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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第3章
72/107

君で満たされた人生

お久しぶりです

 日差しの暖かな昼下がり。私の膝に頭を乗せてうとうとしているミカンの顔を眺めていて、ふと、私の学生時代はミカン一色だったなぁ。と昔の記憶が掘り起こされた。


 小学生の頃は、

『林檎ちゃん、皆で放課後公園で遊ぶんだけど、くる?』

『ううん。ミカンと遊ぶ』

『ミカンって誰?』

『ペットのワンちゃん』

『ふーん』


 中学生の頃は、

『林檎、明日お出かけしない?』

『んー、いいかな』

『そっか……やっぱりミカンちゃんと遊ぶの?』

『うん! 桃も来る? ミカン可愛いよ!!』

『う、うーん。遠慮しておくよ』


 高校時代……、

『鈴木さんってさ、その、好きな人とか……』

『いるよ?』

『っ! だ、誰……?』

『これ! ペットのミカン! 可愛いでしょ!!』

『えぇ……』


 大学時代でさえも……

『鈴木さ~ん、今日合コンあるんだけど――』

『ちょっと、鈴木さんそういうの来ない人だから』

『あ、そうなの? ごめんね~』

『ううん、大丈夫~』


 いやぁ、我ながら人付き合いを蔑ろにしすぎた学生時代だった……。

 ミカンの癖のついた前髪を優しく撫でながら、私は過去の行いを大いに反省する。が、仕方がないことだったとすぐに割り切った。

 だって、ミカンが可愛すぎるから!

 私に尻尾をブンブン振って甘えてくるミカンが可愛かったから!!

 あんなに可愛くて天使なペットがいるのに、遊びになんて行ってらんないもん!!

 まぁミカン曰く、私が放課後に友達と一切遊んでなかったせいで、お母さんには心配をかけてたみたいだけど……。

「んん、林檎、そんな変な顔してどうした……」

 眠そうな半開きの目を私に向け、緩んだ口調でそう訊ねてくるミカン。その可愛さに胸を撃たれつつも、私はミカンの髪の毛をわしゃわしゃと撫で回しながら答える。

「んーん、今日もミカンが可愛いなぁと思って」

「ふふ、そうか」

 と、嬉しそうに頬を緩ませてるミカン。なんだこの可愛い生き物は。

 お昼寝モードのミカンはふにゃふにゃしてて、普段と違う表情が見れる。これはまだミカンが狼だった頃から変わらない。

 休みの日とか、ミカンがお昼寝するかもしれないから、ずっとミカンの傍にいたかったんだよなぁ。可能な限りミカンの傍にいて、眺めて、可愛がっていたかった。

「ねぇミカン」

「んん……? なんだ?」

 私は言葉の代わりにミカンに微笑みかける。すると、ミカンもふにゃりと笑顔を私に向けてくれる。

 この稀にしか見れない笑顔が、私は大好きだ。


「今ね、私の人生、ずっとミカンだらけだなぁ。って思ってたの」


 唐突にそう打ち明けると、ミカンは少し驚いたように目を見開いたが、すぐにまた閉じて私のお腹に額をぐりぐりと押し付けてくる。そして、

「悪いが、林檎はまだまだだな」

 と勝ち誇ったように鼻を鳴らして見せた。私がその謎な態度に首をかしげると、ミカンは得意げに言って見せた。

「林檎は学校やら会社やらがあるが、私には林檎しかいない」

 少し前まで寂しそうに言っていたその台詞は、今となっては寂しさをかけらも感じさせなかった。

「だから、私の人生は林檎100%なんだよ」

 私を見つめながらそう言い切るミカンだが、私は思わず笑ってしまった。

 私が笑い出したのが不服だったのか、ミカンが頭を強く膝に押し付けてくる。なんで笑うんだ、と訊いてくるミカンに、私は素直に説明した。


「だって……りんご100%って、すごいジュースみたいじゃない」


 一拍静寂が広がり、顔を見合わせていた私達は、こらえきれずに同時に噴き出した。

「あっはははは! 確かに、ジュース、だな!」

「でしょ! あははは、はぁ、あははは!」

 くだらないことだけれど、こうしてミカンと笑って過ごせているだけで、私の人生は大いに幸せだ。

 私には会社もあるし人付き合いもしなければいけないけど、それでも、私の心の中はいつでもミカン100%だ。

「あー、面白い。眠気もすっかり飛んでったよ」

「あはは、じゃあお出かけでもする?」

「お、いいな」

「よし、じゃあ支度しよっか!」

 これからも絶え間なく、私の人生をミカンで満たしていこう。

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