幼稚園へ
不定期ですみません
シャインは事件の後色々検査を受ける事になった。体内の光子力含有量を調べる検査だ。やり過ぎた結果、王都のエリート戦士団並みの光線を持つことが周りの大人にバレてしまった。
狂喜乱舞する脳筋の父・マグナス、弟の才能を褒め称える姉・ジーン、これからどう育てたらいいか頭を抱える母・リリィと身に覚えがあり過ぎた兄・ユリウスは青い顔をしている。家族内でまるで正反対の反応をしていた。
まずは強硬な母の意見を最優先して幼稚園に入るまでひたすら力の制御を覚えさせることにした。
同年代のケンカで血は見たくない。うん。シャインも母の言う事は素直に聞いた。
この星では4歳で大体幼稚園に入園する。シャインも4歳になり、幼稚園に通う歳になった。
シャインは入園前になって初めて気が付いた。この歳まで同年代の他人と会話したことがないのだ。4歳になるまで家人か使用人としか会っていない。閉じこもり過ぎだ。その事実に打ち震え途端に怖くなった。
果たして幼稚園で友達が出来るだろうか?
入園を渋り母にぐずるよように縋り付くシャイン。
「あらあら、赤ちゃん返りね」
「幼稚園いやだ〜」
「まあまあ。きっと素敵な友達が待ってるわよー?」
「ママがいればいい〜」
そんなぐずるシャインの頭を思い切り張っ倒すジーン。
「何言ってんの!あたしの弟なんだから舐められるんじゃないわよ‼︎」
何を言い出すのだろうこの脳筋姉は?母が苦い顔して説明してくれた。姉はその卓越した格闘センスで幼稚園内で様々な伝説を打ち立てたのだそうな。姉は自慢しているようだが母にとっては誉められないものの方が多かったようだ。
「嫌だってんならあたしが毎日連れて行くわよ」
「何言ってんの貴女は春から小学校でしょ?ちゃんと体育以外も勉強するんですよ⁉︎兄さんの妹なんだから」
「うぐう…」
ユリウス兄さんは小学校でも既にその頭脳は知れ渡っていた。頭の中身を比べられるのはジーンにとってもトラウマだった。姉弟ともに上のものと比べられるのはごめんだったのだ。
シャインの入った幼稚園は平均的な街の幼稚園…ではなかった。ガードマシンに囲まれて多くの要人の子女が通うランクの高い幼稚舎だった。一度暴漢に襲われた過去のあるシャイン達だ。国からこれくらいの補助も出ているとの事。噂によると光子力バリアーも展開できるらしい。兄も姉も通ったとこらしいがこんなとこで暴れたのかあの脳筋は。
幼稚舎というのでさぞかしお行儀のいい御息女様たちがおられるのかと思ったが…
女の子のスカートをめくるやんちゃ坊主にそいつをグーでぶん殴る女の子。そこらかしこでおもちゃを取り合いしてる幼児たち。ままごとをして男の子を尻に敷く女の子たち…と阿鼻叫喚な巷の幼稚園の風景そのものだった。中身が28歳プラス4歳のシャインはいまさらこんな子供達の世界に混ざりたくなかったので皆を遠巻きに見て持って来た光子力活用本を1人で読み耽るのであった。本を読みながら同級生たる園児たちを眺めるシャイン。個々子供達のの光子力含有量を比べて見てみる。母との力の制御特訓結果、大抵の生物の光子力含有量がわかるようになっていた。やはり幼児は相当低い。そりゃそうだ、普通の幼児はこれから光子力の使い方を覚えていくのだ。母の言う通りとうやら自分だけひどく桁が違うようだ。ついでに保育士のお姉さん達の光子力も測っていく。世の中の一般人の含有量にびっくりするシャイン。こんなもんなのか?大抵が一桁二桁だった。ちなみにシャインは七桁に届く。
ようく見ているとさっきから男女問わずケンカをふっかけまくる乱暴な幼児がいるが彼はどうらら生まれ持った光子力の含有量が周りの幼児より明らかに多い。三桁に届く。並の大人以上だ。乱暴なのはその力の発散の仕方を知らないからなんだろう。
「やめなよー」
「うるさいっ世に命令するなっ」
「きゃーっ」
世?なんだどっかのお偉いさんの子か?めんどくさそーだなやだなーと思っているといじめられてる女の子と目が合ってしまった。あ、ヤバい本当に助けを求める目だ。シャインは常々母から言われていた。
「女の子には優しく接するのよ?」
生まれてから姉ジーンに散々引きずり回されたシャインにはなかなかの難題だったがそこはかなりしつこく母に教育された。
仕方ないなあ。シャインは念動力で積み木を飛ばして乱暴者の頭にぶつける。こん。
「痛っ誰だ⁉︎世に積み木を投げつけたのは⁉︎」
周りの幼児はみんな返事をしない。誰も投げていないからだ。周りを睨んで見渡す乱暴者の今度は反対側から積み木のピースが飛んでくる。こん。
「痛っ⁉︎なんだ⁉︎誰だ⁉︎」
すると今度は周りから四方八方と積み木のピースが飛んでくる。
「わああああああっ」
乱暴者は泣きながらその場に伏せる。
シャインは全部が当たる前にピタリと空中で止めた。
(これで少しは懲りるだろう)
とほくそ笑んでいると突然ゲンコツが落ちて来た。
「シャ〜イ〜ン〜?」
しまった初日だからまだ母が幼稚園内にいたのだ。あっという間にバレた。母・リリィは光子力の波動の感知に優れているので力を使うとすぐにわかるのだ。それに後から聞いたことによると幼稚園の職員さんも皆母にシャインの光子力量のことは聞いていたそうであんな念動力を使える子供はシャイン以外いないこともわかっていたようだ。
「さすがマグナス家のお子さん…お姉さんたちに引けを取りませんな」
一緒にいた園長の苦笑いが母の心をえぐる。…にーにもねーねもやらかしてんだな、と思うシャイン。
そんな有様から幼児たちにもあっという間にシャインの噂が広まった。
いわく『4歳にして光子力を自在に制御できる天才児』である。
…どうしてこうなった?