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第3話

体の強化が終わった後の早朝5時頃に守途すず幸治こうじは起きて出発の準備を手早く終えた。

その後、早速2人は森の開けた場所に行きお辞儀をして組手を開始した。


2人は開始と同時に閃核を使い視認することすら困難な速さで戦った。

幸治は雷拳で接近戦に持ち込もうとするのに対し、守途は緑鞭や樹咆弓や樹刃薙で中巻距離を軸に応戦した。


「オラッ!そこだ!うおっ!?」

開始1分で幸治が懐に入り込んだと同時に守途は緑鞭で自分をギリギリ触れないように新体操の紐のように自分を中心に回しその直後に一気に緑鞭を幸治に向かって広げるように展開させ攻撃と防御を同時にした。

それを幸治は一瞬反応が遅れたもののギリギリで回避した。


どうやら幸治の方が速さは上らしい。一拍間を置き2人は頷き合い一礼して組手は終わった。

「あれを避けるなんて凄いね。閃核にはだいぶ慣れたみたいだね」

守途は一息ついて感心したように言った。

「えっ!?当てるつもりで組手してたのか?寸止めじゃなくて?」

幸治は驚きのあまり心の声が漏れて守途がキョトンとしたので恥ずかしくなり思わず守途から顔を背けた。


「ま、まあ結構閃核に慣れたし良いか」

幸治はそう言って強がり恥ずかしさを誤魔化した。

「あはは、ごめんごめん。本気でやった方が雰囲気も出るしより集中が出来ると思ったからさ」

「分かった、分かったからこの話はもう終わりにしよう」

ぐうーぎゅるるるる。話が終わった途端2人の腹の虫が鳴いた。

「「あはははははっ!」」

すると2人の緊張が緩んで一緒に大笑いした。

「そろそろ朝食でも食べますか。」


守途がそう言い幸治は頷き朝食をガッツリ食べてその後荷物の確認をして朝の7時頃に出発した。

幸治達は神殿のある山を3km程進みようやく神殿に着いた。


神殿のすぐ側には威圧的な雰囲気の190cmはあろう体格の良い白髪で色白の男と158cm程の華奢なこちらも白髪色白の女が小さめの岩に腰掛けて待っていた。

「へえ、こいつが例の異世界人か?」背の高い男がそう言い「思ったより小さいねぇ。」華奢な女がそう言ってどちらも興味を示した笑みをしたがまだ威圧的な雰囲気だ。


「この人達が例の俺達の仲間か?」

幸治は念のため警戒してそう尋ねた。

「そうだよ。背の高い、ちょっとマッチョな男の方が天白真帯あましろまおびでこっちの華奢な女性の方が天白星奈あましろほしなだよ」

守途は落ち着いた口調で紹介した。


幸治が納得して頷くと真帯達はゆっくりと近付いて手を差し伸べて握手を求めた。幸治が握手に応じると真帯達は握った手と次に顔を見て頷いた。

「うん、実力は十分ぞうだ。合格って所かな」

「私もそう思う」

真帯と星奈はスッと笑顔になり威圧感も先程よりいくらか緩んだ。


「ん?俺、やっぱり見定められてたの?」

幸治は口を尖らせ軽く文句を言った。

「まあまあ、認められた訳だし良いじゃん?」

守途は一瞬焦って幸治を宥めた。


「じゃあ、早速神殿に入ってちゃちゃっと済ましますか。」

「…スルーすか?真帯さん?星奈さん?」

幸治はスルーした星奈とそのまま仕切った真帯にツッコんだ。

「…ぷっ、あはははは」

一拍間があり幸治達は笑った後、顔を引き締め神殿に入って行った。


代理戦まで残り23日。


幸治達は神殿に入ると妙な気配を感じ臨戦態勢に入った。

神殿の中は壁や柱は大理石のようで地面は少し凸凹しており小さな石がそこら中に転がっていた。

気温は30℃を軽く越えており空間は真っ赤だった。そして何故かいるはずの魔物の姿が一匹も見当たらなかった。


