生け贄にされた村娘の十六夜の夜
二回目の短編投稿です。
楽しんでみていってくれると嬉しいです。
この村では毎年、生け贄を授ける。この村から災いを退ける為。
この村の忌み子と、
婚姻の儀式をする。
私はこの日を待ち望んでいた。
だって、あの日から私は貴方に恋をしたから。例えこれが短い時間だけだと思っていても。
私は貴方の側にいたい。
私の名前は篠原 結愛。(16歳)
私は今日、愛する人と婚姻の儀式をする。
「お久しぶりです、蒼くん」
「…その呼び方早めてくれ」私の目の前にいる人が忌み子。
私はそうとは思わない。
名前は蒼。私はあの日、死ぬはずだった。どしゃ降りの雨の中、必死に助けてくれた。
その姿に私は恋をした。
私の愛する人は冷静沈着で優しい人。
これから私は短い時間を貴方と過ごす。
「おはようございます、蒼くん」
ニコニコと挨拶をする。
婚姻の儀式から一週間。
「いつも言うがその呼び方早めろ」露骨に嫌そうな顔をする蒼くんが少し可愛い。
だが仕方がないのだ。
その呼び名がもう既に定着しているのだ。
「大好きです」
「知ってる」
「じゃあ返事を…」
「断る」
「あら残念」
「そうか」
「冷たい人ね」プイとそっぽ向く。
そして私は外へ出て洗濯をする。
いつもの様に洗濯板で洗う。
手にポツンと水が落ちた。
雨だ。
…もう少し出きるでしょう…
そう思い気にせずに洗濯を続けた。
「どうしよう…」木の下に私は洗濯物を置いて言った。
いつの間にか大雨になり急いで木の下へと移動した。
しばらく私は座っていた。
そのあとガサッと音がした。
すぐに警戒になる。
「誰っ!?」
「んぁ?誰かいんの?」男の子の声が聞こえた。そしてひょっと顔を出した。
「結愛…?」
「茜っ!」
突然の再開だった。
「どうしてここに?というか久しぶり!」そう言うと私は抱き締められた。
「ちょっ!?茜っ!?」私は驚いて声をあげる。
「いや、久しぶりだったから…」
「…うん…そうだね…」
この人は茜。蒼くんの幼馴染みでもある人だ。私達はもう会わなくなって三年近くたつからとても懐かしく感じる。
「聞いたよ、蒼の生け贄になったんだって?」
「はい」
「私、久しぶりに茜に会えてよかった」私はしみじみして言うと少しだけ茜はキョトンとした。
「そうだね」久しぶりにみた茜の顔はとても嬉しそうだ。
「結愛っ!」いつの間にか私の名前を読んでいた蒼くんがいた。
そして私の顔をみて深く安堵して側に来た。
「帰るぞ。後なんで茜がいるんだ」邪魔そうに茜をみる。
「雨から避難して」
「違う目的のようだが?」
何だか不穏な空気だなぁ。
★☆★☆★
「茜となんかあったか」突然聞かれた言葉。
「いえ、感動のハグをしただけです」そう言うと何故かムスットし始めた。
「あの…私なにか言いました?」
と言うと突然抱き締められた。
「あ、ああの蒼くん!?」
「結愛は…」溜め息を吐かれた後に私は離された。
いったい何なのだろうか?
♠️
私は産まれたときから、生け贄とされていた。
そんな事を知らずに私は平凡と生きていた。
初めて聞かれたとき、私は絶望した。私は死ぬんだ、と。
私は私の事を知っていた。
私の寿命を。
私は勘だけは良かった。
言わば私の能力だ。
産まれた時からずっと不思議に思ってた。
どうして私は産まれてきたのだろう。どうして人は死ななければならない。それが不思議でならなかった。そしてどんどんと迫って行く寿命。怖かった。
そして私は知らずに土砂降りの中、雨がやむのを待っていた。
突然と崩れて私は落ちて行く。
片手だけ辛うじて持っていた。
私は恐怖と諦めた気持ちでいた。
その時に助けられた。蒼くんに。
私はあの時、死ぬはずだった。
その時、私は恋をした。
初めて生きたいと思った。
だからこそ、
私はまだ、死にたくない。
私は
もうすぐで
死ぬ。
★☆★☆★
「結愛?」突然声をかけられた。
「茜……私、もうすぐで死ぬよね」
「な…んで…?」震えた声で私に問う。
「私、分かるんだよね。今度は…もう、助からないよね。もうすぐで十六夜の夜だもん」
仕方がないけど事実だ。
「十六夜の夜」村で生け贄にされた後の寿命は十六日。終わりは夜。逃れられない運命だ。
まるでかぐや姫のように月に帰る。
ここでは、尽きると言った方が正しいだろう。
私はもうすぐで終わる。
残り、1日。
私は生きたいと何度だって願う。
★☆★
「さよなら、私の愛する人」最後に言った。もう、十六夜の終わり。もうすぐで私は尽きる。
いや、消える。
人はどうして死ななければいけない?死とは何?
ずっと不思議な事。
私は何度だって貴方に会いに行くから。また会える日まで、さよなら。どうか、幸せになって。
♠️
俺は蒼。小さい頃から忌みからはれて育った。俺はだからこそ何も興味が持てなかった。
いつも毎年、婚姻の儀式をして十六夜の夜に死んで行く。
それが俺にとってはもう、なにも感じなくなっていた。
小さい頃からずっと。
大雨が降るときに俺は小さい子供と出会った。当然最初は無関心だった。でも、出会っていくうちに段々と興味が湧いた。
ある日、結愛が生け贄となった。
俺は仕方ないと思いながら、感情を圧し殺した。
なにが良くて何が良いのか分からなくなった。
結愛との最後の言葉は……………………
♠️
「生まれ変わったら私は会いに行くから。その時は返事ください…
どうか、幸せになって……」
最後の言葉がこれだった。
また、会いに行くから。
それまで、さよなら。
私が愛した人。
そしてまた、死んで行く。
憐れに、十六夜の夜に。
消えて、死んで行く。
最後まで見て頂いてありがとうございます!
今回は少し文字数が多いですね。