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29話:換装

小タイトルを少し変更。

 以前、立ち寄った消失した城の跡地へと言って、そこからさらに南へと数分歩いた。

 そこには鉄の柵で敷地が囲われていて、その中央に一つの建物があった。

 冒険者ギルドだった。

 モニカによると、そこを経由して中にはいることができるらしい。


「こっちです……」


 モニカに案内されて建物の中へとはいっていく。

 木のカウンターの向かいには若いお姉さん2人と上司っぽいお兄さんが1人いた。

 中には以前山賊退治で見かけた冒険者と似たような、しっかりとした皮や鉄の防具をつける男女がいる。


「こんにちは。御用向きはなんでしょうか?」

「はい、訓練場を使用したくて」

「そうですか。では冒険者のバッジを見せてもらえますか?」

「えっと……持ってなくて」

「それではおつくりしますね。そちらの方も一緒ですか?」

「はい、よろしくお願いします」


 一連のやり取りの後、冒険者のルールが書かれた紙を手渡された。

 

 その後お姉さんは訓練場の説明を始めた。


「訓練場の使用は、無料です。時間はギルドの閉まる日付変更までとなります」

「はい」

「それでは、こちらへどうぞ」


 俺たちが案内されたのは、ギルドの左側面にある扉だった。

 そこから訓練場へとつながっている。


 土の地面と簡単な腰の高さまである鉄の柵があるだけ。

 中央に白いラインが引かれているものの、それ以外にこれといったものは見当たらなかった。

 中ではすでに訓練場を使っているグループの姿が見えた。

 あの集まりがそれぞれパーティを組んでいるのだろう。



「それで、モニカはどんな訓練をするんだ?」

「ちょっとこの武器に慣れたいので、軽い素振りと実践をしたいんです。お兄ちゃんがついてきてくれたので、後で相手をお願いできますか?」

「わかった。じゃあ俺も少しそっちでやりたいことがあるから、素振りが終わったら声かけてくれ」

「はい」


 俺は隅の方で静かに目を閉じた。

 身体の中を流れる電気信号。それが神経を介して身体の内臓や筋肉を動かしている。

 それが人間の身体が動く仕組みでもある。


 人間は普段、全力を出せないように脳が制限をかけている。

 火事場の馬鹿力みたいに全力で動き続けると、身体がぶっ壊れてしまうからと。

 今俺は勇者だ。


 その上で身体の制限がかかっていると考えると、俺はもっと速く動くことができるはずだ。

 神経伝達の最も早いタイムを維持できれば、反射神経、動体視力、思考をもっと強化することができるはずなのだ。


 俺は今日取りに行ったリボルバーを手に持った。

 この武器を一度、宿へと転移させる。たまも取り外して一緒に宿に送っておく。

 その後、俺は目の前に木のマンシルエットを出現させた。ついでに丸のマークも。


 電磁気操作から、わずかな電気信号の流れを操作して、筋肉への伝達へと変えていく。


 全ての神経を研ぎ澄まして、電気の流れを最速に。


 手に銃を転移、


 それからすぐ弾を装填、


 狙いをマンシルエットに向けて、撃ち出す!


 パンっ!


 独特のくぐもった音とともに、


 弾はどこかへと飛んで行った。



「想像以上に当たらん」


 次は能力を使って弾の軌道を操作しながら撃った。


 今度は真ん中へと命中した。



「よし、あらかた武器の換装と能力の使いどころを試しておこう」


 俺は能力と武器の組み合わせから、できる限り能力の対策へと対抗するような使い方を意識して試した。


 まず思いついたのは、転移させて背後から槍や弓を飛ばすことだ。

 その後、手に持った剣を伸ばしたり、盾を拡大して質量を変化させるなど、生命体の攻撃で強力な打撃でも耐えられるようにしていく。


 とはいえ、実際に魔法の多様さがどの程度か分からないから、それにも限界がある。


「やっぱあの子に俺の『相談役』を頼むか」


 さっき言おうとしたが言えなかった。

 あの感じだと、明らかに断られそうだったからだ。

 ディビナの時みたいに、相談役をやってくれるような上手い言い訳があるといいが。


 そこに、モニカの声がかかった。


「お兄ちゃん、終わりました。相手をお願いします」

「ああ、わかった」


 すっかり手になじんだ感じでハルバードを握っているモニカ。

 あいている場所で互いに向かい合った。


「じゃあ、始めますね?」

「ああ、いつでもいい」

「じゃあ――」


 そう言った瞬間にモニカの姿が消えて、俺の首筋にハルバードの刃先がつきつけられていた。


 あまりの出来事に俺は驚いた。


「……すごいな」


 俺は感嘆しながら、後ろでにこっと笑みを浮かべたモニカを見た。

 成功してすごく喜んでいるらしい。

 しかし、いまのはなんだ?


「実はですね……えへへ」


 嬉しそうなモニカは、刃先をどけて元の位置に歩いて戻り振り返った。


 さっきの、姿を消して一瞬でここまで走る、それから攻撃を当てた?

 と言うには、後ろに回られるのが早すぎだ。


 そう言えば、モニカがどうやって俺の通った王国から台地までの道のりをずっと見ていたのか、まったく知らなかった。

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