軍艦オタク、艦隊を得て異世界へ
どうも、笠三和大です。
私の2作目となる物語、『転生特典に艦隊もらったけど、クセのあるやつばっかり‼』がスタートします。
今作の中心は二次大戦時の兵器となります。
こちらも色々抜けている部分は多々あると思いますが、どうか温かい目で見守っていただけると幸いです。
俺は、死んだ。
少なくとも、そのはずだ。
俺は日本のとある海運会社に勤務している、割とどこにでもいるだろうミリタリーオタクのサラリーマン・大蔵旭日という。
世の中を大いに、そして長期に騒がせた新型コロナウイルスも収束を迎えたことでそれなりの忙しさを取り戻してから早数か月、有給休暇で久しぶりに海外旅行に出た。
具体的には東南アジアへ。80年を超えて今も色々残っているという旧日本軍の『跡』を見るために。
だが飛行機に乗っていた時に、過労からそのまま意識が遠のくのが分かった。
「そういえば……1カ月近く休んでなかったっけ……三笠……大和ミュージアム、もう一度行きたかったなぁ……」
これが、俺の生前最後の言葉だった。
俺は確かに死んだ。なんと表現すればよいのだろう、だが間違いなく死んだのだ。
だが、俺は……大蔵旭日は間違いなく『どこか』にいる。
どこ、とはうまく表現できないが、存在しているのだ。
俺はそんな風に、自分の中であれこれと考えをまとめようとしていた。
その時だった。
眩い光とともに、何者かが姿を現した。
光が少しずつ収まってきたので、俺はゆっくりと目を開ける。
「……女の人?」
俺の目の前に立っていたのは、優しげな顔をした、温かな表情をした女性だった。なんと言うのだろう、女神さま、とでも言うのだろうか?
纏った羽織のような、と評するべき衣服はとても上質そうで、いかにも高貴な身分の方だということが伺える。
そして驚くべきは、その羽織の雰囲気が普通に日本の和装に見えるということだった。
「あ、あの……」
そんな彼女に見とれていた俺の口から飛び出したのは、あまりにもつまらない言葉だった。
「ここは、天国ですか?」
女性はフルフルと首を横に振った。
「ここは、あなた方人間の言葉で言い表そうとするならば、『神界』と表現するべき場所です。人間の魂が新しい命に生まれ変わる、輪廻転生をするための場所とは異なります。天国と表現したあなたの考えている存在より、高次元の場所なのです」
どうやら、某宇宙戦艦アニメのリメイク版で言われていたような、高次元世界に俺は今いるらしい。
「えぇと、俺は……死んだんですよね?」
すると、女性は一気に表情を曇らせた。えっ、なにか悪いことでも言ってしまったか!?
「そうです。大蔵旭日さん。あなたは間違いなく、地球上での命を終えてしまいました」
あぁ、それはやっぱりまごうことなき事実だったのね……でも、逆に確認できてホッとしてしまった自分がいる。
いや、ホッとするもなにもないのだが。
「申し遅れました。私はあなた方の世界でも特に、あなた方の国……日本の人を主に見守る担当の……そうですね。人間の言葉で言い表すならば、太陽神と言います」
「アマテラス様や、ギリシャ神話のアポロンみたいな存在ですか?」
「それはあくまで人間が想像した姿の『神』であって、私たちとはまた少々異なる存在……いえ、そのようなことはどうでもよいのです。まずは……」
太陽神様は、いきなり俺に頭を下げてきた。
「あなたに、謝らなければなりません」
「えっ!?そ、そんな!頭を上げてください‼」
別に俺はフェミニストでもなんでもないが、なんの非もないのに女性に頭を下げさせているかと思うと落ち着かない。
「いいえ。あなたの運命が手違いでねじ曲がっていたことに、私たち神は気付いていませんでした」
運命が……ねじ曲がる?
