思わぬお披露目
今月の投稿ですが……なんと、列強2位の国の使節団が日本を訪れます。
しかも、国家元首と会う前に色々見せられるというトンデモ待遇付きで……
旭日が明治天皇の指示を受けてグラディオン王国の使節団を受け入れるべく港湾都市キイの準備を推し進めている頃、当のグラディオン王国使節団はダイタオン級戦艦2番艦・『ユニクロン』を中心とする艦隊で大日本天皇国の東側海上50kmの海域を、『15ノットの巡航速度』で南下していた。
この『ダイタオン級戦艦』は旧海軍に詳しい人間が見れば、日本初の超弩級戦艦(ただし海外発注・輸入物)と言われていた『金剛型戦艦(初期型)』に似ていると感じるであろう。
そんなユニクロンの前甲板では、技術士官のレイモンドが陽光を受けて鈍く輝く主砲を眺めていた。
「あぁ……いつ見てもこの主砲は美しいですねぇ。これまでの戦艦では40口径、あるいは45口径の30.5cm主砲ばかりでしたが、我が国の技術向上により、遂に45口径35.6cmという長砲身主砲を完成させることができた……これは海戦において、とても重要なことです」
ちなみにこの『ダイタオン級戦艦』は姿が似ている『金剛型戦艦』と異なる部分がいくつかある。
○艦首にバルバスバウを採用している。
○機関が重油石炭混燃缶からオールギヤード・タービンとほぼ同じ構造の主機とロ号艦本式専燃缶と同じという『金剛型戦艦(最終時)』と同じ馬力を発するものに変更されているため、13万6千馬力という高出力を出すことができる。
○対空用に最終時と同じ『40口径12.7cm連装高角砲』6基12門と『25mm単装機銃』18基18挺を搭載している。
○『一三号対空電探』に近い能力を持つ『R式対空電探』を搭載している。
故に、データは以下のようになる。
『ダイタオン級戦艦』
○常備排水量2万9000t
○全長222.65m
○最大幅31.01m
○主缶チーフテン式蒸気タービン4基・4軸
○軸馬力13万6千馬力
○最大速力30ノット
○兵装
45口径35.6cm連装砲4基8門
50口径15cm単装砲8基8門
40口径12.7cm連装高角砲6基12門
25mm単装機銃18基18挺
この数値は、この世界水準で非常に強力な存在となっている。
特に速力がケタ違いである。
なにせ機関出力が初期型の6万4千馬力の倍以上である13万6千馬力という大きな差があるのだ。
流石に某召喚小説で2000年代の日本の技術で魔改造された三笠モドキとは重量・大きさなどの点から比較にはならないものの、地球の同年代を基準にすれば十分に強力な軍艦となっている。
他の船も『鳳翔型航空母艦(初期)』に似た『ドラグン型航空母艦』1番艦『ドラグン』に、『天龍型軽巡洋艦』に似た『ケルベン型軽巡洋艦』3番艦『ドドリオン』、『長良型軽巡洋艦』に似た『オルトン型軽巡洋艦』4番艦『キザンドゥ』、『峯風型駆逐艦』に似た『ペガシン型駆逐艦』2番艦『ギャロン』、5番艦『バンドロン』と、『神風型駆逐艦』に似た『ライガン型駆逐艦』1番艦『ライガン』と6番艦の『フレアレオ』という、戦闘艦が計8隻も随行している状態であった。
また、補給艦として『間宮』によく似た構造のタンカー型船体の大型船舶が、そして『敷島型戦艦』に似た構造の前弩級戦艦を改良した工作船が1隻同行しており、燃料と食料の補給、そして航行しながらの整備補修はこの2隻が行っていた。
また、空母には『九五式艦上戦闘機』に酷似した『グリフィオン艦上戦闘機』と、『一三式艦上攻撃機』に酷似した『ワイバリオン艦上攻撃機』が搭載されており、この世界基準で大変高い戦闘力を誇る艦隊となっている。
なぜこれほどの艦隊を率いているのかといえば、グラディオン王国と第2世界大陸を2分して争っているクレルモンド帝国と緊張が続いているせいである。
技術士官と外交使節団にもしものことがあってはならないということで護衛艦隊として8隻が臨時編成されたのである。
