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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第2章
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君の今の心情を答えよ

 珍しいこともあるものだ。

 私は小説を開いたまま、ちらと私の腹部付近に目を向ける。そこには、ソファに横になって私の腹部にしがみついてるミカンの姿が。私も小説を読んでいるので、特に会話もないまま、この状態が二十分ほど続いている。

 いくら素直じゃないとはいえ、構ってほしいときは何かしら声をかけてくるのがミカンだ。こんな風に会話もなくくっついてくるのは初めてだ。

 一体どうしたのだろう……私は小説を読みつつ、ミカンのこの行動に関して考えてみる。


 ◆

 

 一つ目、ただ甘えたいだけ。

 稀に私に自ら甘えてくるミカンだけど、それが恥ずかしくて黙って抱き着いているのではないか。十分にあり得る。照れ屋なミカンのことだ。何か口にしたら、私に

「なぁに甘えたいのー? 可愛いなぁぁぁ!」

 と可愛がられるだろうと思って押し黙っている可能性がある。

 先ほどから時折頭をぐりぐりと脇腹に押し付けてくるのも、甘えてる行動だとしたら、納得がいく。


 二つ目、体調が悪い。

 いや、これは無いと思う。ミカンは自分の体調不良はすぐに察知するし、自覚症状がないというのは前例がないので可能性は低い。それに今のところぐったりした様子はなく、尻尾も元気に動いているので体調不良ではないだろう。


 三つ目、夜のお誘い。

 あり得る。ミカンは普段はイケメンオーラをまき散らしているくせに、夜になるとネコになる。そしてさらに、夜のお誘いのうち過半数はミカンからである。そんなザ・誘い受けのミカンの事だ、夜のお誘いの可能性も大いにある。最近頻度も減ってきていたし、そういう気分なのかもしれない。

 しかもミカンは不器用なので誘い方が下手でもある。ちょっかいを出して私の気を惹こうとすることも多々あったので、その一種かもしれない。


 四つ目、嫉妬している。

 でもこれに関しては今のところ心当たりがない。最近は新田先輩の話題も口にしていないし、新田先輩以外でミカンが嫉妬することはあまりない。

 いや、人間以外にも嫉妬することがあるか。前酷かったのは猫カフェの猫、あと餃子だ。餃子に嫉妬って逆にすごいと思う。どんだけ私のこと好きなんだろうこの同居人(ペット)

 だけどそれでも心当たりはない。だから、嫉妬ではないだろう。


 ◆


 さて、この中で有力なのは一か二、甘えてるのか、夜のお誘いかだ。折角だから、ミカンの心情をびしりと言い当ててどや顔を決めたい。

 私は小説を閉じ、相変わらず私のお腹に頭を押し付けてくるミカンの髪を優しくなでる。すると、ミカンの尻尾と耳、それに身体がぴくりと反応を示した。

 持ち上げた顔は少し赤く、私はそれを見て、答えを心に決めた。ミカンの頭を撫でながら、してやったり顔で私は言った。

「ミカン、えっちしたいんでしょ」

 

 しばしの沈黙。ミカンの表情を一言で表すと、「何を言ってるんだ?」である。

 ……そっか。夜のお誘いじゃ、なかったか。やばい、とんでもなく恥ずかしい。私が後悔の念にうなされていると、ミカンが申し訳なさそうに説明した。

「えっと、林檎からいつもと違ういい香りがして……それが気に入って……くっついてたんだが……」

「そ、そうだったんだ……。これ新しいボディクリームなんだよ、新田先輩に貰った――あっ」

 口を滑らせたことに気が付いた時には、もう遅かった。瞬く間にミカンの顔は不機嫌そうになり、そっぽを向いてしまった。私の推理はどれも外れだったが、今だったら確実に分かる。

 答えは、四つ目の嫉妬一択だ。


 その後、拗ねたミカンの機嫌を直すためにベッドの上でいっぱい甘やかしてあげた。

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