「暑ッ!何だここ暑すぎるぞ」

真帯が真っ先に文句を言った。その暑さに幸治達は大量の汗をかき目眩がして意識が朦朧とした。

「ここに来る前に受けた試練は閃核を使うことだったし閃核で何とかなるかもしれないな。ちょっと試してみる?」


星奈の提案に賛成し、閃核を使ったらだいぶ疲労が減った。

そしてそれを合図に突然溢れるように魔物が出現した。

「「キイキイキイ!クワックワックワッ!ガルルルル!」」

剛猿ごうえんー腕が長く筋骨隆々の猿ーや剣鳥けんどりー足が剣のように鋭く長い大きな鳥ーや煙猫けむりねこー真っ白い巨体でゆらゆらした煙のような猫ーが姿を現した。どの魔物も黒色か白色のオーラを纏っていた。


幸治達が警戒して構えを取ると魔物達は息を合わせ一斉に襲い掛かってきた。

戦闘が始まり1分程で魔物達を倒したが周りを見ると50体程の魔物達に囲まれていた。

幸治達は不利だと判断して幸治が雷拳で相手を怯ませた隙に魔物の群れを一気に突っ切ろうとした。


だが1番後ろにいた剛猿の拳を星奈が避けきれず尻餅をついてしまった。

それに気付いた幸治達はやむ無く応戦をした。

魔物達は各種族に分かれてそのまま幸治達に襲い掛かった。


幸治は剣鳥の鋭い蹴りを掻い潜りながら懐に入り雷拳を連打し、守途は剛猿達のリーチの長いパンチを軽やかなステップで避けながら緑鞭で高速の攻めで対応し、真帯は衝撃波で煙猫達の動きを封じ星奈の発火でそのまま煙猫達を焼き焦がした。


魔物を倒す度に幸治達に魔物達のオーラが吸い込まれていった。

「ハァハァ…やっと片付いたか」

20分程してようやく魔物達が片付き皆が息を切らしている中、幸治がひとりごちた。


「でも何か戦う前よりも閃核が馴染んだみたい」星奈が今の状況に安堵して胸を張った。

「息が整ったらすぐに先に進もうか」

真帯が率先して行動を仕切った。

「そうだね。この調子でどんどん閃核に慣れれば安心だしね」

星奈が真帯の意見に同意して微笑んだ。


そこから幸治達は数えきれないほど、魔物達を倒していき幸治と守途と真帯と星奈は意識朦朧で体がボロボロになりつつも急激に強くなっていった。その間も魔物を倒す度にオーラが幸治達に吸い込まれていった。

そして神殿の最奥の目前まで辿り着いた。


幸治達はここのボスの気配を感じ取り次の戦いの為に守途の治流環で回復をした。嬉しい誤算で回復の創型も強化されていたおかげで皆、ほぼ全回復していた。

少し気が緩んだが気を引き締め直し意を決して扉を開けた。


部屋の奥には大きな牙と爪を持つ二足歩行の背中の毛が逆立った虎のような巨大な怪物がいた。

すると巨大な虎は口を開き「ほう、ここに人が来たのは200年振りぐらいだな。我が名は流閃りゅうせん察しの通りこの試練は我を倒す必要がある。さあ、かかってこい」と言い両腕を広げ威圧感のある構えを取った。


幸治は雷拳の構えでジリジリと近付き守途は樹咆弓を構え真帯は衝撃波を撃つ構えを取り星奈は発火させる体勢を取った。

次の瞬間、幸治は流閃の懐に潜り雷拳の連打を浴びせる。そのまま真帯も懐に入り近距離で拳と衝撃波を同時に当て守途が矢を連射し星奈が巨大な火の玉をおみまいした。


だが流閃は余裕の笑みで「少しは使いこなせているようだがまだまだだな。見本を見せてやろう」と言った。

(!?)流閃がそう言ったのと同時に彼から黒いオーラが出てきた。「まず、これが獄素!」そのまま流閃の手の平から黒いオーラが放たれ「「「「うわぁぁー!」」」」幸治達に直撃した。次に流閃から白いオーラが出た。「そして、これが天素だ!」次に白いオーラを幸治達に放ち直撃させた。「「「「ぐぁぁー!」


だが幸治達に殆どダメージが無くむしろ力が漲っていた。(ん?まさか?)

