第10話
時は遡り戦いが始まった頃。真帯と岩彩はー。
お互いに隙を伺い風が吹くのと同時に2人は双逆の手綱を発動させた。
岩彩は全体を頑強な岩にしてそのまま拳を振りかぶった。真帯は衝撃波を岩彩の拳に当てて打撃の軌道を反らして避けた。
(シンプルな近接系の能力か?)
真帯がそう考えた隙に岩彩は体から岩を増やしてちぎりそのまま勢い良く投げた。真帯は一瞬、面食らったが辛うじて避けた。
(遠距離の攻撃もあるのか。まだ攻撃のバリエーションがあるかもしれない。気を付けなきゃな)
岩彩は今度は床に腕をめり込ませ真帯の周りを岩で覆った。真帯が自分の周りに衝撃波を放ちそのまま握り潰そうと迫ってきた岩を砕いた。
(くっ…。これならどうだ!?)
岩彩は衝撃波で砕けた岩を炸裂させて真帯にショットガンのように岩を放った。真帯はそれを衝撃波を丁寧に当てて岩彩に弾き返した。
(小手先は通用しないってか?)
岩彩は岩を生成して自分を岩の鎧で覆い真帯に凄まじい勢いで連打をした。真帯はその連打に全て衝撃波のカウンターを合わせて圧倒した。
「相性が悪かったな。次はこっちから行くぞ!」
真帯はそう言うと岩彩の顔面に凄まじく速い衝撃波を放った。だが今度は岩は砕けるどころか掠り傷1つすら付かなかった。
「悪いな、こっちはようやく体が温まってきたところなんだ。まだ勝敗は決してないぞ」
「さすがにすぐには終わらないか。ここの護衛に選ばれるだけはあるな」
真帯は構え直して嬉しそうに笑った。
「来いよ…」
岩彩が挑発したが真帯は一切それに乗らず集中力を研ぎ澄ました。
(頼む上手くいってくれ)
「ハア!」
真帯はパッと目を見開き渾身の衝撃波を放った。だが岩彩の岩の鎧はびくともしなかった。
(もう一回だ空間を斬るイメージで斬撃を放つんだ)
「ハア!」
「ふん、そんな攻撃何度やっても無駄だ」
真帯は再び斬撃を飛ばそうとしたがまた失敗した。
「まだだ!今度こそ飛べ!斬り崩せ!」
ザン!真帯は三度目の試みで斬撃を飛ばす事に成功した。岩彩の岩の鎧を斬ったのだ。
「がはぁ!まさかこの俺の岩の鎧を斬るとは。何という執念。だが…こ…れし…き…では…!」
岩彩は倒れる寸前で踏みとどまり胸の結び目の紋様がほどかれた。一瞬目を閉じて開いた時、既にその瞳には岩肌のような茶色の灯りが灯っていた。創躯の開眼である。岩彩の手首から2mはあろう太刀が生えそのまま強く握りしめた。岩彩の肌が硬質化して表面が岩と化し筋肉が大きく肥大した。
「ヴォォォー!!」
「やっぱそう来るよな?じゃあ、こっちも賭けてやるよ!…ヴゥウ…グオォ…があぁぁ!!…はぁーはぁー…ふぅぅー」
真帯も創躯を発動させ何とか暴走せずに済んだものの意識を取り戻すのに体力を大幅に使ってしまった。真帯の手首から5m程の白い鞭が生えてそれをそのままがっしりと握りしめた。
「ガアァ!」
「うぉ!」
岩彩が勢い良く突進しながら太刀で斬りかかった。真帯はそれを鞭で打ちその直後岩彩の太刀に衝撃波が走り突きの軌道が反れて何とか避けた。
「ガウ!」
岩彩は一瞬も怯まず薙ぎ突き斬る動作をした。だが、真帯はぎりぎりの所で見切り攻撃の軌道を反らして何とか避け続けた。
真帯は堪らず距離を取り今度は攻撃に転じて鞭で牽制し、隙が出来たところを見逃さず岩彩を鞭で滅多打ちにした。だが岩彩には傷1つ付けられずにいた。
「破波殻!」
「グォォ!?」
真帯は鞭の名前を反射的に叫んだ。すると破波殻の周囲にバチバチという炸裂音が響いた。真帯は破波殻に創核を流して衝撃波を込めて再び岩彩を滅多打ちにした。そして鞭の当たった所から衝撃波が発生して岩彩の体が砕けて傷痕が出来た。だが岩彩の傷がふさがり5秒程で完全に再生した。
「はっ…!これが創躯か」
岩彩は痛みにより意識を取り戻した。
(やばい…意識を取り戻された。調子に乗って新技を試しすぎた。早くけりをつけないと体力的にこっちが不利だ。でも焦るな、勝機を見誤るな)
「山断一振!」
岩彩が太刀の名を叫び2人が息を吸った瞬間、岩彩が太刀を全長10mまで巨大化させて振り下ろした。真帯は狙い通りとばかりに笑って指をパチンと鳴らした。すると岩彩の体の中から衝撃波が発生して炸裂した。