漫画とかではよく聞く言葉だが、自分が当事者になったと思うと違和感が強い。
「それって、どういうことですか?」
「簡単に言えば、あなたは本来あの飛行機の中で、過労で死ぬはずではなかった運命だったのです。もっと長生きして、地球では97歳まで生きて天寿を全うするはずでした」
97歳って……伸びてきたと言われる平均年齢を考えてもずいぶん長生きする予定だったんだな……ん?だとすると……25歳で死んだ俺は……。
「どうやら、時空神の手違いにより、あなたの命運が生まれた時からねじ曲がっていたようでした。あなたが死んで、死後の世界から手続きが来た時に初めて明らかになったのです」
死後の世界って……そんなのもあるんだな。そういや、アニメでもあったよなぁ。高校生が死後の世界で『神』に反逆するために戦いを続けるってやつ。
というか、死後の世界にきて手続する段階になってから気付いたって……神様の仕事も、意外と縦割りのお役所仕事なのかもしれないな。
時間の概念がなかったりするせいで膨大な仕事に埋もれているのかもしれない。
「えぇと、そんな状態ってことは……もしかして俺って、記憶を持ったまま転生、とか許されちゃいます?」
学生時代からそういうライトノベルはよく読んでいた。この展開的には、なんらかの特典をもらって転生できる、というのが俺の推測だが。
「はい。また、特典も差し上げようと思っています」
おぉ、やっぱり予想通りだ。神様って結構アフターケアがしっかりしてるんだな。
そもそもしっかりしてたらミスとかないよな、っていう発言はナシで。
だって、神様だって『存在』しているんなら『完全』ではないんだろうし。『完全』や『完璧』に至ろうとして、それでもたまにミスをしてしまう。
そういうものだ。神話とかでもよくあるし気にしたら負けだ。
「特典って……なんでもいいんですか?」
「はい。ただ……」
「ただ?」
「なんでも無制限に、とはいきません。あなたが宣言した『お願い』に合わせて、転生できる世界と、お渡しできる『特典』がランダムに決められるのです」
なるほど。そりゃそこまで都合よくはいかないか。そう考えると、自衛隊の装備をポンポン召喚できたぼっち自衛官や、スマートフォンを持ち込ませてもらったあの少年はすごくサービス精神旺盛な世界に生きていたのかもしれない。
何事も限度はある。これ、ゼッタイ。
「それでも、よろしいですか?」
「もちろんです」
俺は即答していた。だって、なんでもありだったら、それこそ宇宙戦艦だってもらえそうだし。でも、それはちょっと……いや、あまりにも都合がよすぎる。
「では、あなたの望みを述べてください」
そう言われると、俺が真っ先に浮かんだのは自分の趣味だった。
先ほども考えていた通り、俺はミリタリーが好きだ。特になんといっても軍艦が好きだ。だから、軍艦が欲しい。でも、1隻だけじゃ寂しいから……。
「艦隊!俺は、俺の好きにできる艦隊が欲しい‼超弩級戦艦とか空母とか、巡洋艦とか潜水艦とか……って言っても、無理ですよね?船なんて、数百人から数千人の人間が必要だって言いますし……」
すると、俺の前に光のパネルみたいなものが飛び出した。SFアニメとかで見るような、近未来的なディスプレイのように見える。
「……へっ?」
「おめでとうございます。あなたの要望は叶えられました。あなたは、あなただけの艦隊を率いる司令官です」
「ま、マジで……?」
「ただ、それに伴い、『上位存在』よりあなたに依頼があります」
「依頼?」
というか、太陽神様より上位の存在がいるんだな……創造神とかいるんだろうか?あるいは某絶唱アニメのように、人類の上位存在的な意味でも神様とかいるのかもしれないな。
まぁ、そんなことを考えても詮無いことだ。まずは目の前のことに集中集中。
すると、太陽神様の後ろにいくつもの火の玉のようなものが浮かび上がった。
数えきれないほどの『それ』は、とても強く光り輝いている。
「これは……」
