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プロローグ
リズミカルに尻尾をふらふら左右に揺らめかせながら二本の足で歩く、一匹の黒猫。
墨を塗ったように真っ黒な毛並みと黄金色の瞳。
4本の足先は白く、まるで靴下を履いているよう。
肩から灰色のマントをはおり、腰には立派な拵えのエストックを差している。
そんな彼は今、身の丈程もある藪を掻き分けながら、道なき道をずんずんと進んでいる。
「お、見えてきたにゃ」
視線の先に、僅かに開けた景色が見える。彼はそこを目指して更に歩みを速める。そして…
眼下に広がる海。見渡す限りの海。
東の山脈を迂回する為に南へ南へと進んでいたジンジャーは今、
迷子になっていた。
「…あれ?」