少女期 11
読んでいただきありがとうございます。
誤字があったり、おかしな表現があったりするかもしれません。
すみません。
客間の二人用のソファにスーさんと並んで座り、向かいに兄とニールが座った。ジョンと+4も一緒に話を聞くように言われ、テーブルを囲むように空いているスペースに椅子を持ってきて座った。
侍女が用意してくれたお茶を飲みながらほっこりしていると、おもむろに兄が切り出した。
「レミーは現状をどう把握してる?」
「えーと、ゴアナ国からは攻撃対象?私は、屈辱解消・借金回避・脅迫ネタ・洗脳ネタとかに、使われそうですね。あと――――――――――――――」
年齢的に、バルフェ家の中で御しやすいのは、私だ。だからきっと、一番狙われる。
ついでに、今回の会議の件が市井に広まれば、
商人は素早く国を切り、他国へ出ていくかもしれない。貿易が滞る可能性もある。出入国の税が上がることで、物価が上がる。
市民は、借金返済のために税金が上がり、物が手に入らなくなり余計に物価が上がる。「混乱・貧困」が起こり、「治安悪化・盗賊増大」する。反乱もありえる。その対象が「ゴアナ国」だけでなく、原因を作った「マルナ領地」になる可能性もある。
ゴアナ国を通して交易していた周辺国は、物流停滞・税金増額・物価高騰・治安悪化などの煽りを食う。特に、ゴアナ国に頼っていた国は、多大な影響が出るだろう。
そんなことをつらつらと話すと、「よく考えたね。」と兄から拍手をもらった。
(―――――すげぇ恥ずかしいんですけど。)
兄が帰ってくるまで、部屋に引きこもってたので、スーさん・ニール・ジョンさんの他国出身者を中心に 色々と話してたのだ。
王城の会議室から出た後、ニールが言った「誰かが訪ねてくるかもしれません」の一言の意味を、私は、
・怒鳴り混んでくる もしくは 襲撃
・毒殺、暗殺
・借金軽減、条約違反の軽減などの味方依頼
・誘拐後に、脅迫・洗脳
だと思っていた。そこに、
・裏取引(国交的優遇措置に関する事)
・マルナ領地への帰属申請
・婚姻の既成事実作成
などを聞かされ、早く帰って良かったと心から思った。特に一番最後!!変態!!
「で、これからゴアナ国内はどういう風になるのかな?」という話題もあり、愉快な仲間たちとワイワイ話した内容をまとめて、兄に言ったのだ。
「レミーは、何も知らない国民が苦しむのをどう感じている?」
国策に関わっていない者を無下にすることに、心が痛むのだろう。兄の顔が少し辛そうに歪む。
次期領主として領民を守る立場から考えると、あのゴアナ国の貴族達の尻拭いのために、今度は大勢の他領民達が苦労することになるからだろう。
でも、私は、他領地がしている事を同じようにしているだけだと思っている。兄の領主としての考えも理解は出来るが、納得・同意が出来ない。
それよりも、哀愁よりキラキラが勝ってる!はぜろイケメン!
心の声が聞こえたのか、いつもの顔に戻し、黒いオーラを少しずつ醸し出した兄は、ちょっぴり低い声になった。
「レミー?」
「だって、お兄様。知らなければ何をしてもいいのでしょうか?」
兄に負けないブラックオーラを出しながら言葉を続ける。心の奥にあるドロドロとした黒く濁った感情が少しずつ表層に浮き上がってくる。
私は前世記憶とテヨーワで得た知識で、大人顔負けの考え方が出来る。でも、前世記憶は異世界のものだから、テヨーワで通用するものかどうかは解らない。
価値観や 物の見方受け取り方、思想、思考、色々と違いがあり自分なりに折り合いをつけている状態なのだ。
結局 この世界で私は、領地からほとんど出たことの無い 一般教養的な知識経験しかない 10才の子供で、理解出来ない事も納得いかない事も多々あるのだ。
治安が不安定で、命の価値が低いため、危険回避のために自分を一番に考えなければ生きていけない。
自分の犠牲と他人の犠牲が秤にかけられる。
大切なものを守るためには、一定のものを切り捨てる覚悟が必要になる。
その「自分が生きるため」の覚悟が無ければ、すぐにこの世界に潰されてしまう。
思考の切り替え・割り切りをしたからといって、感情が無くなるわけではない。
知ってしまった事実とされた理不尽な行為。
理解・推測・想像など頭で処理することは出来る。
でも、それに心の整理がついてくるかは別だ。
「お母様や祖父母、領民達。モンスタービートで亡くなった祖先の方々がこのゴアナ国のみならず、大陸を守っていることは、すでにこの大陸の全種族は知っているはずなのよ。『10年に1度モンスタービートが起こる大陸』って。『じゃあ、誰がそれを討伐しているのか』って。」
「知っているはずなのに考えていないだけなのよ!」
「誰かが犠牲になっていることを!実感がないから!」
「私はお母様を!友達は父親を!母親を!両親を!知り合いは友人を!息子を!娘を!」
「十数年に1度哀しみが訪れる領地があると知っているのに、自分は関係ないと知らないふりをしているんです!」
胸の奥に仕舞っていた哀しみに呑まれ、涙が溢れて止まらない。
今でも時折胸によぎる思い。
母が生きていたら・・・
聞きたい事か沢山ある。
教えてほしい事が沢山ある。
話したい事が沢山ある。
聞いてほしい事が沢山ある。
名前を呼んでほしい。
笑いかけてほしい。
一緒にお買い物かしたい。
一緒に魔道具を作りたい。
・・・・・でも、母はもういない。
この言い様のない悔しさ・哀しさ・虚無感。
この哀しみは、モンスタービート討伐に関わる者達に必ず訪ずれる。
討伐参加は自己責任かもしれないが、ほぼ強制参加になるのがマルナ領・アルナ領だ。
だからこそ、条約で契約されたのだ。その分の対価を払うと。
(―――――こっちは命懸けて契約を守ってんだ!!そっちも命懸けて契約守れや!!)
知っているはずなのに知らないふりをするなら、知っている状態に気づかせればいいじゃないか!それが今なんだ!とボロボロ涙をこぼしながら喉をつまらせて言った。
母が亡くなって以来の私の大号泣に、兄は慌ててソファーから立ち上がり私を抱っこした。子供にするようにゆったりと左右に体を揺らし、背中をトントンしてくれた。
愉快な仲間たちは、初めて見る様子にどうしていいのか解らず、オロオロあたふたしていた。
「ごめんね、レミー。我慢してたんだね。寂しかったんだね。悔しかったんだね。」
しばらく抱っこされた後、スーさんは兄が座っていたソファーに移り、二人用ソファーに兄が座り、その膝の上に横座りにされた。ぎゅうもトントンも継続中。
「大丈夫かい?」
涙を拭ってもらい、水の入ったコップを渡された。えぐえぐしゃくりながら、水を飲む。うん、美味しい。コップを両手で握りしめ、話を続ける事にした。
「お母様や領民達が守ってくれた事に対価をもらうだけですもの。文句や意見を言うのなら自分達でモンスタービートをどうにかすればいいわ。」
ストックがあと1話‥‥‥orz
もう少しで第一部完結になる予定ですが、少し更新が遅くなりそうです。
続編についてですが、書いてみたいと思い始めました(´∀`)




