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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第1章
41/106

君とお出かけナウ

 天気は快晴。雲一つない青空を眺め、私はソファに寝転がりながら溜息を吐いた。

 折角のいい天気なのに、出掛ける用事が何もない。必要な買い物は今しがた終えたばかりだし、まだ昼前である。ミカンと家でくつろぐのも良いが、こんな日に外に出ないなんて勿体ない。

「ねーミカンどっか出掛けないー?」

「どっかって……どこにだ」

「どこだろう……」

「……」

 呆れたように「やれやれ」と肩をすくめながら微笑んだミカンは、台所からこちらへ向かってくる。身体を起こしてミカンに顔を向けると、その手には菜箸を持っており、この後昼食で出されるであろうミートボールがつままれていた。

「ほら、あーん」

「あー」

 口に放り込まれたミートボールを咀嚼して味わっていると、優しく頭を撫でられる。まるで母親のような柔らかな笑みを浮かべたミカンは、私の額に小さく口づけをした。

「もうすぐ昼にするから、そしたら適当に外でもぶらつこうか」

「うん!」

 心地よい日光を浴びながら、私はどこを回ろうかと午後の予定に想いを馳せた。


 ◆


 今日は日差しが暖かいので、私もミカンも薄手のパーカーで外を歩いている。ただの無地パーカーなのに、ミカンが着るとなんでこんなに格好よく見えるんだろう、不思議。

「なんだ、そんなじろじろ見て。危ないからちゃんと前見ろ」

「えへへ、ごめんね。でも危なかったら助けてくれるんでしょ」

 調子に乗るな、と頭を小突かれる。呆れたように笑うミカンの手を取り、私たちは街並みを歩き出した。

 目的は特にないが、強いて言えばウィンドウショッピングだろうか。二人で肩を並べて適当に歩き回っていると、いろいろなお店が目に入ってくる。駅前の最近できたブティックや、お洒落な小物を店先に並べた雑貨屋、女子高生たちが並んでいるタピオカドリンクの専門店。

「そういえば、ミカンタピオカって知ってる?」

「知ってるさ。あれだろ、えっと、ナウなヤングに人気なやつだろ」

「合ってるけど、その言葉は古いよ。ナウくない」

「そうか、ナウくないのか……」

 ふむ、と難しそうに顎に指を添えて考え込むミカンがおかしくて、つい笑い声をあげてしまう。ミカンは基本的に買い物以外で外出しないので、そもそも他人と接触する機会が少ない。その代わり、日中はうちにある本を読んだり、ニュースを見たりして暇を潰していると言っていた。

 そのため、今どきの流行語というものには少し疎いのだろう。まぁ”ナウなヤング”という言葉に関しては、むしろよく知っているなと驚いたけど。

 難しそうな顔をしているミカンの手を引き、女子高生達の行列へと向かう。

「折角だし、タピオカ飲んでいこ。写真も撮ろ!」

「ん、あれだろう。”いんすたばえ”ってやつだろ?」

 自信満々そうにそう言って私に笑顔を見せてくるミカン。普段しっかりしているだけに、こういう時のミカンはとても可愛らしく感じ、ついつい頬が緩んでしまう。

「そうそう、大正解。超ナウい」

 タピオカドリンク専門店の行列は長かったが、繋いだ手の温もりと隣に寄り添うミカンのおかげで、ちっとも苦にはならなかった。


 ◆


「ねぇミカンー、構ってー!」

「今夕飯作ってるナウ」

 それから数日間、ミカンは気に入ったのか、”ナウ”を連発しまくっていた。

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