

ニールにそんなことは伝えなくてもいいってよく言われるから、これも貴族らしくないのかな? まあ、いいや。

兄やニールがグラフをもう少し詳しく説明してくれと言うけど、他に説明のしようがない。

というか、私の数学力はそこまで高くない


「とりあえず、[グラフ]は数値を一目で見やすくするための物ですので、皆さんが知りたいテーマの事を自作してみるのをお勧めします」


苦し紛れに答えると、今度は表計算について練習を求められた。


「……そうですね……。では、表計算を使っての四則演算をしてみましょう。テーマを[足し算・引き算・掛け算・割り算]にして、縦列横列ともに1から10にしましょう」


そう言って黒板に九九を書いていく。


「これは、テーマが掛け算です。縦列と横列を掛けていきます。これは例えば同じ商品を複数買った場合の値段を探すことが出来ます。また、面積を求めるのにも有効ですね。……あと、この掛け算の表計算があれば研算器(電卓)がなくても大きな桁の掛け算が筆算できます」


「「「「「「え?」」」」」」


一斉に顔を上げてこちらを見てくる沢山の瞳にたじろいだ。


「えっと、レミーほんとに?」


「ええ、本当ですわ、お兄様」


疑ってくる兄に、適当に大きな桁の数字を2つ黒板に書いてもらう。


「396832掛ける952603ですわね。これを先ほどの掛け算の表計算を使って解きます」


心配そうに見つめる兄の視線を気にもせず、396832掛ける3、600、2000、50000、900000の数値を出し、合算した数字を書いていく。

その間に研算器(電卓)を叩く音がしていた。


「378023353696ですわ」


「「「「「合ってる」」」」」

「「「まさか!!」」」

「「「「「「すごい!」」」」」」


拍手喝采を頂きました。


「私は、この一桁の掛け算の表計算を九九と呼んでいます。九九の数値を覚えれば、この表計算を見なくても紙とペンさえあればいくらでも計算できますのよ」


「「「「「「「「「「おお~!!!」」」」」」」」」」


あちこちで九九の有用性を話し出す皆さんに、苦笑い。

学校で教えないのかな?


「レミー。僕らは研算器(電卓)の使い方や四則演算の意味は教えて貰うけど、自力で暗算するのは足し算や引き算で、掛け算や割り算はほとんど研算器(電卓)頼みなんだよ」


兄から苦笑いを頂戴しました。


講義の終わりには、集まった皆さんからキラキラした尊敬の眼差しを向けられました。

ホント、こんな講義で良かったのかな?

不安に思うけど、皆の明るい顔にやって良かったという気持ちになりました。


(……ってか、兄のキラキラ視線が突き刺さる!)



その後、表計算とグラフの教本が作られ、レミーナの収入に一役買った事をレミーナは知らなかった。





長い事待って下さっていた方、お待たせして本当に申し訳ありませんでした。

お待ち下さった事に感謝いたします。本当にありがとうございます。

また、初めての方も読んで下さりありがとうございます。


活動報告に生存近況報告をあげておりますので詳しくはそちらをご覧ください。


前回更新から期間が空いてしまったので、設定が噛み合っていない部分があるかもしれません。

その場合は、そっと教えて頂けるとありがたいです。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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