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[ルートA] 地獄の続き

ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ




「___おい」






_______声が聞こえる。








「____おい、コックローチ」








ワたしが知ってる声だ。








「冬眠の時間は終わりだぜ」


「...ぅ、ぅあぁ...」


「___ゲボォッ」


「ったく汚ぇな。自分で洗濯しろよそれ」


「はぁ...くっ...」


「...ここは...」


不気味なところだった。


私はシミの着いた白いベッドの上にいるのだが、そこは病院ではなく薄気味の悪いアルカトラズ刑務所のようなとこだった。


丁度アパートの部屋ぐらいの広さに、私のベッドを含めて4つ丁寧に置かれているのだ。


電球はひとつのみで、天井の中心にブラブラとぶら下がっている。


その部屋にプライベートなどなく、本当に人権を剥奪されたような人間が集まっていた。


そして横に点滴パックやら心電計やらも置かれていた。


左の皿のパンはドブネズミの餌だ。




「ミラノの天国だよ。綺麗なとこだろ」


「嘘、本当は名医のいるゴミ捨て場みてぇな地下さ。

身元がバレるとヤバいやつらしか居ねぇ」


「普通の病院だったら内通者がいるからな」


「...はぁ....は....なぜ...こんなとこに...」


「知らねぇ。ジャパニーズヤクザさんだからじゃねぇの」


「...しらばっくれるなよ。

サリエリやら賞金やら言ってたぞ」


「知らねぇっつってんだろがボケ!

蜂の巣にされたってのにもっと風穴開けて欲しいのか!?」


「クソッタレのゲロ女が」








「...覚えとけ」




「あ?」



「...その言葉、覚えておけ。

いつ私にぶっ殺されても文句の言えねぇ証拠になる言葉だからな」


「おー怖いね。ヤクザさんブチギレってやつか。

BGMでも流れそうだな。てめぇんとこの国の任侠映画ってやつでよ」


「...おい、何してやがる。

まさかせっかくつけてもらった点滴外そうとしてるわけじゃねぇだろうな」


「やめとけよ。栄養補給のパックやら血液パックやら色々つけてんだぜ。ここからでも5本くらい注射してるように見える」


ブチッ


「イカれてんのか、死ぬぞてめぇ!」


「嘘だ、立てるはずがない。

計五発の9mmぶっぱなされたはずなんだ」


「やめろ、来るな」


「おい_______!」




ガシッ




「.........シャロォ」


「シャロ、シャロ、シャロ」


「このクソッタレの蛆虫女が」


「本当のことを話せよ」


「....うっ、待て、まてって」


「...いっ息がっ....」


「こっちを見ろ、あ?

こっちを見ろって。出来損ないのゴミ女」


「これだよこれ。

見えるだろ、この顔。

顔面にくらったらしいんだよ、お前の言う9mmってやつを」


「さっきから顔を動かそうとしてもビクともしねぇ」


「これなんて言うか知ってるか?

顔面神経麻痺ってやつだ。昔本で読んだからな」


「それに左目もさっきから見えてねぇ。

と言うより、顔の左半分が死んでるみてぇに動かねぇ」


「正直に言えよ。

返答次第では殺さないでおいてやる」


「____くたばれ...売女がっ...」


「あっそ」


「じゃ、あばよスカラファッジョ」




ブチッ




「ゲッホォっ...ごほっ」


「____おい、何抜きやがった...

まさか医療機器のコンセントじゃねぇだろうな...!」


「自分で確かめろクソ女。

てめぇのその鼻に突っ込んでる管が息苦しくて邪魔になったと思わねぇのか」


「...うわあああ、呼吸器系はまずい...!

わかった、話すからコンセントを入れてくれ!」


「先に話せよ。

クソ女は信用出来ねぇからな」


「まず確認だ。襲撃してきたヒットマンはどこのどいつだ」


「あいつらはサリエリの部下だ!

私をつけ狙って襲ってきたんだ!」


「なぜサリエリはお前を狙う。

お前にそんな価値があんのか」


「サリエリは私に賞金をかけたんだ、過去に問題を起こしちまって私を殺したがってる!」


「何をしたんだ。どうせお前のことなんだから金絡みなんだろ」


「あぁそうだ、サリエリの経営してる銀行から1000万ドルパクったんだ。もういいだろ...!」





「...なるほどな」





「___ご苦労。

約束通り活かしてやる」


「今はな」


「お前に仕事をやるよ。

今からその1000万ドルここに持ってこい」


「無理に決まってんだろ...

