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07 ラハト帝国の商人さん

お盆中に2話更新しています。

知らない方はそちらからどうぞ(*・ω・)

個室での話を終えてルーナ商会の店内を見て回った後、私達は中通りにやって来ました。

快く個室を貸してくれた店員さん、ありがとう。

私の赤っ恥が世間にさらされなくて済みました。

……家の者達にはバレるんだけどね……。


さて、落ち込んでても仕方がないので、お店巡りを楽しみましょう。

中通りの方は、道路の中央に露店が沢山並び、両脇には店舗があって、大通りよりも活気があって見る方も楽しい。

フラフラとあっちこっちの露店を覗いて楽しんでいると、目についた商品があった。

手にとって良いものかどうか解らなかったので、じいっと魔道具を見つめていると、店主に声をかけられた。


「おっ。お嬢ちゃん目が高いね。

そいつは、ラハト帝国でも作製が難しいとされる魔道具でね。

何でも、これ開発した人は名誉貴族になったそうなんだよ。」


人の良さそうなシワくしゃの笑顔で説明してくれたが、気になる言葉を言った。

名誉貴族になった?

どっかで聞いたことなかったっけ?


魔道具を見つつ首を傾げていると、スーさんが横に並んで同じように魔道具を見つめていた。


あっ、そうか、スーさんの旦那さん!

スーさんは先のモンスタービートで旦那さんを亡くしている。

その旦那さんが、一回こっきりの通話機を開発して名誉貴族になったんだったけ。


ぐりんとスーさんの方を向くと、熱心に見つめていたことが恥ずかしかったのか、スーさんは一瞬はっとして、苦笑いをした。


「これ‥‥‥」


と、魔道具を人指し指で指すと、スーさん苦笑いのまま頷いた。


そう、やっぱりこれ、スーさんの旦那さんが考えたやつなんだ。

この魔道具の魔法陣がどうなってるのか気になるなぁ……。

そのままじっと魔道具を見つめていると、スーさんが店主と話を始めた。


「これ、作製が難しいとおっしゃいましたが、在庫ってまだあるのかしら?」


「いんや。ここに出してる二つで全部だ。他の露店にもあるかもしれんがな。うちは、これだけだ。」


「そうなんですか。」


「おうよ。数が入ってこなくなっちまったからなあ。」


店主に魔道具の在庫や作製状況を確かめ始めるスーさん。

権利書をラハト帝国に献上してからの後が気になるみたい。


私としては、この魔道具の魔法陣を解析してみたい。

魔石を魔力で包み込んで、どの属性でどんな指向性を持たせているのか調べると、結構簡単に解析出来ちゃったりするんだよね。


今、店頭でしてもいいんだけど、買いもせずに魔法を解析されるなんて作製者からするとたまったもんじゃないだろうし、あんまり誉められた行為じゃないからね。

そこら辺は、ちゃんとしておきます。


まあ、こんだけスーさんも食いついてるし、スーさんの想い出の品として、いっちょ買いますか。


「おじさん、これって何の魔道具なの?」


十センチ程の円盤の中心に魔石がはまっている、一般的な家には無い形の魔道具。

もし、用途や使い方を知っていたら店主に根掘り葉掘り聞かれるかもしれないからね。

知らないふりをして買うのが一番。


「これは、遠くの人に声を届けるものなんだ。お母さんが色々訊いてきたから、お母さんは見た事があるんじゃないか?」


おふぅ。

スーさんが母親だと思われてる。

市井に出るから服装には気を付けたけど、親子って。

二人が私の隣と後ろに要るから勘違いしたのかな?

って!

ニールは何役?! 夫? 兄?


「なあ奥さん、ラハト帝国に居たことがあるんじゃないか? 隣の兄ちゃんも」


ぶはっ!!

スーさんが二児の母に!!

ヤバい爆笑しそう。


ふるふると下を向いて笑いを耐えていると、ちょっと固くなった声でスーさんが店主に答えた。


「ええ、私がラハト帝国出身ですの。見たことがある魔道具でしたので気になりましたの」


うん、ひんやりとした空気が横から漂ってくる。

ちろっと横目でスーさんを見ると、目が笑ってない。

ニール以外の他の愉快な仲間たちも周囲で目を逸らしている。


「おう、そうなのか。こんなところで同郷のもんに会うたぁ、何かの縁だ。安くしとくぜ!」


スーさんの目をもろともせず、二カッと笑って言うおじさんに拍手。

ってか、ニール、ニヤニヤすんな。

顔に締まりが無くなってる。

「レミーナ様が妹‥‥‥」ってブツブツ言うな。

隣。隣見てみ?



