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ジンジャーと南の魔女 その3




翌日。


町に来た時以上に自慢の黒毛をずたぼろにしたジンジャーが、よたよたと町の出口へと歩いて行く。


「うう…これも冒険…なのかにゃあ…」


結局あの後ほうほうの体で店から逃げ出したジンジャーは、宿もとれずに浜辺で夜を明かすはめになっていた。


目をしょぼしょぼさせながらも、とりあえず次の目的地ネゴラへと向かう事を決めたジンジャー。


街道へと向かい、俯きながら歩いていると、ふと視線を感じて顔を上げる。


「ん、なんにゃ…?」


視線の先には、街道へと出る道のど真ん中に堂々と腕を組んで立つ少女。その足元には簀巻きにされた男が転がっている。


「えぇ…」


なんで居るの。口元まで出かかったその言葉を飲み込み、ジンジャーは少女を見つめる。


「旅立つのね、ジンジャー」


ゆっくりと、確認するように少女は問いかける。


「行く先は、ネゴラよね」


「…そうにゃ。昨日話した通り、南州候の所に挨拶に行こうかと…」


嫌な予感をひしひし感じつつも、律儀に答えるジンジャー。


にやり、と少女の口元が釣り上がる。


「よし、じゃあ行きましょうか!」


「は?」


状況が飲み込めずぽかんとしたままのジンジャーに構わず、少女は続ける。


「昨日一晩考えたの…あなたが私の使い魔になれない理由は理解できたけど、でもいくら考えてみてもあなたと一緒に旅をしちゃいけない理由は思い浮かばなかったわ」


「そしてあなたはこれからネゴラへと旅立つ。私もネゴラへ向かう必要がある。なら何の問題もないじゃない、って」


「え…どゆことにゃ…?」


「昨日言ったでしょ、こいつを南州候の屋敷に投げ込んどくって。だからちょうど良いじゃない。私もネゴラまでついてってあげるわ!」


「すげえいやです」


「あん?」







簀巻きにされて猿轡をかまされた男を荷車に乗せ、ヘイゼルとジンジャーは街道を歩いて行く。


猫と少女と簀巻きにされた男。その訳の分からない組み合わせに、行き交う人々は避けるように道をあける。ドン引きしているとも言う。


そんな事には一切構わず、機嫌よく鼻歌を歌いながら前を歩くヘイゼル。


ジンジャーとしては騎士を目指す者として、元使い魔として、自分なりの信念があって断ったはずなのに、


そんなヘイゼルの嬉しそうな姿を見ていると、なんだか自分が意固地になっていただけなような気分になってしまう。


「なんかずるいにゃ」


「え、なによ突然」


べつにー、と答えつつも、何故かよくわからないけど面白くないジンジャー。


きょとんとした顔で、不思議そうにこちらを見つめるヘイゼル。


「…ま、いいかにゃ」


この先も振り回されそうだなあ、まあ昨日お店で別れた時みたいな顔されるよりはいいかにゃ。


そんな事をなんとなく考えながら、荷車を引いたジンジャーはヘイゼルと共にネゴラへと向かうのだった。





「…しかしまさかこんなにも早く悪人を簀巻にする事になるとは…これは騎士になる日も近いかにゃ」


「何をわけのわかんない事言ってるのよ。さっさと行きましょ!」



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