「これは、平行世界において未だにあなたの祖国……日本に帰れずに現世と冥界の間をさまよっている死者の念です」
言われて気が付いた。つまり、太平洋戦争時に亡くなった方々、それも旧帝国軍人の魂だ。
海の底、東南アジアの各地など、未だに回収されていない遺骨はいくつも存在する。
「平行世界でも同じように日本はアメリカとの戦争に負け、未だに多くの戦没者が祖国の土へ返されていません。そして、当然魂もそのままでした」
それを言えば、引き揚げられていない船だって多数あるからな。
まぁ、大和みたいに真っ二つになっているうえに風化していて引き揚げそのものが困難、という話もあるようだが。
「本来であれば平行世界の日本が動いて遺骨を回収してくださるのが一番望ましいのですが、あなたの要望を受け、上位存在が『彼らの魂も連れて行ってくれるなら』という条件でこの艦隊を許可してくれました」
なるほど……つまり、当時の軍艦や兵器に精通している人もつけてくれる代わりに、彼らの面倒を見てほしい、ってことか。
ついでに言うと、どんな船をもらえるのかも想像がついた。基本的には大日本帝国海軍の軍艦だろう。
今の太陽神様の言い方からすると、そうに違いない。
「わかりました。それでお願いします」
自慢じゃないが、こう見えて軍艦好きと自負するだけあって戦法や戦術、当時の兵器の性能にも『それなりに』通じているつもりだ。
流石に本格的な専門家とは言い辛いので指揮官と言われて難しい部分はあるかもしれないが、できることはある……はずだと信じたい。
「もちろん、立場ある者としてあなただけでなく、その船に宿っていた……日本人にわかりやすく言えば付喪神のような存在もお付けしましょう」
「具体的には?」
「艦隊の名のある船と同じ名前を持つ、女性の姿をした精霊のようなもの……と思っていただければよいかと。化身とも言いますね」
艦艇擬人化ゲームみたいなもんか。流石に同じ性格ってことはないだろうけど……でも女の子が一緒なのは嬉しいかも。
やっぱり戦艦や空母は巨乳なのだろうか?大艦巨乳主義なんて単語も提督たちの間では広まってるしな。
「もちろん、性的な意味で手を付けるのは構いませんが、子供はできたりしませんので注意してくださいね」
「そこまで見境ないつもりはないですよ……」
実際そう言われても……そんないきなり女の子に手を出せるほど積極的なら彼女がいただろうしな……ま、俺の雰囲気でその気になってくれるかどうかそもそもわかったもんじゃないけどな。
「また、差し上げる軍艦はあなたの好きなように改修・改造してかまいません。ただし、その存在した年代にできること、あることという条件である程度決まってはいますが」
スロットいくつ、みたいなものか。増々ゲームみたいだな。そして改造の内容的には恐らく、『第二次世界大戦中に存在した技術』による改造、と言うところかな……?
でも、それだけでもかなりのものだ。
当時の米軍は既に旧日本軍とは比較にならないほどに高性能なレーダーを実用化していたし、砲弾に近接信管を仕込むなんて言う真似もやっていた。
ソナーなどの機器類はもちろんだが、前投射式爆雷ことヘッジホッグや、音響誘導魚雷なんていう高度なものもイギリスと一緒に開発していた。
それを考えてしまうと、当時の日本が13号で『軽くて性能がいい』なんて喜んでいて、いかにエレクトロニクス技術で劣っていたかを痛感させられる。
終戦間際に優秀なレーダーを作り出したのだって、結局米英のコピー品だったからな。どうも日本人はオリジナリティには欠けるけど、人のモノを参考により高性能なものを作り出すのは得意な種族なんだよなぁ……。
「じゃあ、それでいいです」
すると、ようやく太陽神様は俺にふんわりとした笑顔を見せてくれた。
「受けてくれてありがとうございます。では、その光に触れてください」
俺が光のパネルに触れると、パネルがたちまち鮮明なものになって様々な船体が空中に映し出されていく。
「おぉ‼」