ニールは、スーさんの冷たい瞳を浴びて正気に戻りました。



「えっと、これいくらですか?」


指差しして商人さんに聞くと、商人さんはスーさんの方を向いてゴマをすりはじめた。

おい、私が聞いてるんだけど。明らかに支払い能力が無いと判断されたな。


「お嬢ちゃんは目が高いですねぇ。こちらは、国でも在庫が少なくなっているので、金貨2枚と言いたいところなんですが、マルナ領地では最近似たような魔道具が開発されちゃったんですよね。ですから、半額の金貨1枚で良いですよ!」


似たようなって、通話機の事ですかね?

おじさん良く知ってるね。

どんな風に売り出してるのか知らないけど、通話機と簡易郵便魔方陣(簡易移動魔方陣)は悪事利用の事も考えて、何かしら制限がかかってるんじゃないかと思うんだけど。

商人さんの情報網は半端ないね。


ただ……この魔道具高い!!

音声レコーダーが確か金貨一枚だったことを考えると、これ、高くね?

元値が金貨2枚だよ?

あ、でも声を飛ばす(移転させる)事を考えると、妥当なのか?

ん? でも一つの魔石を割って引きあう魔力を利用して回路を繋げる感じにしたら、移転魔法とか使えなくても、出来るよね?

ってか、私が作った通話機は移転魔法が使えない作製部の方々でも作れたんだけど……。


眉を寄せてムムムっと唸ってると、スーさんが困った顔をしてこちらを見ていた。


「どうします?」


こそっと聞いてきたスーさん。別に入手しなくても、私が開発した魔道具があるからいらないんだよね。

だけど、どんな魔法が刻まれてるのか気になる。

うん、買ってみよう。


「欲しいな」


と控えめに言ってみたら、スーさん頷いて、商人さんの方へ向き直した。


「子供が欲しいと言ってますので買いたいのですが、ちょっとお値段がねぇ……。マルナ領地の音声レコーダーとほとんど同じ用途ですよね?――――――――――――」


さらっと母子のふりをするスーさん。意外にノリノリのようです。

そして、イキイキした表情で、商人さんの痛いところを突いて値切り交渉を始めたよ。

今のところ、きっと一番楽しんでると思う。




さてさて、スーさんの値切りに苦笑いをしながら応じてくれた商人さんは、金貨1枚のところを銀貨9枚にしてくれました。

仕入原価ギリギリだからこれ以上は無理だと、最後には顔を青くして懇願してきました。

スーさん、ニコニコと優しそうなのに、容赦なかった‥‥‥。

きっと、ニールを息子だと勘違いされた仕返しだな。


「ありがとさん」


ひきつった笑顔で挨拶してくれた商人さんは、「そうそう」とスーさんに話しかけてきた。


「奥さん この魔道具のこと少し知ってたみたいだから話すけどよ。5年前までは質も良くって、数もそれなりに出回ってたんだがな。モンスタービート後に、質が落ちて数があんまり出回らなくなったんだ。元々ラハト帝国内でしか手に入らなかった物だからな、俺らもちょっと気になったが、仕入れてたんだ。以前のヤツとはちょっくら質が落ちてるが、悪く思わないでくれよ」