また、補給艦と工作艦にも戦艦の副砲である14cm単装砲と、7㎝高角砲が搭載されているため、最低限の自衛戦闘はできるようになっている。
あくまで最低限だが。
こちらはそれぞれ3万馬力と2万馬力のディーゼルエンジンを搭載しており、15ノットの速度で巡航することができる。
また、グラディオン王国では現在20.3cm単装砲を6基も搭載した、1万t前後の重武装艦を配備しようと計画している。
その設計図を日本人が見れば、『古鷹型重巡洋艦』似ていると考えるであろう。
そんな艦隊を眺めているレイモンドは、自国の技術を誇りに思いつつも先行きが不安であった。
「写真を見る限りだが、日本は戦艦も航空機も戦車も少し前までは保有していなかったはずだ……それがなぜ急に200mを超えるような超巨大艦を多数配備できるようになったのか……」
彼の傍らには『ユニクロン』艦長のオライオン・パックスが立っている。
彼も出発直前に情報局と技術局を通じて日本の情報を聞いていたが、とても信じられない気分だった。
「はっきり申し上げて、そんな船がアイゼンガイスト帝国以外に存在するとは思えませんが。我が国の最新鋭戦艦ですら35.6cmの連装砲がやっとだというのに、日本の戦艦は35cm以上の、しかも三連装砲を実現しているというではありませんか」
これは、写真にも写っていた扶桑の2番砲塔、3番砲塔のことである。
「三連装砲はまだ我が国でも研究段階です。小口径砲……15cmくらいならばともかく、30cm以上を三連装にしようと思えば、どれほどの技術が必要になるか……まるで想像がつきませんな」
オライオン艦長の言うことももっともだが、写真に写っているものは『事実』でしかない。
なので、レイモンドは最新鋭艦があるという港湾都市キイに到着するのを待ち遠しく思っていた。
北方のオオミナトには自分たちの駆逐艦より少し大きな、そして自分たちの駆逐艦より少し先進的に見える船が数隻ほどあったが、大型艦は存在しなかった。
なので、大型艦を早く見たくて仕方がなかったのである。
船は翌日の昼頃に、キイ沖に到着する。
翌日も快晴であった。
レイモンドは『うーん』と甲板上で伸びをしているが、使節団の面々は慣れない船旅で酔ったのか、ヘロヘロである。
レイモンドは朝の体操を済ませてから艦橋へ向かう。
艦橋も弩級戦艦の露天艦橋ではなく、天龍型や長良型のような艦橋を戦艦向けに拡大したような構図となっており、より重厚に見える。
また、その上部には旧日本軍の艦艇も装備していた一三号対空電探によく似たレーダーアンテナが装備されているのも特徴だ。
「艦長、船の具合どうですか?」
「えぇ、今日も快調ですよ。機関もしっかり整備していますから、ぐずることもなく言うことを聞いてくれます」
「それはよかったです。このタービンの音は聞いていてとっても気持ちがいいですからねぇ」
こともなげに言う彼を見て、使節団の1人である貴族は『やっぱコイツ頭おかしい』と感想を抱くのだが、船酔いもあってなにも言わないのだった。
「さて、本日の昼にはキイに到着する予定ですが……」
「右舷に艦影確認‼これは……半島の陰から艦艇です‼軽巡洋艦相当の船が1隻、駆逐艦相当と思しき船が1隻の計2隻です‼」
「なに?」
慌てて艦橋要員が右舷側に視線を集中させる。
「もしかして、日本側のお迎えでしょうか?」
「かもしれませんね。通信士、総員に『相手艦船に対する戦闘行為の禁止』を通達せよ」
「はっ」
通信士は素早くモールス信号で全ての艦に情報を送る。
すると、対空電探の監視員が大声を上げた。
「電探に感あり!西方より機影確認!」
「機影!?飛行機まで飛んできたのか!?」
オライオンとレイモンドはともに艦橋の窓辺に寄って双眼鏡を覗きこむ。
すると、自国でもまだ見たこともないような先進的な形状をした機体が、超高速で艦隊上空を通過していった。
