暴走の始まり
____このゲームは、現実を超える____
そんなキャッチコピーのゲーム、スキルフリーオンライン__SFO__のゲームソフトとゴーグルの入った箱に熱い視線を向けている平凡な青年が一人、ベッドと机だけが置かれた殺風景な部屋に立っている。
「フヒッ、フヒヒッ、やっと手に入れた、やっとだ、世界初のVRMMOだ、約束が、達成したッ!!はあ、はあ、はあ。」
そんな奇声を一人で上げている男の名は、高山玲。株で生活しているニートである。
「ふう、そうだ、あいつに電話しとくか。」
そして、無造作にポケットに手を突っ込み、スマホを取り出すと、ある人物に電話をかける。
「おう、久しぶり、SFO買ったか?」
「おう、買ったに決まってんだろ、バカにしてんのか?」
「まあまあ、そうカッカしないで、ね?」
「はあ……調子狂うわ、さっさとゲームしようぜ。サービス開始は15時だぞ。」
「おけ、さっそく始めるか、スキルとかは内緒な。」
「オーケー、始めるか。」
「じゃあ向こうでまた会おうぜ。」
「おう。」
その人物とは、例の約束をした相手であり、至って普通の社会人で親友の山坂光輝である。
そしてベッドに横たわり、耳まであるゴーグルを被り、起動ボタンを押すと、意識が闇に飲まれていった。
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「これがキャラクリエイト画面か。」
目の前に広がる真っ白な空間を見ながら言う。すると、機械的な音声が聞こえてきた。
『キャラクリエイトルームでは、髪の色や目の色を変更することができます。骨格の変更などは現実の肉体と離れすぎてしまうためできません。』
「ほー、なるほどね、陰キャだから目立つ髪には出来ないな、恥ずかしいし、このまんまでいいか。」
白い空間に浮かぶ自分の肉体の感想は、黒髪、黒目の平凡な顔、普通の肉体、端的に言えば只のモブだった。
キャラクリエイトを終えると、目の前にボードが現れた、そのボードにはスキルや職業が書かれてあった。
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名前{設定してください} 種族{人間}
ジョブ{設定してください}
スキル{設定してください}
{設定してください}
{設定してください}
装備{なし}{なし}{なし}
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「なるほど、適当にいじるか。」
ジョブの種類は最初は少なく、戦士、魔術師などがあった。スキルの種類は豊富で、剣術、火魔法、トリッキーなのでは爆破技師などがあった。
不思議なことに、種族を変更することが出来なかった。
暫く経ち、完成したステータスがこれだ。
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名前{カルム}Level1 種族{人間}
ジョブ{サモナー1}
スキル{サモン1}
{体術1}
{設定してください}
装備{初心者のワンド}{綿の服}{綿のズボン}
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「結構すぐできたな。ってか、スキル枠1つ開いたな~まあいいや、スタート!」
画面の端にある時計の時間を確認すると、2035年6月4日14時59分だった。
「ピッタリだな、あっ、もう15時だ!ログイン!」
そしてログインボタンを押すと、意識が闇に飲まれていった。
少しずつ暴走していく主人公、もうブレーキは存在しないッ!!
さあ、だれがこいつを止めるのか!
次回、黒王号現る!!