怖すぎる悪役令嬢
「どけ、そこの者。死にたいのか。」
女騎士は、強い口調でそう述べた。馬に乗り、鎧を着たその格好は中世の騎士だった。
「ミランダ・シミー???ほんとにミランダなのか??」
隼人は、小説の中でしか見た事がなかったので実物を見た時にあまりの立体感に驚愕した。
鎧は見るからに銀であり、覇王剣は小説の挿絵に載っていた、剣そのものだった。長さは、2メートル以上あり、女騎士が持つには余りにも長い。
「貴様、聖剣軍の者か。差し支えなければ、貴様の命を貰うが。」
すると、ミランダは、覇王剣を振り回して来た。
「ちょっと、やめてくれ、、、!!違う俺は、別に聖剣軍じゃない!!!」
隼人は、ミランダの攻撃を避けるように逃げた。しかしそこは戦場だったので、常に死と隣合わせである。
弓矢や、銃を持った者までいる。
(待て、待て、ミランダがいたって事は、どこかにエルネエストもいるはずだ。覇王剣が存在するってことは、恐らく聖剣もあるはず。)
「逃げるな、貴様、命は奪わん。!!見慣れない顔だな一体何者だ??」
野太い声がすると、後ろから馬の歩く音と共に無精髭を生やした長髪の男がいるのが分かった。
「お嬢様、あの男は、もしや聖剣軍が送り込んだ、スパイでは??」
「そんなはずはないがな。おい、貴様に聞くが、聖剣エクスカリバーは知っているか??」
「エクスカリバー??」
この世界に2つしかない、聖剣で、覇王剣と共に世界の秩序を保つと言われている伝説の剣。
手にすれば、万能の力を手にするという、剣。
ハーメルファンの魔導者によれば、3000年の眠りから覚めし時復活すると書いてあった。
「その、お姫様、俺は確かにその剣の存在は知っています。でも、それがこの世界のどこにあるかは俺もさっぱり??」
隼人は、とにかくこの状況を脱出したかった。なぜなら、彼女の持つ覇王剣は、四つの形状へ変化が可能であり、その形状へ応じてスピードが超能力で変化したり、さらには魔術まで使えるようになるのである。
「くそ、逃げるが勝ちだぜ。」
「貴様、逃がすか。やはりな、知っているからには力づくで連行するしかないな、よし完全礼装を唱えるぞ。遥かにし定めしとき、ケルベロス!!!」
すると聖剣から赤い炎が上がり、炎を纏った3つの頭を持つ番犬ケルベロスが召喚された。
「うわでた、ケルベロス、、、そうだよ、ミランダの精霊の中でもいちばん厄介なんだよ。こいつしつこくて、しかも温度は2000℃。死ぬー!!!!」
「追いかけろ、ケルベロス!!!!」
隼人は、逃げ出した。しかし大量に倒れている、死体の山々超えなければ、逃げられない。
(畜生、まさかほんとに異世界転生するなんて、そんなの聞いてないよ。しかも俺が好きだった小説の世界に来てしまうなんて。、)
「ぐぉーー!!!!!」
ケルベロスは、既にそこまで近づいている。もうダメかと思ったその時、1人の少女が現れた。
「くそ、死ぬ!!!!!」
少女は、14歳くらいの白い長髪の女の子だった。
(アリシア???)
隼人は、もちろんその登場人物を知っていた。エルネストと共に活躍するヒロインの少女、アリシア・ヴィショップである。
「超克せよ、神の運命と共に、 !!!」
少女は、手を組むとそう祈った。すると時が止まり、周りの人物も動かなくなった。
するとケルベロスは、唸り声を上げたが一瞬止まった。
時間が止まった。
「さあ、今のうちに逃げるのよ。ここにいてはあなたは死んでしまうわ。」
アリシア・ヴィショップは、立ち上がると、呪文を唱えた。
「時に決まりし、汝我とて、場所の運命、時空間礼術、らエクリカーナ!!!」
白い閃光が湧き上がるとと共に、少女と隼人は、身体をワープさせた。
戦場のような場所から、タイムホールのような時限空間が現れた。あまりにもそこは異世界と言うには、素晴らしすぎる場所である。SFでしか見た事がなかったファンタージーの世界へ今自分は来ているのである。
そして安全な場所へとワープした。そこは夜の草むらだった。
先程のめちゃくゃな場所からかなり程遠いのであろう。
「今のは時空間礼術か。」
隼人は、思わず口にした。
「あなた、なぜ私の魔法を知っているの??」
「知っているさ、良くね。それに君の名前もね。アリシア・ヴィショップ。それが君の名前だよ。それに俺は、この国で聖剣と覇王剣が存在している事も戦争している事も知っている。覇王剣の所有者のミランダ・シミーは憧れだったからね。」
アリシアは、驚きの声を上げた。
「あなた、やっぱり勇者なのね。エルネストが言ってた。異国から勇者が現れるって。世界を救ってくれる勇者がって。」
「勇者??俺が???」
隼人は、慌てて質問した。
「あなたは覇王剣の存在を知っていた。てっきり、奴らの仲間かと思ったけど、あなたのこと信頼していいのかしら?」
「ふざけんな。俺は、まじで異世界転生した人間だ。全然スキルもなければ力だって使えない。それに、覇王剣だってあんなケルベロスなんか召喚されたらどう立ち向かえばいいんだよ。」
「魔導書、確か、エルネストが言ってた。ミラ市の、私のギルドの近くにあるかも。とにかくここへいては危ないわ。私のギルドへ案内します。」
すると、アリシアは、時空間礼術を唱えた。
「戻りし時、エクリカーナ、私をギルドへ戻して!!。」
アリシアがそう唱えると、白い閃光が再び現れ、場所を移動した。