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ジンジャーとネズミの騎士 その2




南州候の好意により、ネゴラ滞在中の宿として屋敷の一室を宛がわれたジンジャー。


彼は今、丸まって寝やすいように、シワ一つ無くぴっしりと整えられたシーツをせっせとくしゃくしゃにしている。


そんなジンジャーの様子を、ヘイゼルはベッドの端に腰掛けて楽しそうに眺めていた。


「なんだか良くわからないけど、こだわりがあるのね」


「このくしゃくしゃ具合が寝心地を左右するのにゃ……というか、本当にこの後も付いて来るつもりなのにゃ?」


「しつこいわねえ。細かい事をぶにゃぶにゃ言ってるようじゃ、立派な騎士になれないわよ?」


「ぶにゃぶにゃとか言ってにゃいし」


「さっき言ってたわよ」


「言ってにゃい」


ベッドメイキング?を終えたジンジャーは鼻にしわを寄せたまま、ふんすと立ち上がる。


「あら、どこかに行くの?」


「散歩、にゃ」


「あ、そ。夜までには帰ってくるのよ、南州候が色々と準備してくれてるみたいだから」


ヒラヒラと手を振ってヘイゼルが答える。


「ん、付いて来ないのにゃ?」


「ちょっと南州候に聞いておきたい事があるのよ、先の戦争での魔女の事とかね。元々それもあってここに来たんだけど……なに、付いて来てくれなくて寂しい?」


ニヤニヤしているヘイゼルの事は相手にせず、ジンジャーは尋ねる。


「魔女の事って、先代の南の魔女様とか北の魔女とかについてにゃ?あ、西の魔女様の活躍とかだったら後で教えてほしいにゃ!」


「ちがうちがう、私が知っておきたいのは彼女達の事じゃないわ……まあちょっと気になる程度の事よ。それより、さっさと行かないと散策の時間が無くなっちゃうわよ」


「ん、そうにゃね。じゃあちょっと町に行ってくるにゃ」


ヘイゼルの答えになんだかひっかかりつつも、とりあえずジンジャーは彼女の言う通り早めに出る事にする。


「はい、いってらっしゃい。迷子にならないようにね」


「ま、迷子とかならないし」


目が泳ぐジンジャー。





屋敷を出て、ジンジャーは川に沿って続く遊歩道へと立ち寄る。


川には人や積荷を乗せた色とりどりの小船が浮かび、行きかう人々その景色を楽しんだり、あるいは歩道から見える町並みを眺めたりしながら、思い思いに過ごしている。


昼下がりのゆったりした空気の中、そんな風景を眺めたり先ほどの南州候の話を思い出したりしつつ、ジンジャーはぶらぶらと歩道を歩いていた。


その時、ジンジャーの前をふと小さな影がせわしなく横切ろうとし、ジンジャーに気付いたように立ち止まる。


「うん?」


「にゃ?」


それは腰にマチ針を差したネズミだった。銀色の胸当を着て、肘から先に掛けては手甲を、足には鉄靴を履いている。兜の上には黒い羽根飾りがひとつ。


ジンジャーのヒザくらいの背たけを起こしてこちらへと向き直るネズミ。驚いたように大きな黒い瞳をくりっとさし向けて、ジンジャーをじっと見つめる。


「にゃ?ネズミの……騎士?」


「おお?猫の…なんだ?」


お互いにちょっと面食らいつつも、あわててジンジャーは自己紹介をする。


「にゃ、私はジンジャー・ビスケット。騎士になる事を目指して旅をしている猫、ですにゃ」


ぺこり、と頭を下げるジンジャーに対して、ネズミはびっくりしたように更に目を大きく見開いてそれに答える。


「なんと、ご同類か!俺の名はジェット……ジェット・パウンスだ。同じく騎士を目指すネズミだ」


そう言うと、ネズミのジェットはにかっとジンジャーに笑いかける。


「いやまさか、俺以外にも人間でもないのに騎士にあこがれるヤツがいるとは…しかも猫とはな、わははは!面白い出会いもあったもんだな!」



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