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第14話

「ふぁぁ」

幸治こうじはベッドから起き上がると大きな欠伸をした。周りを見ると星奈以外は既に起きており守途すずは今にも泣きそうな顔で眉間に皺を寄せ、真帯まおびは俯いて目に光が無い。

「…何かあったのか?」

幸治が沈黙に耐えられず気付いたら声を出していた。

「よう。星奈が目を覚まさなくなったのさ。創核の器が殆ど機能しない。恐らく使っていい限界値を過ぎた後も大量に創核を使ったからだろうな。本人は気付いてた筈だが急いでいたんだろうよ。その理由は真帯に聞きな」

与澄よすみが部屋に入って淡々と説明した。


「星奈には時間がなかったんだ。元々体が弱くて立つ事すら出来ない状態だったんだ。医者に診てもらったら発復病はつふくびょうっていって創型を使う程、創核が回復するらしいんだが回復しすぎると許容量を越えて器が壊れて創核が溢れ出て…そのまま目を覚さなくなるらしい。その上、器は確実に少しずつダメージを蓄積されてっても生きられるのはせいぜい20歳までなんだ。でも代理戦で優勝したら何でも願いが叶うって聞いて俺達兄妹は微かな希望を見た。だからいつもギリギリの戦いをしてここまで頑張ってきたんだ…クソぅ…」

真帯は声を震わせこれまでの辛い過去を思い出しながら幸治に自分達の事情を話した。


「何で…何でもっと早く言ってくれなかったんだよ!?」

「言えるわけないだろ!星奈は…あいつは…足手まといにだけはなりたくないから黙っててくれって…。自分がいつ死んでもおかしくないのに言ったんだぞ!畜生!俺が何度お前らに言おうと思ったか分かるか!?俺のこの苦しみがお前らに分かるのかよ!?」

幸治の非難に真帯は感情が爆発して心に抱えていたものを吐き出した。


「分かった。十分に分かった。だから教えてやるよ。本来は教えちゃならねぇんだが流石にもう我慢出来ねぇ。その病気、この恵緑国けいりょくこくで治せるぞ。見たところまだ辛うじて最終段階じゃないしよ」

与澄が長い溜息を吐いてそう言った。

「本当か?頼むその方法を教えてくれ!」

真帯は目を見開き与澄の肩を掴んで必死に懇願した。

「まぁちぃっとばかし手に入れるのが難しいが、かたち源草げんそうって薬草さえあれば治せる。ここから南に100km程の彼方かなた草原そうげんって所で途方もなく広がる草原の中に数本それが生えてるのさ。これを見つけるには想いの強さが必要になる。それに星奈は保ってもあと12時間だけだから急げよ。その想いを試されて来い!」

与澄は両手を前に出して真帯を制止して治療法の説明をした。一通り言い終えると与澄は真帯の背中をバシッと叩いて激励した。


「分かった、ありがとう。幸治、守途、お前等は無理して来る必要はない。これは俺と星奈の問題だから」

真帯は無理に笑って幸治と守途にそう言った。

「何言ってんだよ?仲間だろ、一緒に行くよ」

「そうだよ。私達も行く、今すぐ行こう!」

幸治と守途は共に微笑み真帯の肩をポンと軽く叩いた。 


幸治、守途、真帯は早速出発の準備を整えてすぐに彼方の草原を目指した。


幸治達は底に竹槍が生えた落とし穴や紐が当たると剣や岩が飛んで来たりと沢山の罠に足止めされながら進んだ。

「シャーー」

30km進んだ所で草むらに入った。急に不穏な空気が流れて雲が太陽を隠し辺りは薄暗くなった。そこにはおよそ100匹の蛇の群れが這っていた。その蛇達は漆黒で体長は3〜5m程あり丸太のように太かった。

「こんな時に…」

「一気に片付けるぞ!」

「全開で行くよ!」

「「「創躯そうくきわみ!」」」

真帯、幸治、守途は出し惜しみなく力を振るい一気に蛇の大群を倒した。かに見えたがその直後に何度も蛇の死骸が再生して数が2倍に増えた。


「駄目だ。これじゃキリがない。どうしたらいいっていうんだよ」

「落ち着け…。どこかに弱点がある筈だ。見極めよう」

動揺した真帯を幸治が諭し冷静に弱点を探す。

「私があの蛇達を引き付ける。その間に仙磨せんまで五感を研ぎ澄まして探して」

守途の提案に幸治と真帯は頷き仙磨を発動して弱点を探った。

(どこだ…?どこにある…?)

「…!見つけた!あそこの地面の中だ!あそこが弱点の筈!」

真帯は声を張り上げ弱点と思しき所を指差した。


「うらぁー!」

パリーン!真帯が攻撃した所からガラスが割れるような音がした。すると太陽を隠していた雲が霧散して辺りが明るくなった。

(((!?)))

目の前の蛇の群れが消え去った。だが地面から蛇が出て来て一箇所に集まり溶け合うように融合した。そこには身長2m程の長身の男が立っていた。その男は肌が漆黒で髪はドレッドヘアのような蛇で修行僧のような灰色の着物を着た眼が蛇そのもののようだった。その眼には力強い光が宿っている。


「よく見つけたな。お前らには資格があるようだ。俺の名は邪源じゃげん、第二段階に移行するぞ」

邪源はそう言うと突進してきた。そしてそのまま両腕を大きく振りかぶった。

(((遅い!これなら避けれる)))

幸治達は難なく避けれると確信した。

(((!?)))

