プロローグ
大陸の西端にあるジンガの村、その更に西の森には美しい魔女が住んでいる。
星降るような春の月夜の晩に、西の魔女の使い魔としてオスの黒猫、ジンジャー・ビスケットは産まれた。
最後の一匹がようやく産まれたのを確認し、見守っていた魔女はほっと小さく息を吐き出す。
「ふむ、みんな無事産まれたようだね…良く頑張ったね」
長く伸びた淡い黄金色の髪をかき上げつつ、そう呟いて魔女は母猫を労わるように優しく撫でる。
母猫は産まれた子供達の様子を心配そうに見つつも、ゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らす。
「それにしても、末に産まれたコイツは小さい割に随分ジタバタと動き回るねえ」
そう言って最後に産まれた子猫をひょいとを抱き上げる魔女。
墨を塗ったようにまっ黒な毛並みと黄金色の瞳。
4本の足先は白く、まるで靴下を履いているように見える。
6匹兄弟の末っ子ジンジャーは、兄弟で一番小さくて、一番元気な子猫だった。
まだ目がよく見えないジンジャーには魔女の姿はぼやけて判らなかったが、
ただほのかに感じる魔女の暖かなぬくもりと甘い匂いがどこかに離れて行ってしまわないように、無我夢中でしがみついていた。
そんなジンジャーの様子を見つめながら、静かに微笑む魔女とそれを優しく見守る母猫。
彼女達に向かってジンジャーは元気良くにゃあと一声、ちょっとかすれた鳴き声を上げた。