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初めてのお呼ばれ

 ある日、マグナス家に王家から招待状が届いた。国の闘士とはいえマグナスはただの地方公務員である。おののくマグナスに妻リリィが言って聞かせる。


「落ち着きなさいあなた。宛名はシャインになっているでしょ?これは王子がお友達に出した招待状よ」


 中の文章をよく読むと王妃様からだった。今まで癇癪がひどく粗暴なところもあったジョーニアス王子が入園してシャインという友だちのおかげで前向きに自分の光子力と向き合うようになった。ぜひお礼を言いたい。王子の友だちを囲んでお茶会を開きたいと思うのでぜひいらしてください、という内容だった。すると立て続けに母の電話が鳴った。ちなみにこの世界、個人はケータイ端末っぽい連絡機器を持っている。家庭電話は存在しない。家単位への連絡はいまだに手紙が多い。なんなんだろこの文化?


「あの、わたくし幼稚舎でご一緒させて戴いております、ルビリンの母でございます。御宅様にも王家より招待状が届きましたでしょうか?」

「あ、はい」

「あの、うちのクレオが御宅様のシャインくんと親しくさせて頂いているとお聞きしたのですが…」


慌てた親御さんたちがシャインの母に連絡を入れて来たというわけだ。結局うちに一度集合して王城に向かうことになった。この中で曲がりなりにも国の仕事に関わった事がある人間はリリィだけだったからだ。一体何者だ?ママ上?


 

次の日曜日。王城から迎えの馬車がマグナス家までやって来た。親がみんな緊張して無言の中ルビリンとクレオは初の王城にテンションが上がっていた。シャインは割とどうでもよかった。ただ面倒なだなあと感じていた。いつの時代も権力者には近づいてはいけないとなんとなく思っていたから。


 シャインの住む城下町から一時間程で王居のある中央エリアに到着する。この国の首都のど真ん中にある広大な緑の地域。それが王居の地域だ。馬車を降りて一行は王女宮と呼ばれる一画に案内される。建物の入り口では王女様らしき優しそうな女性と手を繋いだジョーニアスがブンブンと手を振っている。


「シャインー!ルビリンー!クレオー!よく来てくれたなー!」

「こんにちは、ジョー!」


ニコニコの子供たちとまだ表情の硬い母親たち。


「皆さんようこそ。リリィもお久しぶり。今日は気兼ねなく幼稚舎でのお話をお聞かせくださいね」


母が微妙な顔をする。何?知り合いなの?王女様と?


 広い庭で護衛が見守る中ジョーニアスはシャインと光子力ビームの撃ち合いを始める。シャインはあんまり人前では見せたくないのだがジョーが率先して全力でやれ、というので渋々相手をしている。ジョーの後ろから続いてルビリンが闘気弾を飛ばして来る。シャインはほぼ受けるだけだがたまに反撃を見せる。それをバリアーで防ぐのはクレオの仕事だ。クレオはシャインに好きにさせないよう様々なデバフ…妨害術を飛ばしてくる。

 子供たちのいつもの訓練を兼ねた遊びなのだが周りにいる大人たち、護衛も近衛もみんな視線が釘付けだった。やっていることは国のエリート、守備防衛隊の訓練メニューと遜色ないのだ。わずか4歳の幼児たちがだ。大人はみな愕然していた。

 そんな子供達をニコニコしながら見つめるテラスの母親たち。


「ジョーニアスのあんな生き生きした姿初めて見たわ。本当にシャインくんのおかげね。ありがとうリリィお姉様」


おや、王妃様は母リリィと知り合いのようだ。なんか変な呼び方してるが。


「ありがとうございます、うちのルビリンも勝気で光子力を持て余し気味だったのがとても落ち着いたいい子になりました。娘の話はいつもシャインくんのここがすごいあれがすごいとシャインくんに夢中ですのよ」

「うちのクレオはとにかく引っ込み思案だったのが…あっという間に友だちが出来てあんなに楽しそうに…ううっ」

「い、いやぁ…あはは…」


 母は答え辛かった。この有様が子供の未来にとって良い事なのかどうかはまだわからないからだ。過ぎた力は狙われ利用されやすい。我が子にはそんな世界とは無縁でいてほしいとリリィは思っていた。…子供三人ともとても心配なのだが特にシャインは目が離せなかった。


 ひとしきり遊んだ後テラスでジュースをご馳走になる子供たち。彼らの前にトコトコとおしゃまなレディがご挨拶をする。


「みなしゃま、はじめましてジョーニアスのいもうと、アミヤともうします」


2歳くらいの幼女だ。ふわふわした綿毛のような髪、金色の瞳、とても愛くるしい。


「可愛いー」


ルビリンとクレオが抱き寄せて褒め称える。ジョーも妹が褒められて満更ではないようだ。シャインはというと…この世界で初めて大切にしたい、守りたい、と思える女の子に会った、と思った。

 つまりは一目惚れだ。



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