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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第4章
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君とぬくぬく日向ぼっこ

 ジャー、カチャカチャ、カタン。

「〜〜〜♪」

 食器を洗う音と、穏やかな鼻唄が台所から聴こえてくる。私はそれに耳を傾けながら、陽だまりの中で微睡んでいた。

 キュッ、と水を止める音がして、台所からミカンが手を拭きながら戻ってくる。そして、

「ぉわ、な、何してるんだ……?」

 窓際のフローリングに突っ伏している私を、困惑したように見下ろした。


 怪訝な顔をしてるミカンに対して、私はフローリングをペチペチ叩いて「いいからここ座りなよ」と促す。ミカンは素直に私の傍に腰を下ろすと、窓から降り注ぐ日差しを全身に浴びて、暖かそうに目を細めた。

「あぁ、日向ぼっこしてたのか」

「そゆこと」

 今日は天気がとても良い。窓の向こうに広がる空は適度に雲が散っていて、まるで絵本の中のお空のようだ。

 日差しも適度に暖かく、日向ぼっこに最適である。

 お昼ご飯を食べてお腹もいっぱいだし暖かいしで、私の瞼はすっかり重くなっていた。

 

 うとうとしていたら、不意に頬を突かれた。顔をミカンの方に向けると、胡座をかいて太ももをぽんぽんと叩いている。

「ほら、ここ頭乗せな」

 私はすっかり重くなった身体をなんとか起こすと、ミカンの膝の上に頭を乗せて再びごろんと寝転がった。高さもちょうど良く、ミカンの体温と匂いでリラクゼーション効果が増し増しだ。

 おまけに髪の毛を優しく撫でられ、無意識のうちに口から「あぇぁ〜」と情けない声が漏れ出ていた。

「ふふ、なんだその声」

「安心感がやばいの……すぐ寝ちゃいそう……」

「いいぞ、このまま寝て」

 口ではそう言いながらも、今度は頬を揉みしだいてくるミカン。

 されるがままに揉まれていると、くすくすと愉快そうな笑い声が聞こえてくる。

「もう、寝かせたいのか寝かせたくないのか、どっちなの〜?」

 私は寝返りを打ってミカンの手を振り解き、お腹あたりに顔をぐりぐりと擦り付ける。すると、両手でわしゃしゃと髪の毛を撫でくり回された。

「林檎が可愛すぎるから、構いたくなるんだよ」

「じゃあ私も構っちゃうからね!」

 私は不意をついて身体を起こし、ミカンの肩を掴んで押し倒した。2人並んでごろんとフローリングに転がり、抱き合って顔を見合わせる。そして、お互い我慢の限界が達したように、大きな声で笑ってしまった。

「ふふ、びっくりするだろ!」

「ごめん、ごめんってぇ!」

 ぎゅーと強く抱きしめられぐりぐりと頬擦りされる。くすぐったさから逃げるようにジタバタ抵抗するも、ミカンの腕の中からはついぞ逃れることはできなかった。

 数分間そんな格闘を繰り広げた後、疲れた私たちは抱きつき合ったままひと息をついた。

 身体を動かしたら余計に眠気が増したようで、大きな欠伸が出てしまう。ミカンは私を撫でながら、「可愛い欠伸だな」と愛おしそうな眼差しで微笑んでくれた。

「このまま一緒に昼寝しようか」

「うん……もうイタズラしない?」

 その問いかけには、「どうかな」と含みのある笑顔で返される。

「もう……」

「冗談だ、もうしないって。好きな人にはイタズラしたくなるの、分かるだろ」

 そんな言い回しをされ、思わず顔が赤くなってしまう。普段は照れ屋なくせに、たまにこうして急に甘い言葉で唆してくるから、心臓に悪い。

 でも、お互い素直に愛を伝えたらきちんとその分伝え返すのが、私たちの暗黙のルールだ。

「ミカン、大好き」

「ん、私も大好きだ」

「えへへ、嬉しい……」

 もう眠気が限界だ。瞼が開けていられない。

 狭まりゆく視界の中、最後に映ったのは愛おしいお嫁さん(ペット)の微笑みだった。

「おやすみ、林檎」

 愛おしい声が耳に溶け込んで、私は幸せな気分のまま、意識を手放した。

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