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ジンジャーとネズミの騎士 その5





「で、これからどうするつもりにゃ?」


問いかけるジンジャーに、ネリは答える。


「うん、とりあえずは知り合いの所にやっかいになろうと思うんだけど・・・・・・まだちょっと歩くのがなあ」


「だが治るまでここに居座り続ける、って訳にはいかんぞ」


なにしろ目立つからな、とジェットが肩をすくめる。


「乗りかかった船、にゃ。その知り合いの所まで運んでくにゃ」


「運ぶって、どうやって?」


「だっこ?」


「いや肩かすだけでいいだろ」


わちゃわちゃと話し合う一人と二匹。ともかくも、ジンジャーはもうしばらくネリ達に付き合う事にする。




酒場を出ると、外は既に夕闇がせまっていた。


人混みを避けるように、薄暗くなった路地を歩くジンジャー達。


「それで、その知り合いの方はどちらに住んでるにゃ?」


ジンジャーに肩をかりつつ、覚束ない足取りで歩きながらネリが答える。


「ああ、彼女は町外れの・・・・・・まあいわゆる貧民区に住んでるんだ」


「元々は僕らと同じ出身なんだけど、山を出て町に定住する事を選んだ、ちょっと珍しい人でね」


「訳ありか?」


ジェットが尋ねる。


「いや、絵を描く事が大好きな人でね。好きが高じて、町で色々学びたくなったらしい。おもしろい人さ」


「山の民、と一口に言っても色々な人がいるのにゃあ」


ジンジャーのなにげない呟きに、深くネリがうなずく。


「そうなんだよね・・・・・・それを当たり前のように受け入れられる世の中になれば、良いんだけどね」


「受け入れられるかどうかなぞ考えず、やりたい事やり続けてりゃあ良いだろ。そうすりゃそれが当たり前になるさ」


どうでも良さそうに言い放つジェットに苦笑しつつも、ネリがそれに答える。


「確かにそれくらいの考え方で良いのかもしれないな・・・・・・お前はやりたい放題すぎる気もするけど」




そうしてしばらく裏道を選びながら歩き続けていると、景色が変わり、町並みが雑然とした様子になってくる。


港町の明るい猥雑さとも違う、どこか暗い雰囲気を含んだ風景の中に、家々がくっつき合い混ざり合うようにして建ち並ぶ。


視界の中にむりやり詰め込んだようなその不自然さに、ジンジャーは驚きつつも興味深くあちこちを眺める。


「あまりジロジロと見ない方が良いよ。余計な騒動に巻き込まれかねないからね」


そんなジンジャーを、そっとネリがたしなめる。


「む、失礼、にゃ」


ぶしつけな態度を反省するジンジャー。


「さて、そろそろだけど・・・・・・」


「待て、いるぞ」


話しかけたネリの言葉を、短くジェットがさえぎる。


「・・・・・・敵にゃ?」


「ああ、まだこちらには気づいてないようだが・・・・・・おい、こっちだ」


ジンジャー達は路地のすみ、うずたかく積まれたゴミとも荷物とも区別のつかない場所へと一旦身をひそめて辺りを伺う。


「前の家屋の軒下に3人、右の屋台と左の荷車の陰に2人ずつ・・・・・・あと家の中からも何人かが外を伺う気配があるか。どう見る?」


「数人ずつまとまって各所に散らばり、そこから動く気配は無し。こちらの目的地がばれた上での待ち伏せかにゃ」


「そんな、まさかジンガ・・・・・・」


動揺するネリを横目で見ながら、ジェットが冷静に尋ねる。


「ジンガ、ってのが知り合いの名前か?現状からすると捕まったか裏切ったかどちらかだが」


「彼女は裏切ったりしない」


声を落としつつも、ジェットをにらみながらはっきりと断言するネリ。


「助けにいかないと」


立ち上がろうと腰を浮かすネリを押さえて、ジェットが諭すように声をかける。


「今のお前の足じゃ無理だ。頼る当ても無くなった以上、まず町から出る事を考えろ」


「だが痛みはするけど一応は歩けるようにはなったし・・・・・・いや、お前の言う通りなんだろうな」


ネリはそう言うと、うつむいて考え込むように黙る。しばらくして顔をあげると、ジンジャーとジェットを見つめた後に頭を下げる。


「だけど彼女を見捨てる事なんて出来ない・・・・・・自分勝手なお願いだとは思うけど、どうか彼女を助ける為、力を貸して欲しい」


「いや当然助けるぞ?」「当然助けるにゃ?」


「あれ?」


ぽかんとするネリ。


あきれたようにそろってため息を吐くジンジャーとジェット。


「あのなあ、俺達は一応騎士目指してるんだぞ?」


「罪無き人が捕らわれているならば、助けるのが当たり前にゃ」


「あ、ああそうなんだ。いやごめん、てっきり彼女を見捨てて逃げろって話かと思って・・・・・・」


「普段でさえ荒事じゃ役立たずなヘタレのお前が、更に怪我までしてる状態でいっちょ前に人の事心配してるんじゃねえ、てめえの身を守る事をまず考えろボケ、って話だよ」


ネリの謝罪をジェットがにべもなく切って捨てる。


「ちょっといつも以上に辛辣じゃないかな・・・・・・いやその通りなんだけどさ・・・・・・」


「そこで落ち込んでるネリの事は放っておくとして、どりあえずどうするかにゃ?」


「君まで!?ちょっと僕の扱いひどすぎないかな!」


「うるせえ、ばれるだろうが」


抗議するネリの尻をジェットが蹴り上げると、一応気を遣ってか静かに悶絶するネリ。


それを横目に眺めつつ、ジンジャーとジェットは相談を始める。


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