君が好きでたまらない
――私いつも、きみが好きだよ。
「おーい林檎。起きろよ」
林檎の身体を揺するが、林檎は中々起きない。そればかりか、布団を被ってしまった。
「いや潜るなって。今日は出掛けるんだろう? 早く起きろよ」
「あとごふん……」
「そのセリフ三回目だぞ。いい加減起きろ」
最初に起こしてからもう二十分は経っている。私は痺れを切らして林檎から布団をはぎ取った。
流石に起き上がった林檎に着替えるよう促し、リビングへ向かって朝食を支度する。
ちらにと寝室を確認すると、林檎はきちんと寝間着を畳んでしまっていた。以前はよく脱ぎ散らかしていたので注意したら、最近はちゃんとしまうようになった。偉いな、林檎は。
私服に着替えてきた可愛い林檎と食卓をはさみ、各々の席に座る。
白米、目玉焼とベーコン、そして味噌汁。シンプルなメニューだが、林檎が一番好きな献立だ。特に目玉焼き、林檎は半熟が好きなので、いつも火加減には気を使っている。好きな人には美味しい料理を食べてもらいたい一心で、昔こっそり頑張ったのだ。
林檎は礼儀正しくきちんと合掌してから、朝食を食べ始める。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
美味しそうに目玉焼きを食べる林檎を見て、私は胸の奥に幸せを感じる。林檎のその笑顔だけで、朝早く起きて朝食を作る価値がある。
と、林檎がこちらをじっと見つめているのに気が付き、少し恥ずかしくなる。
「な、なんだよ」
林檎に訊ねると、幸せそうな笑顔で、こう言った。
「ミカンありがとね。私いつも、君が好きだよ」
唐突なその言葉に、思わず固まってしまう。不意打ちに弱いのを知ってるくせに、林檎は平気でこういうことを言ってくる。もう、なんなんだ。嬉しすぎて、幸せ過ぎて怖い。
今日は最高に、幸せな朝ご飯だ。
◆
「おーい林檎。起きろよ」
ゆさゆさと身体を揺すられるが、眠気が私を掴んで離さない。窓から指す日差しから逃げるように布団を被る。
「いや潜るなって。今日は出掛けるんだろう? 早く起きろよ」
「あとごふん……」
「そのセリフ三回目だぞ。いい加減起きろ」
とうとう痺れを切らしたミカンに布団をはぎ取られ、私の楽園は終わってしまった。グッバイ、エデン。
流石にこれ以上は怒られそうなので、目を擦りながら渋々身体を起こす。上向きにぐいっと身体を伸ばして、大きく欠伸をした。
「ほら、着替えて朝ごはん食べよう」
「はーい」
寝間着を脱いで私服に手早く着替え、寝間着をきちんとタンスにしまってからリビングへ向かう。脱ぎっぱなしにしていると、ミカンから母親のようなお説教が飛んでくるのだ。
リビングではミカンが食卓に料理を並べていて、それらは美味しそうな香りと湯気を立ち昇らせていた。
白米、目玉焼とベーコン、そして味噌汁。シンプルな朝ご飯だけど、ミカンは卵の火加減がとても上手い。だから、目玉焼きはいつもとろっとろの半熟なのだ。私はミカンの作る目玉焼きが大好きだ。
席に着き、手を合わせて朝ご飯を食べ始める。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
目玉焼きの黄身に箸を入れ、半熟加減を確認する。うん、今日もとろとろだ。最高。醤油をかけ、口へ運ぶ。 口の中の幸せに感動しながら、正面のミカンを見つめる。
「な、なんだよ」
「ミカンありがとね。私いつも、黄身が好きだよ」
こんな半熟の目玉焼きを作れるなんて、最高の同居人だ。
何故か顔を真っ赤にして固まっているミカンを眺めながら、私はベーコンを堪能する。
今日も最高に、幸せな朝ご飯だ。




