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ヨウヅキ endC いかない
「いかないよ」
婚約者さんに悪いから、と付け足して言うとヨウヅキは苦い顔をした。
「そうですか、ではまた……」
◆ヨウヅキがいってしまう!
→〔ひきとめる〕
〔まあいいか〕
「せっかく誘ってくれたのにごめん、なんか今日あんまり体調よくなくて」
「そうだったんですか、気がつけなくてすみませんでした」
ヨウヅキが体温計を取りにいくといって、私は部屋で待つ事になる。
「お待たせしてすみません」
嘘から出た真、どうやら熱があるらしい。
久しぶりに熱を出したが、家族を亡くした子供の頃以来だろう。
「では医者を呼びますから」
どうしてかわからないけど、私はヨウヅキを行かせたくない。
「まって、そんなに酷くないからいいよ」
ヨウヅキのコートをつかんでひき止めた。
「どうしました?」
風邪のせいでおかしくなってるのかもしれない。
「あのね……眠るまでそばにいてほしいな」
「わかりました」
ヨウヅキは手袋をしたまま手を握る。柔らかい布でなく医療用ゴム製だ。
「ありがと」
――例えそれが仮初めの安らぎであっても、今は寂しさを忘れられる。
【束の間の休息】




