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君と過ごす聖夜

「メリークリスマース!!」

 ミカンとグラスを掲げ、乾杯の音頭をとる。ミカンが人の姿になってからは初めてのクリスマスだ。今日はミカンも料理に時間をかけ、とても豪華な料理を振舞ってくれた。七面鳥が手に入らなかった、とミカンは落ち込んでいたけれど。さすがにそこまで豪華だったら正直引く。

「それにしても、ミカンとこうやってクリスマスが過ごせるなんてね」

「それは私も同じだ。そもそも人間になれるなんて思いもしなかったしな」

 手羽先にかじりつきながら、ミカンがうれしそうに目を細める。肉が好物とはいえ、食べ過ぎは良くない。と普段は控えているミカンだが、今日は羽目をはずすつもりらしい。手羽先がこれでもかというくらいに買い置きしてあったから。もしかしたら七面鳥もミカンが食べたかっただけなのかもしれない。

 ミカンが肉を解禁しているように、今日は私も飲酒の許可が出ている。最高。ミカン大好き。

「あ~やっぱりビール最高!」

「許可出したからといって、明日も仕事なんだからほどほどにしとけ」

「仕事なんて知らない」

「おい」

 いつもどおり会話を弾ませながら、いつもよりも豪華な食事を楽しむ。すごく美味しいのだが、やっぱり全体的に肉料理が多い……。食後のケーキ食べれるかな……。


~一時間後~


「もぉさぁかいしゃのせんぱいたちもみんないまごろでーとだよー」

「おい林檎、そろそろペース落とせ。顔真っ赤だぞ」

「うぇぇだってー」

「酔いつぶれても明日面倒見てやんないからな」

「とかいってぇちゃんとやさしくしてくれるのしってるよー?」

「まったく……」

 飲みすぎるなと注意したというのに、林檎はすっかり出来上がってしまった。社内もクリスマスムードで、カップルが多かったらしい。林檎はまだ異性との交際の経験がないから、それが妬ましいのだろう。でも、いずれは林檎にも好きな人ができて、結婚したりするんだろうな。そうなったら、私は……。

「……みかん?」

 顔を真っ赤にした林檎が、とろけた顔でこちらを見上げてくる。私は熱を帯びたその手をとり、

「林檎。もしも好きな人ができて、その人と暮らしたくなったら、私に遠慮しないでいい」

「どぅしたの? みかん」

「林檎の幸せが私の幸せだから、林檎が私のために我慢する必要はないからな」

 理解しているのか、していないのか。林檎は柔らかな笑顔で大丈夫だよと頷いた。

「すきなひとなんてもうとっくにいるよぉ」

「……え」

 少し戸惑う私に、林檎はかすかに震える私の手を優しく包み込んで、幸せそうに目を細めた。

「みかん、こどものころからだいすきだよ。これからもずっとずっと、いっしょにいようねぇ」

 それが、酔った勢いなのか、本音なのかは分からない。でも、きっと、本音だ。林檎は嘘をつくのが昔から下手だしな。自分でも分かるくらい顔が熱くなり、口元がニヤケてしまう。

「私も、大好きだぞ。林檎」

「んへへー。めりーくりすまぁす!」

「ん、メリークリスマス」


 大事な聖夜を君と過ごせるなんて、これほどの幸せがあるだろうか。

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