「ぐぬがぁぁー!」
だが岩彩は衝撃波を受けながら二度、三度と巨大な太刀を振った。真帯は破波殻と衝撃波で太刀の軌道を全て反らしたが最後の一撃は僅かに腕を掠めだらんと腕が垂れ下がった。
「ぐおわぁー!」
岩彩は断末魔の叫びを上げて暫く悶え苦しむと動きを止めた。
「お前、一体何をした!?」
岩彩は顔をくしゃくしゃにして苦しそうに訊いた。
「何、簡単な事だ。俺の衝撃波を鞭に込めてあんたに打った時に埋め込んどいたんだよ。あとは自由なタイミングで衝撃波を炸裂させたってところだ」
「これまでか…。クソー……」
真帯が技の仕組みを説明し終えると岩彩は唇を噛み血を流してそのまま力尽きた。
代理戦まで残り17日。
時は遡り戦いが始まった頃、守途と無結の戦いは早くも激化していた。
「そこ!」
「ぬるい!」
守途が樹咆弓ー頑強な枝と蔓で形成した弓矢ーで無結に放つもすぐに霧のように消えて成す術が無く膠着状態になっていた。
(創型が掻き消されてるとはいえ例外無く創核は消費してるはず。つまり相手の創核が失くなりかけて焦った時が勝負所!勝機が来るまで粘るしかない)
守途は間断なく矢を大量に射ち続けた。
(くっ!もうそろそろ創核が尽きる。でも私には奥の手があるんだ。創躯が開眼してからが本当の正念場だ)
無結がそう考えた数秒後とうとう創核が尽きた。と、見せかけて敢えて隙を見せた。
「がはっ…」
守途はそれをすかさず樹刃薙ー頑強な枝で形成した薙刀ーで中距離から無結に目にも止まらぬコンビネーションで切り裂いて止めに心臓を貫いた。
「こ…こ…から…だ…!」
無結は歯を喰い縛り必死に倒れまいと足に力を入れた。すると胸の紋様の結び目がほどけ心臓を形成した。一瞬目を閉じて開いた時、灰色の瞳が灯っていた。創躯が開眼した。無結の手首から灰色の薙刀が生えてそのままそれを強く握りしめた。
「ヴアァァ!!」
「そう来るならこっちも。…ヴ…ヴァァ…ァァ…!…はぁ!…はぁ…はぁ…はぁ…」
守途も賭けに出て何とか意識を取り戻したが息を切らして強がるようにニヤリと笑った。
「吸源緑刃」
守途の手首から巨大な緑の鎌が生えてその名を呟いた。すると刃の部分に太く頑強な蔦が吸源緑刃を覆った。守途はそれをがっしりと掴んだ。
「グルァァー!」
無結が薙刀の射程まで一気に距離を詰めて鋭い太刀筋で斬り突けた。守途は反射的に吸源緑刃で防ぐが刃と刃がぶつかる度に力が抜けて創核を大量に消費した。
「くっ…意識がない癖に何て強さなんだ。早くけりをつけないと敗ける。はあぁぁー!」
守途は吸源緑刃を渾身の力で振り下ろし無結は反射的に薙刀で受け止めたが無結の体から血が吹き出しあっという間に全身が血まみれになった。
「ヴアァァー!……はっ。熱喪輪」
無結はその痛みで意識を取り戻し反射的に薙刀の名を叫んだ。すると熱喪輪から灰色の煙が吹き出し吸源緑刃にヒビが入った。
(一旦立て直さないと)
ガインッ。守途は熱喪輪を弾いて一旦距離を取り吸源緑刃に手をかざすとヒビが塞がり完全に修復した。
再び斬り合うがまた直ぐに吸源緑刃にヒビが入り二度目の修復をした。守途は次第に息を切らして意識が朦朧とした。この世界の住人は創核が尽きると代わりに生命力を使うが使いすぎると勿論意識が無くなったり最悪の場合は死に至る事となる。
(吸源緑刃で何とか相手の生命力を吸収して持ちこたえてるけどこのままじゃ直ぐに生命が尽きて死んじゃう。次の一撃で決めなくちゃ)
守途は生命力をぎりぎりまでかき集め吸源緑刃にその全てを集約させて振り下ろした。パキッ。熱喪輪にそれが当たった直後、吸源緑刃が砕けた。だが、無結の生命の限界がきてそのままバタンとうつ伏せに倒れた。
「はぁはぁ、危なかったあと2秒持ちこたえられたら私の敗けだった」
守途は息を切らして安堵の表情を浮かべた。気を失いそうになるがすかさず手の平に樹液を生成して飲み生命力を回復させた。
「わ…たし…の…敗けだ。バイバイ」
無結は安らかな顔で目を閉じると眠るように力尽きた。
代理戦まで残り17日。




