[ルートB] 執念の深き悪魔 2
「おい、電話持ってるか」
「持ってるわけねぇだろっ」
「(まずいな、こいつらにつけ込まれるのは一番やばい。
カルロッタに電話できたら何とかなったかもな)」
「あと、ひとつ言っとくがフェルナンダは銃の名手だ。
今撃たれなかったのは幸運他ならん」
「...私に何が出来る」
「何もするな。
後ろも見るな。
そこに伏せてろ」
さっき後ろを見ろって言ってたよなこいつ。
「そこにあるグレネードは使えないのか」
「使えるが、奴らを殺せばそれこそポッジョーリはおしまいだ。嫌われ者とはいえやはり奴らも警察だからな」
「____おい、何してる」
「私の知ったことじゃないな」
ピンッ ヒュッ
「は?」
バァッゴォォォ
「てめなにしてんだ」
「落ち着けよ、ビビらしただけだ。
ちゃんと車体外して投げた」
「ほら見ろよ、びびった刑事が」
キキイィィィ______
「スリップした」
ガシャッ、バコッ、ジシャアアアア
「これであいつらは事故ったわけだ。
命の保証はないがな」
「...てめぇ、覚えとけよ」
そう言った瞬間、私は助手席から思い切りブレーキを踏んだ。
キキキキキキッ
「そりゃこっちのセリフだ。
何ださっきの。
後ろを見ろだと?」
「相手が拳銃構えてるってのにか?」
「....」
「私を殺そうとしたのか」
「...」
「我慢比べか、いいね」
ピンッ
「は?」
「ほらよ、言わねぇと2人とも木っ端微塵だぞ」
「....このクソが」
「さてどっちがクソかな。
あんたの返事次第だ」
「....っ」
「(早く言えっ、早く言え早く言え早く言え早く言えっ)」
「...」
「(まずい、もう....!)」
パァンッ
「...!」
背後からあの拳銃の音がした。
あれは、フェルナンダとかいう奴の拳銃に違いない。
すぐにグレネードを窓の外から投げ、ピンの取れていない物に持ち替えた。
「話はお預けだ。
さっさと逃げよう」
「....クソ」
「....どうした」
「左の前タイヤが動かねぇ。
恐らく撃たれた」
「なっ、」
「じゃあ走るしかねぇ」
そういって2人して土砂降りの雨の中に出ていき走っていった。
パァンッ
もう1発放たれる。
どっちを狙ってるのかはわからないが、欲張って2人とも狙おうとしてるのだろう。
はたまたやけくそか、その銃の名手は私達の身体のギリギリを掠るが当たる気配はない。
雨も強くなり視界が霞んでいる最中、それでも銃の名手の体はみてとれる。
フラフラしながらゾンビみたいに歩いてくる。
片手にMR.37を持ちながら。
頭皮が切れてるのか、頭部から流血が見られる。
そして右の腹を押さえて、左眼を殴られたみたいに青く腫らして。
だが今にも倒れそうなその華奢な身体は、とうとう力尽きて濡れた路面にぶっ倒れた。
「...」
「...」
「こっからカルロッタの家まではどのくらいある」
「30キロ」
「...」
「まいっか、帰ろう」
「その前に、そのグレネードを捨てろ」
「あんたもその銃捨てろ」
「...」
コロッ
カチャッ
「「じゃ、帰るかぁ」」
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「...っていうことがあった」
「そうだったんだ。
それは大変だったね」
「しばらくは私に近寄るな。
知らない間に殺されそうだし」
「...」
「カスターニョ、後で私の部屋に来るんだ」
「....」
「まぁ、それは置いといて、2人にお友達が来てるよ」
「友達?」
カルロッタがカーテンを開け、ほらと指を指す。
すると、あの華奢な体が見えた。
「...ありえない、あの身体で何時間も歩いてきたってのか」
「...」
「で、あの子をどうする」
「いや、どうするもこうするも...」
「家では飼えないし、責任もってカスターニョが元の場所に返してきなさい」
「私が?」
「あざみは病み上がりだ。
今日はゆっくりさせてあげたい」
「...はぁ」
そうため息を吐いたカスターニョは、部屋を出ていき、そして玄関を出た。
するとゾンビみたいに歩いてくるフェルナンダを抱き抱え、なんと屋敷に引き返してきた。
「何考えてんだ、あんた」
「さすがにこのまんまじゃみすぼらしすぎる」
「風呂、借りるぞ」
そういって、カスターニョはゆっくりと私を横切って風呂場へと向かった。