表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩音の日常  作者: ヒカリ
2/4

二話

「ひどいな……これ……」

日真里は顔を顰めながら机を指でなぞる。

その文字はブスだのバカ女だの私の悪口でいっぱいだった。

「一体誰なんだろ……。許せない、詩音にこんなことするなんて!」

綾香は怒りを露わにしながら辺りを見回す。

私はどうもできなかった。

誰かに恨まれていると思うと怖くて動けなかった。

私はとても弱い。こんなことで動けなくなってしまう人間なのだ。

「怖いよ……」

小さく呟く。

このクラスではいじめがあった。

みんな見て見ぬふりをして今までを過ごしてきた。といっても、本当にいじめが起きていることを知らない人も多数いる。

それぐらい小さく陰湿ないじめだった。

いじめられている子はとても気が弱く、すぐに泣いてしまうほどだった。

だから陽キャでギャルもどきの女子組にいじめられていたのだ。

でもその子は気が病んだのか最近学校に来なくなってしまった。

ギャルもどきに見つからないようにその子と遊んだりしていたこともあり、いじめられる可能性はあった。

私は、見て見ぬふりができなかった社会不適合者なのだ。

自分がこの小さい世界で生き残るには犠牲が必要だったのに、私の弱い正義感を振り翳したことによる代償が今頃になってやってきたのだ。

思考が止まらない。思わずギャルもどきの方を見る。

笑っているような気がした。


昼休み

「そう気に病むなよ、なんとか休み時間の間で文字とか落書きとか消せたし……」

日真里が元気づけてくれる。

「そうだよ、あんな私たちみたいな弱い隠キャにしかいじめができないあいつ等のことなんか考えないほうがいいよ!」

綾香は自分がされたことのように怒ってくれている。

「ありがとう……」

お礼を言う。

だが、どれだけ励まされても怖いのだ。

報復が。

あの子がされたことを私もされるのかと思うと学校に行きたくなくなる。

はぁ、とため息を吐いてしまう。

「大丈夫?」

二人が心配してくれる。

「ん、大丈夫」

あ!

「ん?どうしたん……あぁ、優か。なるほどねぇ」

今まで勘づいていたのだろうか。日真里はすぐに察した。

優君が教室に入ってきた!はわわぁ。

「まるで恋する乙女だねぇ、詩音?」

それに気づき、綾香が茶化すように言う。

多分私は目をキラキラさしているのだろう。

ほんとかっこいい、死ねる。

優君がチラリとこちらを見る。

「?」

少し首を傾げられた……?

「ねぇ、それどうしたの?」

「へ?」

まさか話しかけられるとは思っていなかったので、間抜けな声が出てしまった。

「ほら、これ」

そういって優君は机の前の面を指す。

怪訝そうな顔だ。

私は席を立ち上がって覗いてみる。

「うげっ。まさか、なんでここにも……?」

文字や落書きがされていたのだ。

「え、マジかよ?ここ今さっきまでなんもなかったぞ?」

日真里も目を見開きながら言う。

そうさっきまでなかったのだ。

私たちが手を洗いに行く短時間で書いたのか?

自然と顔が青くなっていく。

きっと女子組の報復だろう。

彼女達は自分たちのいじめという秘密を知った人を味方につけるのだ。

お金を持ち出したり、弱みに漬け込んだりして味方にする。

きっとすぐ近くまで迫ってきてるんだろう。

「これっていじめじゃないの?」

優君が言う。

確かにいじめだが、優君にだけは知られたくない。

はずかしいことでもないのに隠したい。

「いや、違うよ!遊びだよ遊び!」

作り笑いで誤魔化す。

綾香も日真里も私の気持ちを察してくれたのか乗ってくれる。

「最近こう言うのが流行ってんだよ!なあ綾香?」

「そ、そうだよ。罵り合いゲームみたいな!」

すごい無理のある事を三人で言う。

優君は優しい。

空気を読んでくれた。

「そう?ならいいんだけど……。もし辛かったら言いなよ?味方になるから」

あぁ、とても優しい。その優しさに触れていたいが隠してしまう自分がいる。

「うん!もちろん!」

助けを求められなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