「な、なんだ!?」
「速すぎる‼『フェニクオン型戦闘機』の速度を遥かに凌駕しているぞ‼」
『フェニクオン型戦闘機』は730馬力のエンジンにより352kmという最高速度を叩きだす戦闘機で、『格闘戦ならば世界一』とも言われているほどの性能を誇る、グラディオン王国自慢の戦闘機であった。
上空を飛ぶ戦闘機は異様な形をしており、水平の尾翼と、なんと後部から火を噴いて飛んでいるではないか。
「まさか……時速600km以上出ていないか!?」
旋回性能と加速性能こそレシプロ機に比べて低いように見えるが、そんなものが比較にならないほどの最高速度である。
超高速飛行機は艦隊上空を2回ほど旋回し終えると、そのまま陸地の方へと引き返していったのだった。
乗組員たちがポカンと上空を見上げていると、船2隻が近づいてきた。
「はっ、いかんいかん。あの船になんとか通信を送りたいが……手旗信号は通じるか?」
「それは不明ですが……なにか方法があれば……」
すると、通信士が突然声を上げた。
「艦長!迫ってくる艦より入電!『我、大日本皇国沿岸警備隊旗艦ノ津軽デアル。我ニ続キ、港湾ヘ入ラレタシ』とのことです‼」
どうやら、こちらの周波数を知っているのみならず、打電信号も知っているようであった。
「通じるのはありがたいが……よくよく見ると中々奇妙な船だな?」
『津軽』というらしい軽巡洋艦並みの船には、連装主砲がなぜか少し上を向いて設置されており、他には機銃があるだけのように見えた。
レイモンドはその大砲を高角砲ではないかとアタリをつけていた。
すると、砲雷長がなにかに気づいたように声を上げた。
「そうか……あの船は機雷を大量に搭載しているようです」
「機雷?海に浮かんで船の横腹に穴を空けるあの機雷か?」
「はい。あの船は戦闘艦ではなく、機雷を敷設するための艦なのかもしれません。だから沿岸警備という仕事についているのかも……」
「では、あの駆逐艦もか?」
「それはわかりませんな。もしかしたら船が足りなくて正規の駆逐艦を哨戒任務に駆り出しているのか……はたまた最初からその目的で建造されたのだとすれば、余裕があるのだと感心せざるを得ないのですが……」
砲雷長の推測は一部当たりであった。
敷設艦『津軽』は日本海軍最大の敷設艦であり、九三式機雷を600個も搭載することができた。
太平洋戦争では緒戦から出撃しており、グアム攻略作戦、ラバウル攻略作戦などに従事している。
ソロモン方面の激闘の頃からは、敷設任務よりも余裕のある船体構造から重油や航空燃料などの輸送任務に就くことが多くなっていた。
『朝潮型駆逐艦』については、やはり数そのものが足りていないという事情から、小回りの利く駆逐艦が哨戒任務に駆り出されているのだ。
当の本人たちからすれば、『働かせてもらえるのは嬉しい』とのことだが、やはり知名度が欲しいらしく(どうしてもインパクトという点で響ことヴェールヌイや、雪風こと丹陽などには負けているからだろう)、いずれは艦隊決戦に参加したいと考えているようだ。
もっとも、そんな事情を知らないとはいえ、わずかな観察で見抜くあたり、さすがは列強国序列2位の国家に属する軍人である。
「よし。ではあの船についていくぞ。面舵一杯!」
「面舵一杯、ヨーソロー!」
ユニクロンを先頭にした艦隊はゆっくりと回頭し、先を行く『津軽』と『初雁』についていくのだった。
一方、その当の津軽はというと。
「あの船……どこか帝国海軍の金剛型を思わせる雰囲気ですね。少なく見積もっても、初期水準の超弩級戦艦くらいの強さはありそうに見えます」
「この世界を基準にすると、武力が高そうですな。あの空母も、鳳翔型によく似とりますよ」
傍らの副長の言葉通り、少なくとも、列強序列4位と言われているヴェルモント皇国の主力が前弩級戦艦と飛行生物を運用するための空母モドキであることを考えると、こちらは50年から70年ほど以上文明が離れているように見える。
