君は愛しの同居人(ペット)
上司に絞られ、同期からは呆れられ、周りに迷惑をかけてばかりな駄目OL。それは誰かって? 言わずもがな、私である。普段からミスは多い方だが、最近は忙しさに拍車がかかり、通常の三割増しでミスをしている。上司は怖いがこんな私を雇い続けてくれている会社である。見限られないよう、一心不乱に働いた。かと言って、懸命さとミスの量は比例していないのだが……。
もしもこれで一人暮らしでもしていようものなら、仕事の疲れを理由に家事をすべて怠り、挙句の果てには孤独死していたと思う。いや割と本気で。不器用な私は仕事はおろか、家事もからっきし苦手なのだ。
だがしかし、我が家には私の帰りを待っている家族がいる! まぁ愛犬が一匹だけなのだが。
「おかえり林檎。今日は寒かったろ、風呂湧いてるぞ」
玄関扉をを開ければ、愛犬が優しく微笑みながら出迎えてくれる。
「そうだ。リクエストしてたカブと柿の酢の物。作っておいたからな」
正しく言えば、犬ではなく狼だ。言うなれば、愛狼?
「あ――あと」
私の上着を受け取りながら、愛しの狼は頬を赤らめて私の頭を撫でた。
「今日は満月だから……毛深くなる。夜の運動は……我慢してくれ」
もっともっと正しく言えば、狼ではなく、人狼だ。狼女だ。
灰色の髪を雑にくくった彼女は、私の同居人―もとい、ペットである。
「別に毛深くなっても私は気にしないのになー。ミカンは恥ずかしがり屋さんだね」
「そうか、酢の物いらないのか」
「ごめんなさいごめんなさい!!」
取り上げられそうになった皿を無事取り戻し、私は親子丼に箸をいれる。私と違って家事が得意な愛狼―ミカンの作る料理はとても美味しい。狼に生活力で負けている件に関しては、とっくにプライドを捨てているため気にならない。プライドでお腹は膨れないのだ。
食卓を挟んで向かいに座る彼女の凛々しい顔立ちに見惚れていると、ミカンが口元に鶏肉を運びながら不思議そうに首を傾げた。
「どうした林檎。冷めるぞ」
「あぁ、うん。ミカンてかっこいいよなぁって」
別に悪気があったわけではないが、ミカンは私の言葉にむせてしまった。急いで背後に回り、背をさすってやる。普段は凛としているのに、少ーし褒めるとこれだ。どうしてミカンはこうも押しに弱いのか。肉食獣のくせして夜はネコだし。いや、肉食獣だからネコで合ってるのか。
げほげほとむせながらも、ミカンはその切れ長の目に涙をうっすら浮かべて私を睨み付ける。
「林檎、そういうのは控えてくれと何度言えば……」
「だって本当のことだし」
今のは悪気があってやった。反省はしていない。
さらにむせるミカンの背をさすりながら、私の頬は緩みきっていた。もしミカンがいなければ、今頃私は――。
「ありがとね。ミカン」
「げほっ、そこはごめんね、だろう!?」