俺は思わず興奮して、どんな船がもらえるのかとスクロールしていく。だが、スクロールしていくにつれて、俺は若干困惑した。
それは、確かに『第二次世界大戦時に存在』した、旧日本軍の艦艇だった。
だが……
「なんだよこれ……空母は客船転用かまともに戦えなかった奴ばっかで巡洋艦は詰込み型と練習艦だし……まぁ、正面戦力という意味じゃ遅れてきた水雷屋があるだけいいけど。なにより超弩級戦艦があるのはありがたいけどよりによって違法建築物張りの艦橋だし……むしろ陸軍と航空装備の方がまともじゃん……」
そう、俺は軍艦だけではなく、空母に搭載される航空機や水上機、さらに輸送艦と、小銃や機関銃から戦車まで揃った陸軍の装備までつけてもらっていたのだ。
これはかなり至れり尽くせりと言っていいだろう。
しかし、言わせてもらいたい。
「……確かに艦隊だけどさぁ……」
俺は思わず天を仰いで叫んでいた。
「なんだかクセのあるヤツばっかりじゃないかー‼」
大声で叫んだことですっきりした俺は、向き直って確認し始めた。
「……先ほどの一言以外、なにも言わないのですね?」
「いえ、艦隊もらえるっていうだけでも本来ありがたいお話ですから。それに、よくよく記憶を掘り返してみれば、もっと問題だらけの存在っていっぱいありましたからね」
そう。同じ商船改造型空母でも21ノットしか出せなかった奴とか、艦橋高い高い巡洋艦とか、『飢えた狼』もそうだ。突き詰めてしまえば色々あるのだ。
というか、突き詰めれば大日本帝国の船でクセのなかった船など、長門型戦艦と最上型巡洋艦くらいしか思い浮かばない気がする。
さて、せっかくなので俺がもらった軍艦のリストを挙げよう。
○『扶桑』型戦艦 『扶桑』・『山城』
○『雲龍』型航空母艦 『雲龍』・『天城』・『葛城』
○『飛鷹』型航空母艦 『飛鷹』・『隼鷹』
○『大鳳』型航空母艦 『大鳳』
○『夕張』型軽巡洋艦 『夕張』
○『香取』型軽巡洋艦 『香取』・『鹿島』・『香椎』
○『阿賀野』型軽巡洋艦 『阿賀野』・『能代』・『矢矧』・『酒匂』
○『重雷装巡洋艦』 『北上』・『大井』
○『朝潮型駆逐艦&夕雲型駆逐艦』
○『間宮』型給糧艦 『間宮』
○『足摺』型給油艦 『足摺』・『塩屋』
○『津軽』型敷設艦 『津軽』
○『明石』型工作艦 『明石』
○『伊400』型潜水艦 『伊400』、『伊401』、『伊402』
○一等輸送艦 30隻
○二等輸送艦 40隻
○『あきつ丸』・『熊野丸』
さらに物資や人員を運搬するためなのか、隆西丸・帝亜丸・龍田丸など、大戦中に失われた客船や貨物船の名前がずらりと並んでいる。
艦隊付随戦力
○『三菱 A7M 烈風改』
○『愛知 B7A 流星改』
○『零式水上偵察機』
○『特殊攻撃機 晴嵐』
○『艦上偵察機 景雲』
○『四式中戦車 チト』
○『一式十糎自走砲(ホニⅡ)』
○『九五式小型乗用車(くろがね四起)』
○『一式装甲兵車』
○『自動貨車(九四式六輪自動貨車)』
○『九〇式野砲』
○『九六式一五糎榴弾砲』
○『四式七糎野戦高射砲』
○『二式二〇粍高射機関砲』
○『一式三十七粍高射機関砲』
○『九九式小銃』
○『九二式重機関銃』
○『一〇〇式機関短銃』
○『浜田式拳銃』
○『各種手榴弾』
○『八九式重擲弾筒』
○『一二糎迫撃砲』
○『九八式臼砲』
うん、よくあるラノベのような中世ヨーロッパ~近世ヨーロッパレベルのファンタジー世界なら、十分無双できるくらいの大戦力だ。
戦闘機は後半に陳腐化した零戦かと思いきやまさかの烈風か……零戦の後継機で、噂では『零戦より航続距離長くて格闘戦に強くて強力な機体が欲しい』というおねだりを海軍がしたから作られたとかなんとか……。
攻撃機の流星はかのシュトゥーカ大佐で有名なハンス・ウルリッヒ・ルーデルこと、魔王大佐殿の愛機・『Juー87』と同様の逆ガル翼を装備した機体で、雷撃と急降下爆撃を一本化する機体ということで採用された機だ。
何気に最高速度も零戦以上が出るから、これはかなり心強い……日本流のマルチロール機の走りみたいなもんかな?
