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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第2章
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君と深夜に”悪いこと”を

「林檎待て、早まるな」

「でも、我慢できないのっ……!」

 私は心苦しく思いながらも、ミカンの手を振り払った。ミカンが辛そうな表情を私に向ける。やめて、そんな目で私を見ないで。

 ミカンが私のことを大切に思ってくれていることは重々も承知だ。だけど、私は、私の欲求に抗うことができなかった。

 ごめんね、ミカン……。


 私は、禁忌を犯した――


「どうしても、今ラーメンが食べたいの!」

「まったく……体壊しても知らんからな」


 ◆


 我が家では、基本的に外食は二ヶ月に一回か二回程度だ。一般的な子連れの家族であればその程度が普通だろうが、うちは女二人――片方は狼女だけれども―だけで暮らしている。同性と同居している友達は高頻度で外食をしているらしいのだが、我が家の外食が少ないのは言わずもがな、ミカンが私の健康面に配慮してのことである。

「外食は身体に悪い。林檎は私が作ったバランスのいい飯を食って長生きしろ」が口癖のミカンだが、それでも「たまにはな」と言って外食することはある。

 ミカンの料理はすごく美味しい。それこそ、下手な飲食店には引けを取らないほどだ。

 だけど、そうじゃないんだ。私の舌は、今、不健康な食べ物を求めているんだ!


 そう、今すぐ――深夜一時に、ラーメンが食べたい!


「体に悪いからこそ、食べたいと思ってしまう……それが罪なことだと分かっていても、一度食べたいと思ってしまったら、もう抗えないの!」

「もういいよ、分かったから食えよ」

「ミカンが普段私の体調を気遣ってくれてるのは――」

「分かったって!」

 二十分にもわたる私の熱弁に負けたミカンは、溜息を吐きながら食卓に着いた。

 私は台所へ足を向け、戸棚からインスタントラーメンを取り出す。と、リビングからミカンが私に声をかけてきた。

「私は醤油ラーメンがいい」

 その発言に少し呆気に取られてしまい、私は遅れて言葉を返す。

「あ、ミカンも食べる?」

「林檎が食べるなら、一緒に食べる」

 若干拗ねたようなその口調に、思わずきゅんとしてしまう。何この子可愛い。折角なので私もミカンと同じ醤油を選び、二人前を手早く調理した。調理って言っても、ほとんど麺を茹でるだけだけど……。

 ヘイお待ち、とラーメン屋の大将じみた口調でミカンの前に置くと、冷ややかな目線を向けられた。酷い、乗ってくれてもいいのに。

 しくしくとわざと口にしながら、ミカンの向かいに自分のラーメンを置き、私も食卓に着いた。

「それじゃ、いただきます」

「いただきます」

 会話もなく、深夜一時を過ぎたリビングには、二人の麺を啜る音しかない。それが何故か心地よくて、ちらと目線を前に向けると、ミカンも笑顔を浮かべて一心にラーメンを食していた。

 ミカンが下に垂れてしまった髪の毛を耳にかけ直す。無意識の行動だろうが、その仕草にどきりと胸が高鳴った。なるほど、世の男性の好きな女性の仕草ランキングに入る理由がよく分かった……。

「……なんだよ、じっと見て。早く食わないと麺が伸びるぞ」

 そう言ったミカンの顔は赤く、ラーメンで暑いのか私の視線で照れているのかはわからない。

 また暫く麺を啜る音だけが聞こえる時間が流れ、ポツリとミカンが呟いた。

「深夜のラーメンも悪くないな」

「少し悪いことしてる気分だけど、それが良いんだよね」

「ふっ、なんとなく分かったよ」

 そして二人で見つめ合って、まるで悪戯な子供みたいに笑いあった。


 結局そのまま勢いで冷凍餃子も焼いて、二人で平らげてしまった。翌日の食事が野菜ばかりだったのは言うまでもない。

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