兄の闘い 4
沈黙で刻々と時間が過ぎて行く。議長である宰相が青ざめてどうすればいいのかという思考に陥り、進行役を放棄しているからだ。
段々と各国の代表者たちがイライラし始める。皆、びっちりスケジュールが埋まっている忙しい方々だから、時間がもったいないと思われているんだろう。
うちの貴族どもはあまりにも沈黙が続いてるものだから、身の置き場がないのかそわそわし始めている。
さっさと役目を思い出せよ!!宰相!!
5分ほど時間が経って、ホザ王国の代表者が溜め息をついて言った。
「はあ~。議長が進行せねば会議は終わりませんぞ。時間は有限ですぞ。」
宰相が青を通り越して白くなった顔をあげ、言葉を口にしようとするが、掠れているのか息が漏れているのかわからないが、声が聞こえない。
ゴアナ国王も白くなったまま微動だもせず固まっている。
ついにイライラの頂点に達したのか、ラハト帝国の代表者が冷たく言い放った。
「議長交代を要求する。これでは会議が進まない。しかも、議題が契約に違反しているゴアナ国の改善だ。自国に関する議題に客観的になれないなら、他国に議長をしてもらうべきだ。」
「そうですね。時間の無駄ですね。」
「そうですな。」
ゴアナ国以外の国々で決がとられ、ホザ王国の代表者に議長になってもらうことになった。
パアーンッ
ホザ王国の代表者は、手を叩きゴアナ国側の面々を正気にさせ、大きな声で言った。
「今、会議中ですぞ!!呆けるのや青ざめるのは後にして、会議に集中してくだされ!!」
さすが、代表に選ばれる方だと感心する。さて、うちの国から返事をもらってないんですがね。恩に対しての考え方を。
ホザ王国の代表者に顔を向け、僕はいつでも会議を再開しても大丈夫だと目線を送る。
「では、会議を再開いたしますぞ。議題についての確認ですが、ゴアナ国の許しがたいマルナ領地への対応を改善するということですな。」
僕はしっかりと首を縦に降り頷く。
「条約に参加している国々は、ゴアナ国のマルナ領地への対応は条約に違反する行為であると思われますかな?」
各国の代表たちが揃って頷く。
「マルナ領地代表者の方に聞く。どうすれば良いと思われているかな?」
優しさを声に滲ませて、僕に尋ねてきた。父に目線を送ると、父もこちらを見ていた。黒い笑みを浮かべて。僕も黒い笑みを返し、ホザ王国の代表者に返答する。
「今まで受けるはずだったものをきちんと渡していただきたい。」
曖昧な表現であるため、ホザ王国の代表者も少し困った顔をして聞いてきた。
「それは、どういうものじゃな?」
「先程説明をしましたが、多くの事がゴアナ国の勝手によって廃止されたり減らされたりしております。増額しろとは言いません。200年前に決めた金額で結構ですので、本来受けとるはずだった金額との差額をまずは、お支払いいただきたい。これは、モンスタービート討伐への対価として決められていたことです。僕たちも先祖たちも、ちゃんとその役割を果たしています。ですから、正当な対価としてお支払いいただきます。」
「うむ。正当な理由じゃな。各国の皆様もいかがかな?」
異議なしと皆さんうんうん頷いてくださった。
「他にもあるかの?」
少し笑いながら、面白がるように言われた。
僕も少し笑みをこぼしながら、
「一気に申し上げてもよろしいでしょうか?」
と言うと、ホザ王国やラハト帝国の代表者の方々がフフフと笑われた。
「よいぞ。」
