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プロローグ
ある日、父親にこんなことを訪ねてみた。
「なんのために歴史を学んでるの?意味ないじゃんこんな昔のことを知っても」
子どものよくある質問だ。
日常の会話。
そんなつもりでなんとなく聞いてみただけだった。
しかし父親は肩をがっしりとつかみ、血相を変えてこう言った。
「我が子よ。歴史は我々人類の道だ。過去を綴らなければ未来を描くことはできない。
過去から多くのことを学んできた。歴史を失うことは人類の衰退に他ならない。
もし、我々の記憶がなくなり文明もすべて失ったらどうなると思う?」
「んー、車とか家電とかもなくなっちゃって昔に逆戻り?」
「さすがだ我が子よ。答えはNOだ。
全てを失った人類は争う。ただそれだけだ。
過去に繰り返してきた過ちも忘れ再び同じように争うのだ。
昔に逆戻りするだけならどれほど良かっただろうか
そして、いつかは人類が滅びてしまうかもしれない。
幸いにも人類はまだ残っている。これまで繋げてきた希望の灯を我々で閉ざすことは許されない。
だから止めなくてはならないのだ。」
「―歴史の消失をー」