そして、大日本皇国とは20年~30年ほど。
ただし、この場合の『離れている』は、日本の方が優勢、という意味でだが。
「もしこの国と国交を結び、技術協力ができれば……司令は大層お喜びになるでしょうね」
「技術水準が近いというだけでも、十分に取引に値しますな。もしかしたら、陸軍は三八式歩兵銃や三八式野砲程度の能力を持つ兵器があるやもしれませんな」
こちらもまた、グラディオン王国の技術水準を正確に推し量っていたのだった。
そんな案内を受けてしばらく経過し、遂に港湾内部へと入っていく。
港湾部を見た乗組員たちと使節団は、あんぐりと口を開ける羽目になった。
「な、なんだこの発展度は!?」
元々港湾都市キイはアイゼンガイスト帝国の設備がそろっていたこともあり、超大型戦艦や、航空母艦すらも入渠できるドックがあった。
だが、今目の前にある港湾設備では、新たに建造されたらしい多数のドックで多くの駆逐艦や小型艦に加えて、『ドラグン型航空母艦』よりもはるかに巨大な空母らしき船の艤装が行われていた。
そして、お上りさんのように港湾部を見渡していると、レイモンドはあるモノを見つけた。
「あっ!写真にあった超巨大戦艦ですよ‼」
そのセリフに艦橋要員が一斉にその方向を向くと、全員が絶句した。
そこには、大日本皇国の主力戦艦である『扶桑』が停泊していたのだ。
「な、なんだあの艦上構造物は!?」
「なんだか……最初はまともだったけど、あとからあとから積み重ねていったらこんな感じになりました……とでもいう雰囲気ですね……」
レイモンドの分析は正しい。
元々扶桑は日本初の国産超弩級戦艦として建造されたが、建造してから改装に改装を重ね、射撃指揮所が必要だとか対空見張所だとかとやっているうちにあれよあれよと高層建築物のようになってしまったのだ。
世界でも稀にみる、『違法建築物ばりの艦橋』と言えば、扶桑型2隻は世界の艦船マニアの間でも非常に有名である。
「あっ、あっちに停泊している船も艦橋は高めですけど、明らかに整ってますね」
レイモンドが次に目を移したのは、『薩摩型巡洋戦艦』であった。
当然と言えば当然だが、扶桑が場当たり的に改装したのに対して、こちらは『最初から』バランスよくなるように基本設計から異なるのだ。
また旭日は言っていなかったが、船体の形状に関しては大和型戦艦に近い部分がある。
「すごいな……対空火器らしき兵器が山盛りだ」
「彼らはずいぶんと対空を意識した装備が多いようですな」
その話を聞いたレイモンドは、自分の立てている仮説がアタリなのではないかと考え、思わず漏らしていた。
「もしかすると、日本は航空機に魚雷を搭載することが可能な飛行機を持っているのかもしれませんね」
「なっ‼」
魚雷は射程が短く速度も砲弾に比べると遅いが、もし船体に命中すれば大打撃を与えることが可能な必殺兵器だ。
運用が始まったばかりのグラディオン王国では、戦艦が至近距離で砲撃しながら発射するか、駆逐艦及び水雷艇が肉薄しながら発射するのが一般的な考え方なのだが、もしも、航空機に搭載して発射することができたら……。
「もし接近する航空機がわずか数百mのポイントから魚雷を放つようなことになれば……現在の我が国の対空防御技術では落とすのが難しいでしょうし……もし命中すれば、たとえ戦艦でも無事ではすまないでしょう」
「し、しかし、魚雷などという重量物を抱えて航空機がそれほど速く飛行できますかね?」
「わからないです。現在の我が国の航空機エンジンの技術では、何百kgもある魚雷を抱えて高速航行するのは無理ですね。ただ……」
「ただ?」
「もし、もしですが……機体の強度を上げることができて、胴体内に爆弾や魚雷を収納することができるようになれば……重量はさておき、空気抵抗は大幅に減るでしょうから、速度は上がるでしょう」
