ヨウヅキ endG まあいいか
「うん、ごめんね」
暫くして宇宙艦所属の医師が来て最新AI機器の診察を受ける。
《37度、初期の風邪です》
軽い風邪だと電子音声が言う。
「今日一日、安静にしてれば治りますよ」
医師は風邪用の薬をくれたので飲んで眠る事にした。
「ふぁ~よく寝た……」
目が覚めると額にタオルがのっていて、隣を見ると眠っているリゼルがいた。
「あ、おはよ」
「これリゼルちゃんがしてくれたの?」
「うんリーダーがチセイちゃん熱出たって言ってて様子見にきたんだ」
まあたしかに、男所帯なので彼女が来てくれるのは妥当だよね。
「熱はどう?」
「もう爽快だよー」
「あ、お早うチセイ」
「ヨウヅキは?」
真っ先に私のところにきてくれそうな気がしていたんだけど――
「それが、昨日から見当たらないんだよね」
マルトがヴァイオレットさん達のほうをチラりと見る。
「先に言っとくが、お前達のリーダーが消えた事は俺達の組織とは関係ないぞ」
ヴァイオレットさん達の組織と宇宙軍プラネターは水面下で敵対しているらしい。
「まあ、ここに君らが来てて、リーダーが消えるなんてあからさまに摩擦作る真似はしないか」
――そうはいいつつも、マルトはまだ疑っている様子。
「大変です!!」
「どうしたロジン」
後方掛の少年がマルトに耳打ちで報告すると彼は驚く。
ロジンは改めて調査に戻ると言ってこの場から去る。
「なんだって?」
キンモクセイがマルトに尋ねる。
「ヨウヅキがプリンズ星に捕まった」
「マジかよ……シホウ星ならまだしも、監獄行きかよ」
夜垣さんが呆気にとられている。
「監獄ってヨウヅキが悪いこと何かしたってこと?」
「投獄の理由はマクス星のマージン領の令嬢殺害容疑らしいよ」
それはヨウヅキの婚約者らしく、それで即投獄らしい。
「プリンズは裁判なし現行犯逮捕で一生牢屋、シホウ星では裁判あり、金をつめば懲役なしで即釈放なんだよチセイちゃん」
プリンズでは疑わしきは罰する理論だとヴァイオレットさんが説明してくれた。
理解は出来たけど、ヨウヅキが一生牢獄行きなんて、納得したくない。
「なんでこんな事に……」
あのとき私が彼をひき止めていれば、こんな事にはならなかったの?
【バッド:毒蛇の夜夢願】