「では。先程申し上げた正当な対価とは別に、切り取った領地の代金をお支払いいただきたいこと。これらは、絶対にお支払いいただきます。ゴアナ国が、僕らマルナ領地から取り上げたものですから。あとは、貴族全員、魔物討伐に一年に3回参加すること。貴族はモンスタービート討伐に最低1回は参加すること。上位貴族は一家につき1人成人男性をモンスタービート討伐に毎回参加させること。国や他領地の討伐部隊を200年と同等かそれ以上にすること。くらいでしょうか。ただし、正当な対価及びかすめ取った領地代金を払い終わるまでは、マルナ領民はモンスタービート討伐に参加しません。」
イイ笑顔で言い切った。ホザ王国の代表者が目をぱちくりさせた。
「モンスタービート討伐に参加しないとは?」
「領民全員、避難させます。貴族は義務ですから辺境伯爵一家はもちろん参加いたしますが、庶民は僕ら貴族のように剣や魔法を習う機会は ほぼありません。ですから、領民はそもそも自衛の範囲内でのお手伝いだと考えます。それなのにうちの領民に前衛などという危険を犯させるんですよ。ゴアナ国の軍務団や討伐部隊は。うちの領民にそんなことをさせるなら、言い出した方の領民も同じようにしていただかないと。そして、貴族への対策を受け入れて頂けないのならば・・・」
「・・・ならば?」
「僕らマルナ領地はゴアナ国から離れるか、領地全てをゴアナ国に買い取っていただき本当にゴアナ国領地にしていただきます。ああ、全領地買い取りになった場合 バルフェ家及び領民は含まれていませんので、各自それぞれが好きに生きさせてもらいます。ゴアナ国を出る者、他領地へ移り住む者、冒険者になる者、など、色々いるでしょうね。最後に、治外法権を行使いたします。今日から、『マルナ領地』を『国』と同じ扱いにしていただきます。ゴアナ国の領地という感覚でいらっしゃることが、そもそもの原因だと思われますので。」
「なんと・・・」
「以上です。まとめると、1つ目は正当な対価及びかすめ取った領地代金の支払い。2つ目はその支払いまでの条件。3つ目は貴族への具体的な対策。4つ目はその対策への条件。5つ目は、これら全ての事が完了するまでの対策ですね。率直に申し上げて、これらは最低ラインの事です。僕は、これらとは別に『今までの恩』をマルナ領地に還元されるべきと考えています。・・・が、ゴアナ国の皆様の『恩を返す』は、どうやら僕とは考え方が違うようなので、最低ラインの事ぐらいはしていただくように、明言しました。」
各国の皆様が盛大な拍手をくださった。
「では、各国の代表者の皆様は、マルナ領地代表者が出した案が正当な理由と対価であると認められましたの。ゴアナ国王様並びに宰相殿。そして、この部屋にいらっしゃる貴族の方々、ゴアナ国以外の国々は、マルナ領地の意見を是としております。いや、はっきりと申し上げる。契約を違反し続けているのはゴアナ国ですぞ。あなた方の返答次第では各国に賠償金も発生いたします。話し合いの時間はどれ程必要かの?我らはゴアナ国が出す返答が是か非か判断いたします。」
ホザ王国の代表者がゴアナ国・宰相に顔を向け、無表情で返答を待つ。目を泳がせて、国王と宰相がこそこそと話をし、白い顔色のまま言った。
「1週間ください。」
父と僕はゴアナ国側の話し合いには参加しない。マルナ領地出身の者以外で話し合い、議題や意見への返答を出すように、議長が苦言を呈したのだ。
ゴアナ国側は、朝から晩まで話し合いのようだ。父だけでなく僕も他国の方々から面会の申し込みが殺到し、邸宅に帰れなくなった。レミー、寂しがってないかな・・・・・・
会議が4週目に入った。ゴアナ国側が出した返答を聞くときがやってきた。
―――――ゴアナ国はどうやら腐ってるな
父 ファルガ・バルフェ ・・・灰色の髪で紺色の瞳のイケメン細マッチョ。41才
兄 オルコ・バルフェ ・・・灰銀色の髪に紺色の瞳。父母の顔面良いとこ取りイケメン。20才