幸治達がバックステップで避ける直前地中から蛇が飛び出してきて体に巻き付き締め上げてきた。回避が半端になり邪源の振り下ろしの手刀が幸治達の胸を切り裂く。


「ぐっ!」「がはっ!」「ごほっ!」

幸治、真帯、守途は咄嗟に創核の膜で胴体を覆い辛うじて致命傷を避けた。

「お前らの創躯はまだ未完成なんだよ。ほらほらもっと必死こけ」

邪源が試すように少しずつ速度を上げて追撃を繰り返す。幸治達は必死に受け流し避け弾いた。邪源の攻撃は次第にキレを増して徐々に幸治達は防げなくなり浅い傷が増えていく。幸治の目に邪源の手刀が当たる寸前で幸治達の様子が変わった。


「うおぉぉぉー!」

幸治はその攻撃を掴みそのまま邪源の体を振り回し床に叩きつけた。

「おほっ♪やれば出来んじゃん」

幸治の背中にはいつの間にか連大鼓が生えており体表は少し黒ずんだ緑色で頭に鉢巻を巻いて首には雷の白い布を掛けて上半身は裸で豹柄の腰布を巻いている。それに呼応するかのように守途と真帯も覚醒した。

守途は体中にエメラルド色の棘のある蔦が巻き付いている。真帯は体を覆っているシャボン玉のような膜が灰色に輝いて煙のようにゆらゆらと揺れている。


「ようやく同じ土俵に上がってくれたようだな。最終段階に移行するぜ」

邪源は楽しそうに微笑み地面から蛇奇じゃき太刀たちー蛇を綱のように融け合わせた太刀ーを生成して構えた。

「まずはこれを防いでみな」

そう言うと邪源は蛇奇の太刀を軽く振った。すると斬撃が真帯に真っ直ぐ向かって地面から岩のように巨大な牙が斬撃に沿っていくつも生えた。

「うおぉぉー!」

真帯は横に跳んでそれを避けようとした。だが斬撃と牙が追ってきてやむを得ず三波さんは太刀たちで地面ごと砕いた。


「やっぱやるなぁ。どんどんいくぞ〜」

邪源はそう言うと2撃、3撃と同じ技を繰り出した。真帯はギリギリの防御を繰り返して翻弄される。5撃目で三波の太刀を弾き飛ばされて回避手段を絶たれた。邪源はそこにすかさず連撃を放つ。

(ここだ!)

バキバキ、ドガーンバチバチ。守途がその連撃を樹木で防ぎ幸治は邪源の一瞬の隙を狙って雷撃を叩きつけた。

「見え見えだぜ。仲間を見捨てるメリットは無いもんなぁ」

邪源は幸治の雷撃が当たる直前に大量の蛇の壁を作り難なく防いでいた。


(狙い通り!)

ジュゥゥ。蛇の壁が次第に赤くなり焦げた。ドガーン。そこから2撃目の雷撃が生まれた。

「ガハッ。2段式だと?」

「「「今だ!うぉぉぉー!」」」

邪源が一瞬よろめいて動揺した所を幸治達は間髪入れず一斉攻撃を仕掛けた。

「はぁはぁ…。くそ…これで…終わらせてやる…蛇源じゃげん!」

邪源はヨロヨロと立ち上がり全身全霊の一撃を放った。その一撃は光線のように放たれ逃げ場の無い程の広範囲の毒ガス攻撃であった。


「いくぞ。“混創輪派こんそうりんは烈雷れつらいのバリスタ」

幸治、守途、真帯は阿吽の呼吸で創型を混ぜ合わせて雷と衝撃波を纏った巨大な弓矢を一瞬で創り出し発射した。

「「「行っけーー!!」」」

烈雷のバリスタと蛇源が衝突して大地と空気が激しく揺れる。徐々に蛇源が押していき幸治、守途、真帯は少しずつ毒ガスを吸い込み膝を着いた。

「ありったけをぶつけろー!」

幸治の喝に応えるように守途と真帯と共に持てる限りの創核を絞り出す。


「ぐ…ぐあぁぁぁー…」

ついに烈雷のバリスタが邪源に届いた。邪源は命を削り烈雷のバリスタを掴み上に投げようとした。だがその前に雷と衝撃波で心身の限界を越えて雷と衝撃波の刃が邪源の胸を貫いた。

「……カハッ…ゲホッ…ゲホッ」

それを喰らっても邪源は立ち上がった。幸治、守途、真帯は臨戦態勢を保ちジリジリと近付いた。

「待て待て。タンマ俺の試練は合格だ。だから殺気を放って近づくな」

邪源が慌てて手を上げて降参のポーズを取った。だが幸治達は半信半疑で臨戦態勢を解かない。


「ほれっ、これが合格の証だ。頑張れよ」

邪源が蛇が描かれた黒色のコインを幸治達に投げた。幸治、守途、真帯はそれを受け取りここでようやく信用してほっと息を吐いた。

「そうですか分かりました」

「では、急いでいるので」

「失礼します」

幸治、守途、真帯は会釈をしてすぐに先を進んだ。


代理戦まで残り14日。

星奈のタイムリミットまで残り10時間。

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