幸治達が呆気に取られているのを見て流閃が「ぐわははは」何となく分かったという顔をしているな。本当の試練とは先ずこの神殿で体に負荷をかけて発動する獄素という身体能力を上げる技と精神に負荷をかけて発動する天素という集中力、素早さ、柔軟性を上げる技に耐えられる体を作る事だ。そしてそれらの技を習得して我に認めさせる程の実力を示せば試練は完了だ。さあ、かかってこい!」


代理戦まで残り23日。


幸治達は獄素と天素の感覚を思い出しながら黒いオーラと白いオーラを交互に出してそれを3回繰り返した。

「よし、大体の使い方が分かったぞ」

幸治がそう言うと守途と真帯と星奈と頷き合い流閃はニヤリと笑い「それでは、これから死闘を始めよう」と嬉しそうに言った。


流閃が構えを取ると同時に幸治達は臨戦態勢に入り全員が天素を纏い瞬きをせず圧倒的な威圧感を出す流閃を見上げた。

流閃は幸治がピクリと動いた瞬間、一瞬で間合いを詰め幸治にタックルをし怯んだところを槍のような爪で切り裂いた。かと思ったが幸治はその体勢からバックステップで辛うじて避けた。


幸治達はここを勝機とばかりに獄素を纏った。一拍も間を置かず真帯が衝撃波を浴びせその隙を狙い星奈の火炎放射と守途の矢の連射で追撃して幸治の雷拳で畳み掛けた。

「わはははは!こんなに楽しい戦いは久しぶりだ。血が滾る!もっとかかってこい!」

流閃は感情を抑えきれず笑い叫んだ。

「どんだけタフなんだよ!?」幸治はぼやいた。「こんなのに勝てるのか!?」真帯は諦めの色を出し始めた。「マジでこれ、どうすりゃ良いのよ!?」星奈はもうパニックになりかけていた。「やるしか…ないよね?」守途はもう訳が分からないという表情だ。


「皆!タイミングを合わせろ!勝つぞ!」

幸治は自分も含めて鼓舞した。

(ここで終われない)

皆、恐怖に抗うように覚悟を決めた。誰かの汗が顎を伝い地面に落ちた。

それを合図に流閃の威圧感がより一層増し空気がおもくなった。


「こっちから行かせてもらうぞ」

流閃は全員が避けることすら出来ない程、爪を振り回しながら突進をして一気に距離を詰めた。

距離は一気に5mを切りいよいよ後がなくなった。

幸治達は今度こそ最後の勝機と悟り全身全霊の攻撃を仕掛けた。


「「「「うおおぉぉぉ!」」」」

幸治はありったけの雷を放ち真帯は全力の衝撃波を連射し守途は出現させた植物から光線を放った。

それでも爪の斬撃で殆どの攻撃が弾かれた。そこに星奈が出力を計算し終えピンポイントで発火させ流閃の爪を掻い潜り火柱を立てた。


「くっ!」

流閃は膝を着き勝機に戻り満足したように微笑んだ。

「我は満足だ。ここまで追い詰められたのは初めてだ。認めるしかあるまい。試練は合格だ。さあ、その台座に創玉を置くが良い」

「よっしゃー!」「やったー!」「良かったー」「キツかったー」

真帯が幸治が守途が星奈がその言葉を聞きようやけ緊張が解けて万歳をした。そしてこの部屋にある台座に創玉を置き祈った。


「さあ、来るが良い」

流閃は名残惜しそうにそう言って光の輪に幸治達を連れて行った。輪に入った直後、幸治達は神殿の入口の前に戻っていた。

外はもうすっかり夜になっており嘘みたいに周りは静かで魔物に1度も遭遇しなかった。


戦いの疲れを癒すため、幸治達はそのまま輪羽りんはへと戻り花湯で心身を回復させ、ガッツリ食事を取り、吸い込まれるようにベッドに横たわり丸3日ぐっすり眠った。


代理戦まで残り20日。

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