兄の闘い 1
モンスタービート会議の兄の視点です。
(次回モンスタービートへの対策がまとめられてきたな。そろそろマルナ領からの議題を出させてもらおうか。)
「恐れ入りますが、最後の議題をマルナ領から1つ挙げさせていただきます。」
会話の合間にできる一瞬の隙をついて、会議卓の面々によく姿が見えるよう、壁際に配置されていた椅子から立ち上がり 一歩前へ出て発言をした。きっと僕の顔は、獲物に食いかかる野獣のようになっているだろう。
周りの貴族はざわめき、国王・宰相はなんで新たな議題を出すんだとこちらを睨み付けている。お門違いもいいところだ。他国の質問に答えられないのは、自分達がきちんとモンスタービートに向き合ってなかったからだ。1度十代に討伐に参加したからといって、終わった気になるな。モンスタービートはこれからも続いて起こるのに、なぜそれが解らない。精一杯取り組んでる気になってるが、その場しのぎに過ぎない。そもそも、精一杯というならなぜうちの領地がこんな扱いを受けてるんだ?!
「各国の皆様が、これまでに国としてモンスタービートにどのように取り組まれてきたのか、そして、どのように対策を取られてきたのか、是非とも、我が領地の現状を知っていただき参考までにご意見を頂戴したいのです。」
「そのような議題は聞いておらん。」
即座に国王から突っ込みが入るが、根回しは済んでいる。
宰相に顔を向け、
「我がマルナ領から国へ、モンスタービートに関する『これまでの国の対応の経緯』や『我が領地への対応の経緯』など、是非ともお調べいただきたいと特務団に申し込みました。」
「我が特務団は宰相並びに軍務団・近衛団に報告しております。そして、各部署から資料を受け取っております。」
宰相が顎に手をあて考え込み、そう言えば・・・と気付いたようだ。
「確かにそのような申し込みがあったな。」
「その折に、合わせて議題の申し込みもしております。200年前のモンスタービート条約を踏まえての確認だと。なにかあったら議題なりますと。」
場が凍った。議題を出したということは、違反が見つかったということだから。
国王と宰相は顔面蒼白、軍務団団長はこちらを睨み付けている。
「たかが 一領地が議題を挙げるなど控えろっ。」
堪えきれなかったのか、軍務団団長が怒鳴り付けてくる。こいつこそ自分の言ってることが、理解できてんのか?!
「恐れ入りますが、一領地がとおっしゃいますが、モンスタービート条約は隣国イラルドのアルナ領並びに我が領地についても契約が結ばれています。軍務団の団長をされていて 会議卓に着かれている方が、まさか、ご存知ないはずがありませんよね。」
「ぐっ・・・。」
黙った。本当に知らないようだ。このやり取りを見た各国の代表者たちは軍務団団長に白けた目を向けた。そして、イラルド国の代表者から援護がきた。
「彼の席がこちらの会議卓に必要と思いますが。皆さんどうでしょう?」
各国とも、アルナ領を抱えているイラルド国からの提案のため賛成のようだ。文官が壁際にあった僕の椅子を何処に置いたらいいのか迷っている。身分的に一番下なので、皆さんからよく見える、今の場所より会議卓に近いけど、同列に並ばないような位置に誘導して、その椅子の前に再び立ったまま口上を述べた。
会議出席国
大国からはホザ王国、ラハト帝国、イラルド国、そして我がゴアナ国、
中小国からはヨーワ教国、王妃の祖国と3ヶ国が参加
モンスタービート及び「アマルナ国」についての契約(モンスタービート条約)
約200年前に、超大規模モンスタービートの発生により、大陸の約1/4が壊滅、約50万人死亡。南の『魔の森』を囲うように存在していた「アマルナ国」が、人口の1/4が死傷、国土壊滅状態。その「アマルナ国」の支援と、モンスタービート対策として締結。(詳しくは、『幼女期 8』)