ちなみに余談だが、烈風改も視界確保など諸々の理由から逆ガル翼が採用されている。
戦車は対戦車能力の低かった『九七式中戦車チハ』や『九五式軽戦車ハ号』じゃなくて、最初から対戦車戦闘を見据えて四式か……車両や大砲などのリストを見ると、ここだけはほぼ終戦間際の技術になってるな。
他にも工兵隊に必要なクレーン車やドリルなどの機材や車両も多数みられる。
向こうに戦車に匹敵する存在か、あるいは戦車そのものがあるのかもしれないな。だとすると新型車両の開発などができるとありがたいんだがな……明石とか夕張の精霊さんがそういうことやってくれないかな?
いかんいかん。ゲームのやりすぎかな。
これらの航空機や車両も、多くが『終戦までに完成しなかったもの』、『空母がなくて活動が限定的だったもの』、『試作車両しか作られなかったもの』となっている。
なるほど、そういう意味ではこちらも『クセのある』ものばかりだな。
それに、『伊400』型潜水艦がいるってことは、搭載機として『晴嵐』も付いているな。というか、あれがないと『伊400』型の存在意義は半減以下となってしまう……。
っていうか、潜水艦は逆にこの3隻だけかい。せめてもうちょっとなんかなかったものか……ま、日本の潜水艦ってドイツのUボートと比較すると酸素魚雷が発射できたこと以外は列強の潜水艦からすると酷かったらしいからな。
中にはアメリカの潜水艦によって沈められた潜水艦なんていう奴もいるし。
一説によれば艦橋の形状に関してはドイツ海軍より進歩していたという話だが……それは完全に島国で海軍を重視するお国柄だったからだろう。
なるほど。どいつもこいつも一癖も二癖もある連中ばかりだ。
しかも、これらに加えて工兵隊や工作車両までつけてくれるようだ。これなら居を構えられる場所さえ見つければ補給もできるぞ。
そのせいか知らないけど、搭載してある物資も含めて輸送艦と特設輸送船がめっちゃ多いな。数多い兵員・物資輸送のためなんだろうけど、陸軍所属の船舶のはずの『あきつ丸』と『熊野丸』までついてるし……。
「こりゃ本当にちょっとした国と戦争するには十分すぎる戦力だな。召喚小説の覇権国家の多くとも渡り合えるぞ」
正直、艦隊と言ったので陸上戦力は期待していなかったのだが、陸軍軍人の魂も多くが残っているということなのだろうな。
考えてみれば、民間から徴発された輸送船ごと沈められた兵隊さんや技術者もかなり多かったっていうしな。当然のことかもしれない。
「また、今回の特典を授けるに伴って、転生してほしい世界も決まりました」
「え、そこまで決まるんですか?ランダムじゃなくて?」
太陽神様はコクリと頷く。その顔は若干緊張しているように見えた。
「はい。あなたが選んだ特典により、あなたが赴くに相応しい世界がある、と判断されたようです。では、改修・改造のボタンを」
俺がパネルのボタンを押すと、パネルに『扶桑型戦艦』と表示された。主砲や艦橋、高角砲などが表示され、『改修可能』の文字が浮かんでいる。
なるほど、ここに触れて改造していくものを決めるってわけか。
ここまでくるとゲームみたいで楽しくなってきたな……。
「えぇと、扶桑は本来主機関を変更して、装甲をマシマシにして、さらに主砲を45口径41cm三連装砲と、同じ口径の41cmの連装砲に変更できたはずだから……おっ、主機関の大幅な馬力向上が許可されてら。これなら艦種の形状の工夫とかもあるけどもっと速力を上げることができるかもなぁ……」
現実世界ではお金や時間、資材や人員がなくてできないような改装案でも、神様の世界ならいくらでもOKだ。
扶桑型は金剛型戦艦の経験を基に開発された初の国産超弩級戦艦だったこともあり、様々な部分が未成熟なまま建造された、『欠陥戦艦』の烙印を押されてしまった船だ。