いわゆる、ウェポンベイの考え方である。
「そんなことが可能なのでしょうか?」
「……わかりません。ただ、もしそうなれば、爆撃も雷撃もこなせる多用途機ということになって、汎用性が大幅に広がるでしょう」
グラディオン王国でもトップレベルの科学技術に対する知識を持つレイモンドの言葉は、軍人たちの心にも突き刺さった。
タグボートによってゆっくりと接岸された艦隊は、岸壁へと降り立った。
「土台がしっかりしているな……やはり、我が国よりも技術が優れているように思える。誤差の範疇と言ってしまえばそこまでかもしれないが……」
すると、無限軌道とゴムでできたタイヤの2種類が装備されている車両が停車しているのが目に入った。
「(随分と大きな装甲車だな……我が国のモノよりも不整地走破性能は高そうだ)」
装甲車の横には、軍服を着た10代半ばにしか見えない若い男と、20代前半と思しき女性が2人立っていた。
観察していると、男性の方が近づいてきた。
「ようこそ、グラディオン王国使節団の皆様。私は本日皆様のご案内を天皇陛下より仰せつかりました、大日本皇国第0艦隊司令官の大蔵旭日と申します」
「!?」
目の前に立っている人物が艦隊司令ということにも驚いたが、まさか、軍の重責にある人物が直々に案内してくれるとは思っていなかった。
これはもしかしたら、想像以上のモノが見られるかもしれない、とレイモンドは期待に胸を膨らませる。
「本日は私と、私の秘書を務めております扶桑と大鳳の3名でご案内をさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
使節団の外交関係者たちはといえば、文明圏外国の者とは思えないほどの落ち着いた対応と礼儀正しさに感心していた。
「まずは皆様をキイ鎮守府へとご案内しようと思いますが……今の時点でなにかご質問はありますか?」
すると、レイモンドが真っ先に手を上げた。
「失礼ですが、お名前を窺ってもよろしいですか?」
「はい!私はグラディオン王国技術士官のレイモンド・チーフテン中尉です‼質問したいことは山ほどあるのですが……ま、まずは!私たちの艦隊の上空を飛行したあの戦闘機、一体どういう構造なのですか!?レシプロエンジン以外の飛行方法なんて、アイゼンガイスト帝国の魔導ターボジェットエンジンしか見たことがありませんが……ま、まさか、帝国からの技術供与でもあったのですか!?」
世界最強のアイゼンガイスト帝国が高速飛行できる飛行機を持っているという噂は聞いていたが、どうやら彼の国もジェットエンジンを実用化しているらしい。
「そうですね……魔導技術はほとんど用いていませんが、我が国でも独自の技術を以て科学式の遠心分離式ターボジェットエンジンというモノを開発し、配備しました。その1つが、先ほど皆様の艦隊上空を飛んでいった局地戦闘機『閃電改』と言います」
「閃電……改?」
「はい。元々はレシプロエンジンで飛ぶ飛行機でしたが……私と技師たちで改良を施し、ジェットエンジンで飛行できる機体へ調整しました」
『閃電』
それは、大日本帝国がレシプロ機の限界を打開するために考え出そうとした、異色の戦闘機である。
最大速度は760kmで、武装に20mm機銃2挺と30mm機銃を1挺という重武装を施されていた。
なぜそのようなことが可能だったのかと言えば、閃電はかの局地戦闘機『震電』同様に主機を後部に配置した後部推進式としており、プロペラ後流による摩擦抵抗を減らそうという設計により、限界を打破する目的があった。
この『閃電改』では、エンジンを三菱が開発する予定だった推力1300kgの『ネ330エンジン』と同等のモノを搭載しており、しかも胴体を少々大型化・空気取り入れ口を設置することで、ジェットエンジンを胴体内に収めるという無茶をこなした。