第一、なんでてめぇが欲しがる」


「私も金が好きでたまらない。

だからその為にいい大学にも行ったし勉強も死ぬ気でやった」


「...私を奴隷にする気か」


「かもな。

金だけ運んでくる奴隷」


「...クソがっ」


「勘違いするなよ。

この地獄に私を引きずり込んだのはお前らポッジョーリ家だ。

私をこんな目に遭わせた奴ら全員を私と同じ目に遭わせてやる」


「サリエリを殺す。私を撃ったあの二人も殺す。

カルロッタも殺す。あのクソガキも殺す」


「それからそいつらの家族も殺す。腹に子がいても殺す。ペットも殺す。大切なものも全部壊す」


「そして金を持ってきたら元凶のお前も殺す」


「全員ぶっ殺してやる。

この言葉を聖書みたいに何回も唱えて私の前に金を持ってこい。私の気が晴れるかもしれないからな」


「お前はそうやって最後まで私に尽くしながら殺されるんだ。私としてはこれ以上に嬉しいことはねぇ」


「さっさと金を持ってこい。

誰かから金を持ってこさせるんだ」


「...無理だ」


「無理か。

じゃあ今からこの私のゲロをすくって飲ませる。

喉つまらせながら死んでくれ」


「くそっ、おいコーラ!

電話貸せ!」


「コーラ?あのデブがか」


「あ、わかった。

コーラ飲みすぎてデブったんだろ。

そんでそのことを名前でいじられてる」


「どうだ、当たってんだろ」


「...知らねぇよ...」


___奥の扉からコーラと呼ばれるデブがハァハァ言いながら汗だくで受話器を持ってきた。


そして彼にお礼の言葉を伝えると気味の悪い笑顔を浮かべて奥に戻って行った。


「さっさと電話で呼べよ。

それから私のスーツも持ってこさせろ」


「銃もだ。そうだな、1911がいい」


「それからこのことを外部に漏らしたら...わかってんだろ」



「...」


「よし、さっさと呼べ」



その時シャロは黙って受話器を取り、親しい口調で話していた。


ただ、愛してるとかそんな甘い言葉を囁いてた。


これからの自分の運命を悟ったからだろうな。


「...スーツと銃も持ってきてくれ。

...あぁ、犬小屋の真下だ。そこで1911を」


「そして」


そして、最後に意を決したような顔をして一言。


「今すぐあのカバンを持ってこい、以上」





ガチャン









____シャロの目には透明な水滴が流れていた





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



「...もう着いたらしい」


「そうか」


ガシャガシャとうるさいリズムを刻む階段の音が聞こえる。


ここの階段は立て付けが悪い上にさびた鉄でできているからだ。


そして軽快な足音がこちらに近づいてくる。


奥の扉の奥からだ。


そしてギィという音と共に人が入ってきた。


「...シャロ、持ってきたけど...」


入ってきたのはメガネをかけた小柄の可愛らしい少女だった。


ショートカットでシャロと同じ髪型をしてる。


白いコートを着ていて重たそうに黒いカバンを引きずっているのだ。


「...キコ」


「シャロ、その人は?」


「どうも」


「どうも...」


「キコ、全部彼女に渡せ」


「え?」


「でもこれ、シャロの____」


「いいから、渡せ。

大丈夫だ」


「わ、わかった」


「ありがとう、キコちゃん」


「...ちゃんは恥ずかしい、かな。へへっ」


「ちゃんと全部持ってきてくれたんだ。こんな重いのに大変だったろ」


「いや、そんなこと....」



















パァン



















「...は?」




「君に罪はない。ないんだよ」


「...キコ...?」


「私が君を殺したわけじゃない。

このシャロって女の大切そうなものを壊しただけだ」


「ありがとう。

そしてさようなら、キコ」


「あっ、あっあっ」


「だぁああああ、あざみぃぃぃいいいい_____」



パァン




パァンパァンパァン















「...ふぅ」


「___コーラ」


「いや、ドクター」


「助かったよ。

この薬のおかげで体が思うように動かせた」


「いやこちらこそ助かったよ。

前からコーラコーラと呼んでくるひどいやつが死んでよかった」


「あんたもいじめから解放されてよかったな。

それより腹の傷はどうだ、まだ痛むか」


「あぁまだ治りきってないけど、こいつを殺してくれたおかげでそんなのも気にしなくなったよ」


「それはよかった。

じゃ、もう行くよ。こいつらの仲間が来たら私が殺したって言って構わない」


「あざみさんには本当に頭が上がらんな。

それはこっちとしても助かる」


「気にすんな。それよりまた来るかもしれないから、その時はよろしく頼む」


「別にそれはいいんだが、その...」


「なんだ」


「顔面に受けた弾のことなんだが」


「あぁ左半分が動かなくなったってことだろ。

別にあんたのせいじゃないし大丈夫だよ」


「...あ、あぁ」


「じゃあもう行く。

次会う時までには痩せとくことだ」





バタン





















「...」



「...顔面神経麻痺の話もそうだが」



「脳に障害を負ったっていう話なんだけどなぁ...」



「社会的行動障害」



「彼女の場合、残酷・極端な思考に走ったりする」



「だが記憶能力、学習能力などほかの能力全ては奇跡的に回復」



「最後に追っかけてでも伝えればよかったか」



「でもそれで殺されかねないし...」



「まぁ、また今度言えばいいか」



「...さて、この死体。どうしようか」


















































強者とは孤独である



孤高ではない



生まれつきの強さは運命によって抗うことは許されない



今日私は初めてカブトになった



翻弄される身から翻弄する身になった



殺される側から殺す側になった



私は強い



そしてもっと強くなってやる



私の、この燃えるような復讐心を少しでも癒す為に





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