02 お出掛け開始
読んで下さりありがとうございます。
本日、当作品が書籍として販売されます。
応援して下さっている方々のおかげです。本当に有難うございます。
兄におねだりをしてから数日後、領都にお出掛け出来ることになりました♪
兄、意外にちょろいな。
ただ、口を酸っぱくして「誘拐されそうになったら全力で抵抗しろ」と言われたけど。
全力で抵抗したら、領都がふっ飛ぶと思うんだけど……。
年々、体内に感じられる魔力が多くなっている事は数年前に伝えたんだけど、忘れてるのかな?
まあ、私も目立たないように全力で魔法を使った事ないんだけどね。
だから、もしかしたら父と兄は私の全力を過小評価してるのかも。
まあ、よその国に目を付けられても面倒臭いし、猫を被っておこう。
さあ、それよりもお出掛けよ♪
……はて、そういえば私、モンスタービートの前は年齢のせいで、モンスタービート後は軒並み家屋が破壊されてて、買い物をしに家からほとんど出た事が無い。
……あれ? 引きこもり?
いや、邸宅の庭とか練習場とかには出てたんだけどね。
服や小物は商人が家に来てくれるし、食料品は料理長が作って出してくれるので自分で作らないし。
そんな訳で、買い物をしに出掛けなくても生活できたんだよね。
だから、ゴアナ国の王都で買い物したのが久しぶりで、ものすごく楽しかった。
お金や買った商品は、お付きの侍女や使用人が持ち歩くから私は何にも持って無かったけどね。
……でも、一人で買い物とかしたいなぁ~。
冒険者になるんだったら、一人で家事が出来ないと仲間集めで大変な事になりそうなんだよねぇ~。
まあ、今はまだ無理か。
10才だし、幼女だし、何をするにも保護者が必要だもんね。
さて、お出掛けと聞いてミアンがフリフリのドレスを着せようとしたのを阻止して、スッキリ庶民風のワンピースに着替えました。
ゾロゾロと護衛を引き連れて歩くのは余計に危険だと判断されて、スーさんとニールと私の貴族3人組、ジョンとエドワードとアルバートの護衛3人組、ミアンとウェルナの2人組の3つに別かれて、護衛3人組と従者2人組が他人のふりをしながら側にいることになりました。
ジョンやミアン達は市井にいてもおかしくない服装で、貴族3人組はお金持ち? に見えるくらいの、ちょっぴり良さげな服装です。
これで、私がまさか領主の娘だとは思われまい。
円形をしているマルナ領都は、大まかに×で区切られ4ブロックに分かれている。
市場や農場がある生産区域。位置は西のブロック。
商店街や冒険者ギルド商業ギルドがある商業区域。位置は南のブロック。
職人の工場が立ち並んでいる工業区域。位置は東のブロック。
領主の邸宅や領政に携わる人達が住んでいる行政区域。位置は北のブロック。
うちの領地は領都や他の街、全ての町村の南(南西)側に『魔の森』があるので、冒険者ギルドのある商業区域が必ず南に配置されているのがマルナ領の街の特徴になっている。
どの街も村も同じような区域の配置になっている。
このように区画整理されたのは、モンスタービート経験を経て魔物の侵入を防ぐためと、領民の避難のため。
そして、それぞれの区域を隔てるようにメイン通りが通っていて、路地が広がっている。
では、商業区域か工業区域のメイン通りを目指しましょうかね。
領都の邸宅―――領宅―――は行政区域のほぼ中心にあるので、まずは馬車に乗ってメイン通りを目指す。
もちろん目立たないように質素な馬車で行きます。
まだ午前なので市場も賑わっているはずだけど、午前中で商品が売れて少なくなる市場は、酷い混みようなので一番初めに却下されました。
なので、商業区域か工業区域に行こうとしていたけど、ニールから注意がきた。
「レミー様。この混みようですと商業区域・工業区域のどちらかに絞った方が良いと思います。何をご覧になりたいですか?」
にこやかだけれど“我儘は言いませんよね”と目で訴えてこられて、どこに行きたいか考えた。
っち。両方は無理か……。
メイン道路などの主要な通りは馬車が通れるようになっているが、裏路地などの通りは馬or徒歩でないと通れない。
邸宅から商業区域、工業区域までは歩くには距離があるので馬車を使わないと無理。私が。
なら、馬車に乗ってメイン道路で降ろしてもらって、後は徒歩か……。
目指すは掘り出し物がありそうなお店だな。
ちらっとメイン道路沿いの店を覗けば売れ筋商品は分かるだろうし。
んじゃぁ……どっちにしようかな……。
まあ、まずは、参考になるような魔道具が他国から来てないか見てみたいから商業区域にしようかね。
もしかしたら、冒険者ギルドも見れるかもしれないし!
「魔道具を見に、商業区域に行きたいわ」
☆☆☆
商業区域のメイン道路沿いまで馬車に乗って行き、馬車昇降所で降りる。
結構込み合ってて、昇降の順番待ちの列ができていた。
昇降所は貴族用と庶民用の所があり、私達は貴族が乗っているとバレる様な豪華な馬車ではなく、庶民が乗る質素な馬車を使ったので、当然庶民用の昇降所に並んだ。
だって、領主の娘ってバレたら面倒だし。
馬車を降りると、道路の中央に馬車や馬が闊歩し、両端に人が歩いていて活気に溢れていた。
皆楽しそうにお喋りをし、笑顔で歩いている人達が多く、私もウキウキしてきた。
自然と耳に入って来る他人の会話に耳を傾けながら、まずはニール達のお勧めのお店に案内される。
「レミー様、今、領都で一番人気のある魔道具屋って何処かご存知ですか?」
「ううん。知らないわ」
「では、有名処を何軒か回って、それからレミー様の行きたいところに行きましょうか?」
「そうね。それでいいわ。私が見たいのは他国の商人が持ち込んでいる魔道具が見たいわ」
「まあ、それならこのメイン道路にもありますから、寄ってみましょうね」
「あとね、掘り出し物がありそうな所も行きたいわ」
目をキラキラを輝かせておねだりをすると、ニールとスーさんが目で会話を始めた。
むむむ。ダメなのかな?
「では、メイン道路の商店の後は、中通りに参りましょう」
「そちらは少しランクがさがりますが、庶民的なお店が沢山ありますよ」
決まった事のようにニールが言い、微笑ましそうにスーさんがフォローをするが、中通り以外には行かせない感がひしひしとする。
いや、私を何だと思ってるの? ニールよ。
我儘を言って迷子にでもなったら、父と兄がお出掛け禁止にしそうだから、無理は言わないよ。
読んで下さりありがとうございます。
ここ数日、ソワソワとしっぱなしで落ち着きません(笑)
今日は、ドキドキしながら書店巡りをすると思います(笑)




