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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第4章
93/106

君と初めての夜

 二の腕にかかる頭の重みに幸せを感じる、午前1時。

 空いてる手で裸のミカンの髪を撫でながら、私はふと懐かしさが込み上げて、ふふふと笑いが溢れた。

「どうした、林檎」

 ミカンが頭を持ち上げて、不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。

「んー、なんか今はこういうことを当たり前にして、お嫁さんにもなって……」

 こちらをじっと見上げるミカンの目を見つめ返して、私は微笑む。

「初めてシた日が、懐かしいなって」

 その言葉に、ミカンは顔を真っ赤にして布団に潜り込んでしまった。

 布団の中から、くぐもった抗議の声が聞こえてくる。

「初めてって……あれは、忘れてくれよ……」

 到底無理なお願いを聞き流し、布団越しにミカンを撫でながら私はあの日のことを思い出す。


 あれは、ミカンが狼女になってから2ヶ月ほど経った頃だった。

 元々狼だった頃からミカンに依存していた私は、そんな彼女が人の姿になって、さらに依存度を増していた。

 だって仕方がない。格好良くて、綺麗で、優しくて、家事もしてくれて、甘やかしてもくれて……そんなの、大好きになってしまうに決まっている。

 だから、()()なるのも、時間の問題だったはずだ。


 ◆


 最近、狼女になったミカンがめちゃくちゃ甘やかしてくれる。

 お風呂を上がった私は、鼻歌混じりにミカンが待つリビングに真っ直ぐ向かった。

 そしてソファで本を読んでいたミカンに、お決まりのように声をかける。

「ミカン、いつものして〜!」

「もちろん。ほら、おいで」

 本をすぐに置いて、私に向かって両腕を広げてくれるミカン。私は迷わずその腕の中に飛び込んだ。

 ぎゅーっと抱きつくと、ミカンは優しく抱きしめ返してくれる。その温もりと匂いに、心が急速に安らいでいくのが分かった。

 いつだったか、ミカンが「ハグをするとストレス解消になるらしい」という豆知識を仕入れてきた時から、こうしてハグしてもらうことが日課になっている。

「よしよし、林檎はいつも頑張ってて偉いな。いつもありがとう」

 今日も今日とても、ミカンとハグをしたり甘やかしてもらえて、私は幸せを噛み締める。


 しかしここ最近、ハグをしている時に妙な沈黙が流れる。

 ハグなんて一般的なスキンシップの範疇のはずなのに、やたら心臓の鼓動がうるさくて、何か話さなきゃと考えれば考えるほど、頭の中を言葉がぐるぐる渦巻いてしまう。

 そんな沈黙を破ったのは、ミカンだった。

 ミカンの肩に顔を埋めて、このドキドキは何なのか考えていると、ミカンが小さく、緊張したような声で呟いた。


「き……キスも、ストレス軽減になるとか、見た……かも、しれない」


 私はばっと顔を上げて、ミカンを見る。その顔は見たことないくらい真っ赤で、緊張で震える桃色の唇が、目から離れない。

 鼓動の激しさに拍車がかかる。

 私はごくりと生唾を飲み込んで、意を決して口を開いた。

「ストレス減らすためなら……やるしか、ないよね」

 抱き合ったまま見つめ合う。鼓動がうるさい。

 ミカンが、覚悟を決めたように目を瞑るので、私は顔を寄せて、そっと唇を重ねた。 

 しっとりとした感触。ただの唇なのに、信じられないくらい、触れ合っている箇所が気持ちよかった。

 お互いに、ファーストキスだった。

 一回で終わるかと思ったが、唇を離した後に見つめ合うと、お互いまだ物足りないことを悟ってしまう。タガが外れたように、私たちは抱き合ったまま何度も唇を重ねた。

 見つめ合いながら舌を絡ませ合っていると、全身を快感が駆け抜けていく。

 知識としては理解していたが、一度も実感などなかったのに……。今まで感じたことのない興奮と、下腹部に感じる疼きから、私は生まれて初めて、性欲というものを実感した。

 そして私は、


「えっちなこととかも、ストレス、減るかも……」


 気がつけば、ミカンを押し倒していた。


 ◆


「それにしても、ミカン初めての時から下だったよねぇ」

「林檎がぐいぐい来すぎなんだよ!」

 まだミカンは布団の中から出てきてなくれない。

 あれは仕方がない、初めて欲情してしまったのだから。

「あの時は我慢できなかったんだよ、許して?」

 私が布団をめくって中を覗き込みながら許しをこうと、丸まったミカンが顔を上げて、恥ずかしそうに呟いた。

「私も、誘う気満々だったから……いい」

 頬を赤らめながらそんなことを言われるとまずい。今の私はあの時とは違って、もう性欲に忠実なのだ。

 私も布団の中に潜り込んで、ミカンを抱きしめる。

「ね、もっかいしよっか」

「まだするのか!?」

「ミカンが悪いんだよ、そんなえっちな顔するから……」

「なん――んむ」

 抵抗するミカンの唇をキスで塞ぎ、布団の中でミカンに覆い被さった。

 こんな可愛いミカンを前にして我慢などできない。

 ミカンの体に指を這わせて、私は微笑んだ。


「また可愛い声、いっぱい聴かせてね」

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