04 新開発? 1
私は既にかなりの魔道具を開発している。
音声レコーダーを始め、通話機や写真機、映写機、レコードプレイヤー、簡易郵便魔方陣(簡易移動魔方陣)等々。
それにこの5か月の間に既存する魔道具の性能アップバージョンや、新しい魔道具も開発した。
例えば、冷蔵庫とコンロの「規格」設定&「規格」測定器。
既存品は、「冷やす箱」「火が燃え続ける台」という機能がある魔道具で、作製者によって温度や火力が違うため、一々魔道具に合わせて使用しなければならなかった。
そう、温度や火力の「規格」が設定されていなかったのだよ。
たぶんだけど、魔法は人によって使う魔力量が違うし、目に見えない「温度」を計る事が出来ないから、一定の規格に出来なかったんだと思う。
それに、「冷蔵庫」「コンロ」は大昔に登録された特許なので、既に模倣品が広まっていて今更「特許レシピ」を買おうとする人はいない。
恐らく、「特許レシピ」には温度や火力の規格があるんじゃないかと思う。
ただ、大金叩いてまで「特許レシピ」を購入しようとしないのは、商品価格を抑えるためだろう。
つうか、作ろうと思えば出来てしまうからこそ、私だって買おうと思わない。
それに、作り手によって温度差や火力差はあるが、冷蔵庫もコンロも使えないわけじゃない。
買い手が、作製者を選んで購入しているので問題にならないのだろう。
まあ、いい加減な物を作ったり売ったりする商店には人が寄り付かなくなるしね。
ついでに、商店の独自性とか特色が出せるから気にしてないのかも。
そこで私は、冷蔵庫は同じ温度、コンロは同じ火力になる工夫を。
まずは、アナログな実験をしてみた。
原理というか仕組みを、ぜひとも皆に知っておいてもらいたかったから。
じゃないと、私以外が作製出来ないんじゃないかと……。
冷蔵庫は、同じ冷却温度の冷蔵庫が作製できるように、自作の温度計を作ってみた。
使う物は、ガラス瓶と長めのガラス棒(中が空洞の物)、コルク栓、記録用木材。
コルク栓の中心にガラス棒がキツキツに入る穴を空ける。
そのコルク栓にガラス棒を刺して固定しておく。
記録用木材は、ガラス棒の中を通る水の高さの印をつけるものにする。
次に、ガラス瓶にお水を入れ、コルク栓をする。
そうすると、お水が気圧によりガラス棒内に侵入してくる。
このガラス棒内のお水の高さが水温を表している事になる。
うん、ざっくりだから前世のように〇度とか正確には分からないけど。
その後、魔法でガラス瓶の中のお水を冷やしていく。
すると、あら不思議。水の収縮によってガラス棒内をお水が下がっていく。
この、ガラス棒内のお水の高低は、温度を目で見て確認することが出来るものなので、他人に温度を伝える際にとても分かりやすい。
ガラス棒内のお水の位置を記録用木材に残しておけば、瓶の中の水が温くなっても何度も同じ温度に冷やす事が出来る。
そう、同じ温度を作り出せる事が出来る様になるのだ。
そのため、「規格温度」が設定できるようになった。
この、記録用木材に印した「規格温度」で魔石に冷却の魔方陣を刻む事で、ほぼ同じ温度に冷やす魔道具の量産が可能になった。
温度計はあくまでも目安なので確実とは言わないが、人によって温度差が酷い冷蔵庫にはならなくなったので上出来だろう。
私としては、更に分かりやすい温度として、氷る一歩手前、つまり、ガラス棒内のお水が一番低い位置を保つ温度を提案している。
記憶を掘り起こして、水は氷る手前が一番収縮し、氷ると逆に膨張していく事を思い出したから。
そして、コンロ。
これは、ずばり炎の色と炎の長さで同じ火力を測るようにしてみた。
染色用の染粉を混ぜ合わせて色見本を作り、鉄の板で炎の長さを記録しましたよ。
めっちゃ熱かった!
こうして、アナログで実験した後は、もちろん魔石を使って魔道具にしました。
その名も、「温度計」と「炎測計」。
温度計は、魔石の周囲の気温が氷る手前の温度に近づけば魔石が紺色から水色になっていくという仕組み。
炎測計は、弱火・中火・強火の3種を測る魔石3点セットで、規格の火力になると魔石が赤色になるという仕組み。
どちらも魔石を握って魔法を発動する使い方で、作製部の方々には好評だった。
アナログ実験で理論が理解できたようで、実験に付き合ってくれたスーさんを含むルーナ商会の作製部の方達も、「温度計」と「炎測計」が作れるようになりました。
おかげで、温度と火力の規格を設けた「冷蔵庫」「コンロ」の量産が出来るようになり、“ルーナ商会の冷蔵庫とコンロは、どれを買ってもハズレが無い”と評判になっていて、売り上げが伸びている。
「冷蔵庫」「コンロ」は特許登録できなかったが、“同じ温度を調べる”「温度計」、“同じ火力を調べる”「炎測計」が特許登録になった!!
他にも、性能アップ商品として、
・結界石―――魔法攻撃だけではなく、物理攻撃も防げるようになりました。
・魔法鞄―――見た目の倍から数倍以上の大容量を持つだけでなく、時間停止が付与できました。
の作製に成功しました。
しかも、劣化バージョンの
・結界石―――物理攻撃を防ぐ。
・魔法鞄―――時間停止する。
とともに、「結界石(魔・物)」「結界石(物)」「魔法鞄(〇倍・時間停止)」「魔法鞄(時間停止)」の名前で4つが特許登録になりました。
この『物理攻撃防御』と『時間停止』は、利権争いの原因になったレシピの中の2つで、しかも、争いによって消失した“幻のレシピ”だったらしく、商業ギルドで一騒動ありました。
どうやら、異空間や異次元を利用する魔法に関して習得者が揃いも揃って秘匿して誰にもその魔法を教えなかったため、今や”現存しない魔法”とされていたようです。
……前世の記憶をフルに活用してますが何か?




