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初めての怪獣退治

 王城でのお茶会から数日。シャインはコッソリとクレオに呼び出された。何だろう?告白されるのかな?園児にはありがちなイベントだよななどと思いながら園の裏側で待ち合わせをする。クレオが真剣な眼差しでシャインを見つめる。…これは…マジで告白か?


「ビームが撃ちたいの」


 …どうやらまだ諦めてなかったようだ。どう言う事だろう。


「怪獣を倒せる威力のある光線が撃ちたいの!」 


怪獣か。怪獣というのはこの星サウザンニウムに生息する魔獣の別名だ。主にシャインの父も所属する『守備防衛隊』が退治している。シャインも怪獣相手にビームを放ったことはないので通用するかどうかわからない。どうしてそこまで思い詰めているのだろう?


「実は…」


 

クレオには可愛がってくれた母の妹…叔母がいたのだが幼いクレオを連れて山にピクニックに行った時、突然山に怪獣が襲来した。逃げ惑う人々やクレオを守るために叔母が犠牲になったのだという。その場で闘士の資格を持っていたのは叔母一人で責任感が強くひとり闘い続けていた。もし自分が闘えたら叔母の足枷にならずに今も生きていたかもしれないと思うとどうしてもビームを撃てる戦士になって怪獣を倒して人々を守る仕事に就きたいのだという。

…驚いた。4歳なのにもうこんな具体的な将来の夢があるなんて。

一見いじめられっ子に見えたクレオがとても強い子に見えてシャインには眩しかった。


「だから、一緒に山に行って怪獣退治して?」

「…は?」


どこからそういう話になったんだろう?何か聞き損ねたっけ?


「なんで僕が怪獣退治するの?」

「叔母さんを殺した怪獣がまだ生きてるからよ!」


事件後何度も闘士が山狩りに入ってそれらしい怪獣を討伐したのだがどうも最初に暴れ回った個体とは違ってたらしい。今もって当時の個体は行方不明なんだそうだ。

いやいや、プロの闘士が出動して倒せない怪獣を俺が何とかできるわけないじゃん‼︎

そう何度説明してもクレオは納得しない。


「シャインなら何とかしてくれる、はず!」 


何だよその信頼感?なぜそんなに信用してくれるわけ?

そういうとクレオは顔をほんのり赤らめて俯いて黙り込むのであった。


「…?」 


 何にしろ一度その山に一緒に行って目的の怪獣が出なければそれで諦める、ということに落ち着いた。え?俺山行くの?王城より遠いところに行った事ないのに。


…仕方ない。


「クレオはいったことあるんだよねその山?」

「うん、ここから西にあるタカオ山だよ」

「じゃ、空飛んでいくから教えて」


そう言ってシャインはクレオを抱き抱えると空中に浮かび上がった。そしてそのまま猛スピードで西へ移動したのだった。


「ぎゃあああああああああ‼︎」

「ちゃんと下を見てよ道は合ってる?」

「わかんない早すぎてわかんないよー‼︎」


目を瞑ってちゃ下見えないでしょ。あ、あんまり強く抱きつくと飛びにくいよ。なんかいい匂いするし。あ、念動力の方が楽に移動出来たかな?

楽な移動の仕方を試行錯誤しながらようやくタカオ山の中腹に着陸する。なんで中腹かというとこの辺りに怪しい波動を感じたからだ。光子力ではないがこのサウザンニウムという星に影響された野生生物の体内にはこういう波動が渦巻いている。この波動が怪獣を生み出すと言われている。本で読んだ知識だけど。クレオはおぞましい空気を感じて足がすくんでいる。


「で、目的の怪獣ってどういうタイプ?」

「あ、赤い地竜のような四つ脚の」

「ああいうやつ?」


シャインが指差す方向には大小の地竜が群れでたむろしていた。


「あわ…あわわわわわわわわわ」

「あの中にいる?」

「わ、わかんない…でも叔母さんが光線で右眼を潰したのは覚えてる…あの中にいる?」


群れの一番奥にいる一際バカでかい個体が片目のようだ。群れのボスか。正直アレを光線一発で倒すというビジョンは浮かばない。周りの地竜に一斉に攻めてこられたらそれだけでアウトだ。山を降りて守護防衛隊に助けを求める案件じゃないかな?

クレオもこれほどの地竜が生息するとは思わなかったらしく必死にシャインの服を掴んで止める。


「ごめんなさい、あれは無理!無理言ってごめんなさい!」


一方シャインは冷静にどうやって無事に山を降りるか考えていた。すると地竜の赤ん坊らしき小さな個体がボスの前を横切ろうとするのが見えた。地竜のボスはいきなりその子を噛み砕き凄い勢いで食い漁った。続いて周りの小さな個体を根こそぎ食い散らかしていた。

何だこれは⁉︎

周りは護るべき群れじゃないのか⁉︎シャインは怒りで目の前が真っ赤に染まった。


 シャインは考えていた光線の技があった。前世の特撮番組で見た有名なあれた。ドラゴン◯ールで言えばクリ◯ンの得意技。シャインは己の光子力を練りに練る。そして両手に光の輪を発生させる。それを念動力で高速で暴れる地竜のボスに向けて飛ばす‼︎ 一枚、二枚、次々と新しく輪を発生させては飛ばす。雨あられのように光の輪が地竜に突き刺さる‼︎

腕を飛ばし、舌を飛ばし、四肢を切り飛ばし、頭を切り飛ばした。一際大きいはずの地竜のボスはシャインの『八つ裂き光輪』によって一瞬のうちに倒されたのである。

 残りの地竜の群れは蜘蛛の子を散らすようにその場から消えた。支配者が消えたからかもしれない。群れる怪獣の生態はよくわかっていない。


ポカンと見つめていたクレオがやがて泣きながらシャインに抱きつく。


「ありがとう!やっぱりシャインはすごい‼︎ありがとう仇を打ってくれて…ううカームおばさん…」


だがシャインは平静では居られなかった。今まで自分の放つ光線の本当の威力を知らなかったのだ。怪獣とはいえ命をいとも簡単に奪う光線を生み出す自分。なんなんだこの力⁉︎人間が生きるのにこんなもの必要なのか⁉︎


シャインは初めて自分の力に恐怖した。



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