「あらそうだったんですね」


商人さんと話をしてるスーさんに、“もっと話を掘り下げて”と目配せをしてみたら、スーさんは、口角を引き上げて了解のサインをしてくれた。


「じゃあ、マルナ領地に来て、同じような魔道具があってびっくりされたんじゃないですか?」


「おう。しかも、こっちの方が性能も良さそうだしな。俺も、ラハト帝国のヤツはもう仕入れないな」


「まあ、そうなんですか?」


「こっちのは、ラハト帝国のヤツより性能が良いのに安いんだよ。これじゃあ、ラハト帝国のヤツを仕入れても売れないからな」


「そうですね」


ラハト帝国の商人さんは似たような魔道具がマルナ領地にあることを知らずに、持ってきたって事だよね。

んで、来てみたら持ってきたやつより性能が良い、似たような魔道具があって「こりゃあ売れないな」状態だと。

あと、スーさんが利権書を献上してから質が落ちたみたいだから、何か不具合が生じてるのかな。

ちょっと聞いてみよう。


「ねえねえ、おじさん。何で5年前から質が落ちたの?」


「ん?お嬢ちゃんも気になるのかい?」


うんうんと首を縦に振り、“教えておじさん”と目をキラキラさせてみた。


「俺もよくは知らないんだけどな。又聞きで利権者‥‥‥お嬢ちゃんには難しいか。この魔道具を作ってる人が、代わったらしいんだ」


「へぇ~」


「でな、この魔道具はスッゴク作るのが難しいから、新しく作る人が前と同じように作れなかったみたいなんだ」


「えっ? でも、作り方は知ってるんでしょう?」


「そうだな。……そのはずなんだが……そう言われりゃあ何でだ?」


おじさんと二人して“?”を飛ばしながら首を傾げた。


ん~。そう言えば、利権書には、情報漏洩防止のために 大体は作り方を記載せず、用途や使い方だけ記載してる事が多い。

スーさんの旦那さんの場合は、名誉貴族にまでなったので作成過程を説明する機会がどこかであったと思われるが、恐らく利権書には記載していなかったと思う。

だって、真似されるでしょ?

国から表彰されるくらい素晴らしい物なんだから、秘密にするでしょ。普通。

で、許可書を手に入れた誰かが、作成しようと思ったら思うように作れなかったので、今の魔道具になったと。


ん? おかしくないか?

レシピがあるんだから、作れないなんて事はないんじゃないか?

気になってスーさんを見てみると、若干眉間にシワがよって、機嫌が悪くなってた。

こりゃ、何かあったね。


おっと、もうちょっと商人さんに聞いてみよっと。


「新しく作るようになった人って、すごいの?」


「おお、すごいぞ。ラハト帝国では有名な貴族でな、魔道具の研究に力を入れてる人なんだ。確か‥‥‥」


「‥‥‥ツサメ男爵様かしら?」


「そうそう。仲間内じゃ魔道具子爵って言ってっから名前が出てこなかった。元々男爵だったが色んな魔道具を開発したって事で、去年か一昨年に、男爵から子爵になったはずだ」


「‥‥‥そうですか」


名前を言い当てたスーさんの眉間にくっきりと縦ジワが‥‥‥。


「ねえ、おじさん。その子爵様が開発したっていう魔道具は他に売ってる?」


「おお、あるぞ。これとかこれだな」


そう言って出してきたのは、通称「〇玉」と呼ばれる、魔法封入魔道具。

赤玉は炎系、水玉は水系、青玉は風系、茶玉は土系、灯玉(あかりだま)は光系、黒玉は精神系・支援系、銀玉は回復系で、完全使い捨て。

自分の属性にない魔法を発動できるので、冒険者から絶大な人気がある。

魔道具を扱う店には必ず置いてあるものだ。

だが、「〇玉」は昔からある魔道具なので、開発した(特許登録になった)部分がどこかよく分からない。


「これって、赤玉と水玉?」


「そうだ。これはかなり人気があるやつでな、投撃用なんだ」


「へぇ~」


「魔石に魔力を流してから、だいたい十秒~二十秒で発動するんだ。結構威力も強くてな、敵に投げて使うんだよ。ただ、魔法の範囲が魔石近くだけだから、持ってちゃ危ないけどな」


「ふぅ~ん」


要は時限式ってことか。


「他のものとは違うの?」


「ああ、お嬢ちゃんは使ったことがないだろうな。だいたいのものは、自分の正面の五~十メートルの範囲に発動するんだ。だから、遠くにいる敵や空中にいる敵には、ほとんど使えなかったんだよ。それが、投げる事で可能になったってんで、人気なんだ」


「ほえ~。そうなんだ~」


「お嬢ちゃんも興味があるみたいですし、いかがですか?」


おじさんはスーさんに薦めだした。

さっき、なかなかの値下げ交渉をされた事忘れてるのかな?

スーさんがチロッと目配せしてきたので、頷いておいた。


「あら、じゃあいただこうかしら。でも、さっきお高い買い物をしたばかりですもの。もちろんお安くしていただけますわよね?」


「あ……いやー……」


滝のように汗をかきはじめたおじさん。

さっき、顔が引きつるほど値切りされたの、話してて忘れちゃったのかな。

ご愁傷さまです。


読んでくださりありがとうございます(*^▽^*)

第2章の更新が滞ってご心配を御掛けしましたが、ただいま順調に執筆できております。

お待ちくださった方々、応援して下さった方々、本当にありがとうございます(*^▽^*)


1週間に1度の更新の予定ですが、調子の良いときは多目に更新しようと思っています。


また、お詫びなのですが、頂いた感想に対する返事が遅れる可能性があります。


主に作者の執筆周辺機器の問題で、申しわけないですm(_ _)m

ですが、必ず読んでいますので、感想を頂けると嬉しいです(*^ω^)



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