なので、最後の改装でも7万5千馬力と大和型戦艦の約半分しか馬力が出せない。これを少しでも強化できるなら、かなりありがたい話だ。
超弩級戦艦も後々の機関に至っては倍以上の馬力を発揮するようになったからなぁ……こりゃ、扶桑も倍とまではいかなくても10万馬力以上は欲しいけど……お、船体改装もちょっと容量を大きくできそうだ。
これなら13万……いや、倍レベルの主機関の搭載も夢じゃないな。と言うか、ここまでくると魔改造にもほどがある気がする……。
ま、いっか。細かいことは気にしない。
「あとは……対空砲に秋月型の主砲載せたいけど……扶桑型はちょっと無理そうだな……よし、その代わりに対空機銃は多めで、近接信管弾装備で……対空レーダーを強化して……あっ、艦首をバルバスバウに変更できるじゃん‼」
バルバスバウこと球状艦首は、日本では試験的に翔鶴型航空母艦が採用し(客船では『飛鷹』の元となった出雲丸・橿原丸が装備していたが)、戦艦でも大和型戦艦が採用したことで有名な艦首で、造波抵抗を大きく減じてくれるので、燃費向上に寄与してくれる。
あとで確認してみてわかったのだが、一定以上の重量がある艦艇はほとんどがバルバスバウへ変更が可能になっていた。
これで随分と航行が楽になるだろう。
「こりゃ……魔改造が楽しみになってきたぜ……英国面とか言われないようにだけは気をつけないといけないけどな」
しかも、陸軍装備に関しても回収・改装が可能というのはありがたい。榴弾砲や野砲をゴムタイヤにするだけでどれほど楽になるか……。
こうして、それぞれの改装が終了した。
結果は以下の通りとなる。
○『扶桑』型戦艦(バルバスバウ設置・主機関変更による28ノットまでの増速・米国式対空レーダーおよび対空機関砲増設・装甲強化と共に主砲を41cm三連装砲2基、連装2基に強化、水平装甲積み増し、バルジ装着、砲塔天蓋改良)
○『雲龍』型航空母艦(対空レーダー強化・飛行甲板延伸・米国式油圧カタパルト設置)
○『飛鷹』型航空母艦(バルバスバウ設置・油圧カタパルト設置)
○『大鳳』型航空母艦(対空レーダー強化・排気装置強化)
○『夕張』型軽巡洋艦(主砲を65口径10.5cm連装高角砲に換装・米国式対空レーダー設置)
○『香取』型軽巡洋艦(主砲を65口径10.5cm連装高角砲に換装・米国式対空レーダー・四式水中聴音機設置)
○『阿賀野』型軽巡洋艦(バルバスバウ設置・米国式対空レーダー設置・主砲を60口径15.5cm連装砲に換装)
○『重雷装巡洋艦』(主砲を65口径10.5cm連装高角砲に換装・形状は『大井』の最終時に改装)
○『明石』型工作艦(バルバスバウ設置・主砲を65口径10.5cm連装砲に換装)
○『間宮』型給糧艦(『明石』同様のディーゼルエンジンに換装及びバルバスバウ設置、さらに主砲を65口径10.5cm単装砲に換装)
○『足摺』型給糧艦(バルバスバウ設置・主砲を65口径10.5cm連装砲に換装・主機関をタービン2基、ディーゼル2基に変更)
○『津軽』型敷設艦(主砲を65口径10.5cm単装砲に換装・機銃増設)
○『朝潮&夕雲』型駆逐艦(主砲を65口径10.5cm連装高角砲に換装、米国式対空レーダーに換装し、レーダー照準射撃を導入)
○『伊400』型潜水艦
○一等輸送艦 30隻(主砲を65口径10.5cm連装砲に換装)
○二等輸送艦 40隻(機関を艦本式オールドギヤタービン2基(千鳥型水雷艇と同じ機関)に変更)
○あきつ丸・熊野丸(バルバスバウ採用、機関を空母『龍驤』と同じ機関に換装)
「これでいいです」
「では、あなたを新たな世界……『マギカクロイツ』へお送りしましょう。大蔵旭日さん、良い旅を」
こうして、俺は再び眩い光に包まれるのだった。
本格的な冒険は次回からになります。
旭日がどんな世界でどんな戦いを繰り広げるのか、お楽しみに……。
次回の投稿は4月の23日か24日にしようと思います。