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[ルートB A']ベレストダーレという女

「観る」



「...ビデオテープを」



ごちゃごちゃに混ざりあったカセットテープからそれらしいものを選び出す。


飽きないように、これはどの層に需要があるのかっていうマニアックなのにしてやった。



「...」



辺りは静まり返っていて、ビデオテープがプレイヤーに飲み込まれる音までも聞こえた。



「...」



女はロッキングチェアに座ったままで、何一つ変わっていなかった。



私はその横の地べたに座り、まるで友達の家に来た友達みたいだった。



「...」



___始まった。



目の前に映される化粧の濃い女。


ねっとりとしたトランペットの音が印象的だった。



するすると赤色のキャミソールを脱ぐと、ピアスのつけた乳首が顔を出す。



これって、痛くないのだろうか。



いや、普通に肉貫通してるんだから痛いに決まってるか。



「...」



そして、扉から筋肉もりもりの巨漢がノシノシと歩いてきて女を獣のように舐め回す。



最初は口、次に喉、そして鼻の穴。





ラストは______







「...」








眼球。









「...はぁ」




ロッキングチェアの女の方を見てみると、やっぱり表情に変わりはなかった。




「...見ろ」



「なに」



「貪りあってる。やっぱり私達は獣だ」




「悪いけど、そこの戸棚から天然水を取ってくれるか」



「あぁ」



汚れた洗面台の上の戸棚からペットボトルを取り出す。


その戸棚にあまりにもぎっしりとペットボトルが詰まっていたので少し驚いた。


興味本位で隣の戸棚も覗いてみると菓子が大量に入っていた。


そのまた隣も開けてみると今度は気が狂いそうなほど大量のパンが置かれていた。


中にはカビが生えているのもある。




「...それはカルロッタが私に与えたものだ」



「これをカルロッタが?」



「...そう」



「...私はカルロッタとの契約により許可が無ければ外には出られない。

身がバレてはいけないのだ」



「だからってこんな廃人みたいな生活....」



「...別に私は気にしてない。

ここの生活にもだいぶ慣れた」



「...こんなに多くの消耗品を一人でどうするんだ、って顔をしてるな」



「たまにカルロッタが大量に運んでくる。

彼女自身で」



「道理で私と彼女はお互いの気持ちがわからない」





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _


2006 7/6





日頃は、鏡を見る度に気づく。


私の身体が暗闇と調和するのを。


青あざと真っ赤な腫れが入り乱れ、何でつけられたか分からない傷。


下腹部から右肺のある肋骨にかけてのバリバリと走った電流みたいな痕。







私自身が、地獄だった。







「...ぅっ」



「あんた、もうやめな。

朝から今まで飲んでるんだろ」


「今何時だと思う、3時だ」


「...」


「...っ」







グビっ






「頼むよ、この後店を絶対に閉めなくちゃならないんだ」



「...」



「...なぁ....あんたは、小学生でも知ってる、誰でも知ってる正義のヒーローが、実は最低最悪のクソ野郎共だって知っちまったら、どうする」



「は?」



「...私なら、不安になる。

何を信じていいのか、何が正しいのか、分からなくなるからだ」


「そしてその不安を解消しようとしてあれこれ考える。

長い時間をかけて」


「そして、結局みんな同じ結論に辿り着く」


「信じられるのは自分だけだって」


「でもみんな何かに縋りたいから、何かに依存する」


「...私は今酒に縋ってる。

邪魔すると殺すぞ、ハゲ」



「...」


「カスターニョに言うからな」



「...」



店主が嫌な顔をしながらそう言って、裏に回ると何か気の強そうな、髪を後ろで縛った女が入ってきた。


後ろには4人くらい?の腰巾着を連れて、入店するや否や、私を睨みつけ、裏口に回った。


なにか言い合ってる声が聞こえる。



どうでもよかった。


だから構わず酒を流し込んだ。


今まで一度も酒に頼らなかった私が。





しばらくすると、女が私の前に立ちなんか言ってる。


正直何を言われてるのか聞き取れなかった。


やる気がないというのはおそろしい。


自分の活力次第で五感が正常に動かないのだから。






するといきなり、視界が反転する。


いや、それよりも先に右頬に鋭い痛みが走ったのだ。



「....」


右頬のガーゼが取れて真っ赤に腫れた肌が顔を出す。




ムカついた。


なんだって私がやろうとすることをいちいち他人に邪魔されなきゃいけねぇんだ。



「(ぶっ殺してやる)」



女の足が私の腹部に向かってくる。


なぜだかスローモーションに見えた。


鉛がついたみたいに。



どうやら人間とは、アドレナリンが出すぎると動きがスローに見えるらしい。


遅すぎて片手で掴んじまった。




そして掴んで窓にぶん投げる。



ひとりと限らず3人も4人もぶん投げてやった。




すると少しは気が紛れたようで、ちゃんと標準スピードで事は稼働した。




その後。


投げられた女が私が誰かと聞いてきた。


醜かった。地上にはい回ってるナメクジみてぇだった。






そして満を持して、勝者の私はこういうのだ。








教えてくれって


_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



「_____ドン....!」



「どうした」



「警察が大勢こっちに向かってきています!

このままだとこの家が...」



「.....あー、なるほどね。

ポっジョーリもやってくれたよ、ほんと」



「君、外で裸のヤツらに門前に立つように言ってきてくれ。

それが終われば粉を車に積んで」



「はい」



タッタッタッタッ____









一人。


部屋の椅子からズレ落ちて座っているような血まみれの男が息を吹き返す。




「....ごほっ.....うぅ....」



「....何故あいつだけ......生きさせた......」



「___分からないか。

2年も私のそばに居たというのに」



「....あぁ....いきなり裏切られるのは、...意味がわからねぇからな....」



「ひとつ教えてやる。

1度自分が最強になると、周りがどうでも良くなる」


「こいつはなんだが気が短そう。だとか、顔が怖い。だとか」


「ほんとにどうでもよくなる」


「あるのは征服感のみだ」


「言ってしまえば君達は消耗品で、

私が使いたい時に使って捨てたい時に捨てる。

ただ、それだけだ」



「...あんたには....情ってもんがねぇ...」


「人間特有の....情ってやつが...」



「知ってる」


「生憎そんなもの、全部踏みにじられてきたんでね」


「もう義理や人情にも愛想をつかしてしまった」


「というわけで、最後まで利用させてもらうよ。

君達のこと」



「....勝手にしろ」



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _





ガチャンッ





「ドン、全部粉詰め終わりました」



「よくやった。

じゃあ、行こうか」



「はい」



「あ、すまない。

タバコ忘れてきたんだった。

取ってきてくれるか」



「ですが、もう警察が.....」



「大丈夫、裏口を少し行ったところにあるから」



「わかりました」



「(ドンってタバコ吸うっけ....)」




タッタッタッタッ













「____アッディーオ、アモーレ」





カチッ





バァァアアンッ








_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



[_______午後のニュースです。

13時50分頃、サリエリ・コロッチォの邸宅で大規模な爆発がありました]



「.....」



「証拠を残さず全部消して逃げたか」



「....ここもいつかは」



「ボス...!」



「どうした、エスカ」



「サリエリの乗ってる車がこっちへ向かってるとのことです...!」



「...は?」


「それは確かなのか」



「はい、しかもサリエリ自身が運転してるらしいです」



「....」


「アリーを地下へ。

構成員は全員集合させろ、ベレもだ」


「全員武装準備だ。

ただし、屋敷の外を警戒する者はハンドガンをポケットの中に絶対隠せ」








「...な、何が起こるっていうんだ....」






















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