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[ルートA] 終末の君に



「...はぁ....ぐっ..」






ピポパパポポピ




プルルルルル プルルルルル




ピッ





「...私だ」



「...彼女を、連れてき.....て」







_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



「ベレからだ。

仕事が終わったらしいから迎えに行くぞ」



「....行きたいところだが、体が言うことを聞かない」



「任せろ、安全に連れてってやる」




_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



「...車椅子かよ」



「なんだ、担架で行っても良かったんだぜ」



「いや....」






車を走らせること16分。


海岸晴れ渡った海岸近くにまで辿り着いた。




「ここって....」



「ボスから聞いたぞ、アリーとシャロと3人で遊びに行った海なんだってな」



「(そのうちシャロはお前に殺されちまったがな)」



「なんでここに」



「ここで拾ってくれってあいつに言われたんだ」



「....」




「....」



「....!

停めろ、あそこだ!」



民衆の騒ぐビーチとは変わって、少し行くと海近くの崖に辿り着いた。



誰もいない、静かな風だけが吹いていた崖だった。



そこに、蜂の巣のように穴が空いたグレーの塊がうつ伏せで倒れていた。



ベレだ。





だがそれ以上に驚いたのは、カスターニョが血気迫る表情で車から転げ落ち、ベレの元に向かったことだ。



「ベレ...クソ...」



「冷てぇ....」



血まみれのベレを仰向けに抱き、頬に触れる。


どうも顔が青白く、生気は全くと言っていいほど感じとれなかった。



「...なんで、私なんかを助けたんだ。あんた」



「...なんで....」






途端、ベレの手に握られている携帯電話が目に映る。



「これは...」





録音、2010年 4月 うんたらかんたら、と書いてある。





迷いもなく私は再生ボタンを押した。






ピッ









[.....はぁ...はぁ....]



[....私は、ベレストダーレ・ロッカー]



[...この録音は、....聞き終わったら]



[処分するよう....頼む]





「なんだ、これ」



「しっ、静かに」





[...あざみ。

君の復讐は終わりを迎えた。

もう一生、君を苦しめるものはいない...かはわからない]



[わからない、が....

だが、もう君がこの裏の世界にいる必要が無くなったのもまた事実だ]



[...だから、日本に帰って、大学生活を楽しめ]



[ただ、アリーとは友達でいて欲しい]



[あの子もまた、不幸な子供なのだ]



「...なんであんたはそんなに子供にこだわる」



[...それと、私が君の復讐を引き継いだ理由を教えてやる]



[...私は昔、戦争に行ってた。

そこで何人もの民間人が殺されるのを見たんだ]



[...考えられるか?

まだ10歳にも満たない子供が頭を割られて路上に放置されてた]



[...怖かった....ほんとに怖かった...]




録音機から涙をすする音と何かを飲み込む音が混じって聞こえた。




[....他にも....いや、もういい]



[...話を戻そう。

それで結局、私は大尉にもなった癖に助けられた数より見殺しにした数の方が上だった訳だ]



[そしてイタリアに住んでる間もずっと、後悔していた。

なんで助けられなかったんだって]



[...夜、今でも思い出す。

顔にバツ印を書かれた子供達が私の前に立ってるのを]




[....だから、君の復讐を請け負ったわけだ]



[....結局は自己満足の為だ。

君を助けたのも、君の夢を叶えてやるのも]



[...なんなら最後に、君の晴れ姿を見たかった....]



[....じきに私は逝く。

その時は、頼む。カスターニョ]



「....あぁ」



[...それと、私の部屋の物は全部燃やしてくれ。

もうほんと、跡形もないくらいに]



[....じゃあ、終わりだ。

片倉莇]



[終末の君に]






プツッ







「....」





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _





晴天の中、一人一人がその棺桶に花束を投げる。


葬式の雰囲気にしては、少し明るすぎるほどだった。


花を投げたのはカルロッタの身内だけ。


ベレの家族や親戚などは、誰も来なかった。



「...ベレさん、死んじまったな」



「あぁ、これでうちに主戦力がいなくなったわけだ。

少し寂しい気もする」



「...今はこの棺桶の中か」



「だがまぁ、サリエリを潰してくれた訳だからこれからはそんな気もせんでいいのかもな」





「....おい、見ろよ」



「...誰だ、あの....」



「....あの?」



「....あの、美人」



「....あれはあざみっていう日本人だよ。

見違えるほどだろ」



「一体どうして....」



「私がやった」



「カスターニョさん....」



「どうだ、髪はエクステをつけ、メイクも上品に。

あと香水はボスからもらったらしい高級なやつをつけた」



「服も縦線の入ってる赤茶と白のストライプのブラウスを買った。

イカしてるだろ」



「イカしてるって言うか....」



「この上なく綺麗だ...」






_____________





「____あざみ」



「...カルロッタ」



「なんだか、随分と雰囲気が変わってしまったようだ」



「...」



「なぁ、いいのか。

私がここに来ても」



「....?」



「...私はあんたを殺そうとした」



「...」



「...この世界では」


「親に弓を引く者は消されるのが自然だが」


「生憎あの場にいたのは私とベレだけだったのでね」


「別に構いはしない」


「私は君を愛してたからな」



「....」


「...ごめんなさい」



「いいんだ。

ほら、ベレにも挨拶してきなさい」



「...あぁ」












コツ コツ コツ コツ





「...Buona sera (こんにちは)」




















_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ __




2010 12 6 東京 新宿にて_______




















「.....」



「...さむ..」




コツ、コツ、コツ、コツ






ピポパパポポピ



プルルル プルルル




ピッ










[...ベレだ]



[この録音は、以降片倉莇以外の者が聞くことを一切禁じる]






ピーーーーーーーー






[あざみ、ベレだ]



[この録音が再生されてる、ということはもう既に私は土に埋まってることだろう]



[ただ、その前にやるべきことは済ませるつもりだ]



[...]



[そのひとつとして、君に言っておかなければならないことがある]



[まず、1つ目。

私は日本の暴力団に君の作ったリストの全員の殺害を依頼した]



[一部を除いて]



[彼らは以前よりポッジョーリと取引をしており、信頼出来る相手だ。金さえ渡せば、だがな]



[そして2つ目。

その渡した金額は、君の奪ったサリエリの貯金で賄わせてもらった]



[悪く思わないでくれ]



[そして3つ目]




コツ、ジャリ。




[今から言う場所に向かえ。

そこで決着をつけろ]



[これが私の、最後のプレゼントだ]










「(...不気味な倉庫だ)」












ギイイイイイイ












「....」




「....んむっんんー...!」



「んーー...!んー!」





















































猿轡をはめられた二匹の猿























































あれ






































「_____お父さん、お母さん」























ルートA [終]

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