戦時中ではないので部材に使用する金属の質も非常に高いものの、ジェットエンジンの発する高熱と、高速飛行に耐えうる状態にするためにまたも魔法陣学を使用し、機体とエンジンの強度を大幅に上昇させている。
エンジンもまた、魔法陣学と精霊の加護による大幅な強化により、双発ではなく1発で推力1600kgを叩きだすことが可能になっている。
また、高速飛行に耐えるためにわずかに後退角を付けているのも特徴だ。
このため、見た目は機体側面に空気取り入れ口と、翼に後退角の付いた『デ・ハビランド ヴァンパイア』と言っても過言ではない。
さらに若干大型化したことでレーダーの搭載が可能になったため、全天候戦闘能力も付随することになる。
これにより、最高速度はなんと驚異の890kmを誇る。
今のところ爆弾は一切取り付けることができないものの、本土防空の一撃離脱を主体とした戦闘機と考えれば、ジェット機の習熟には十分すぎる機体である。
また、旭日はいずれロケット弾ポッドを開発することで、近接航空支援に使えないかという構想も立てていた。
機体と翼の強度は十分なので、考える価値はある。
いずれはさらに強化をしていくつもりだが、今はこれで十分である。
「そんなとんでもない機体を開発するなんて……一体何があったのですか?」
「まぁ、その点についてはおいおい……機体は見学されますか?」
「ぜ、ぜひ!」
「わかりました。では後で空軍基地の方に連絡を入れておきましょう。まずは……この港湾部に停泊している船のご案内からになりますね。皆さん、この『一式半装軌装甲兵車』に乗ってください」
今回の使節団は全員で5名。運転手と助手、旭日たち3名を併せてちょうど定員の10人である。
装甲車が走り出すと、段々と船が大きく見えてくる。
「まず遠くではございますが、我が国の軍艦を解説しつつ、鎮守府へ向かいたいと思います。あちらに停泊している巨大な艦橋を持つ船は『扶桑型戦艦』と言います。我が国の『現在の』主力戦艦です」
巨大な艦橋を持つ『扶桑』は、他の船と比較しても異様な艦橋を持っているが、ひとまず話を聞くことにする。
「扶桑は『建造当初』、世界的に平均的であった35.6cm連装砲を装備しておりました。しかし、当時の技術がまだ未成熟であったために建造後に様々な不備が見つかり、すぐに入渠し、改装を始めることとなりました」
「なるほど。その改装を重ねた結果、あのような艦橋に?」
「えぇ、まぁ。そういうことです」
すると、近づくにつれて気づいたのか、レイモンドが声を上げた。
「旭日殿、あの艦橋の上に装備されているのはもしや……電波探信儀ではありませんか?」
「えぇ。まぁ……貴国も実用化しているとは思いませんでした」
「まぁ我が国にもいろいろ事情がありまして……お陰で皆さんの艦隊が接近してくるのが分かったので、宣伝代わりに『閃電改』を飛ばしたわけですが」
ダジャレと言わんばかりの言い回しに一瞬その場が凍り付いたように固まるが、扶桑が『コホン』と咳払いをしたことで空気は変わった。
「改めまして。戦艦扶桑艦長の扶桑と申します。鎮守府を案内した後は、我が扶桑と巡洋戦艦『薩摩』、そして航空母艦『飛鷹』を見学していただきます。どうぞ、お楽しみに」
目の前に座っている美しい女性がまさか戦艦の艦長だとは思っていなかったようで、使節団の面々はまたもやあんぐりと口を開ける羽目になった。
もっとも、レイモンドだけはその中に一筋の疑問を挟むことを忘れなかった。
「(扶桑?あの人は戦艦と同じ名前を持っているのか?なぜそんな名前を付けたのかはわからないが……これは、なにか秘密がありそうだな)」
後で調査する必要がある、と心に留め置くのだった。
この後、彼らは鎮守府で食事をとってから『扶桑』に乗り込む。
正直、展開が急すぎるかとも思いましたが、『まぁ、異世界だし』で済ませようかと(オイ)
次回は2月28日に投稿しようと思います。




