ドルゼイ route サタナス
たまには体にいいものを食べないと健康に悪いからサタナスにしよう。
「わ~」
サタナスは意外と外国の田舎っぽい田畑の風景が広がっている。
「あっ!!都星からのお姫さんだべ」
「姫!?」
定食屋でいかにも田舎っぺ口調の人に囲まれた。
「お嬢さん、最近は一人用鍋が流行ってるんですよ」
「へーじゃあそれで」
――ドルゼイの治める国だから、ガチガチの軍人ばかりかと思った。
「椎茸おいしー」
「それは一度凍らせたもんなんですよ」
店の人いわくとりあえず野菜類は凍らせると良くなるらしい。
「あ」
ヨウヅキとマルトが隣の店から出てきた。
「奇遇だね。二人は何食べたの?」
「私はA定食です」
「オレは掛け蕎麦」
ヨウヅキはともかくマルトが蕎麦を食べるイメージはなかった。
「ここって不思議。建物は洋なのに蕎麦とか」
「そうですね、テラネスにも地球の蕎麦はありますから最初に訪れた際は驚きました」
二人はそろそろ宇宙船に戻るらしい。
「せっかくですし近くの温泉に行かれては?」
「えっ温泉なんて初めて!」
■■
「ドルゼイ様のおなーりー!!」
「「我等が主君!」」
――艦内では配下達が一糸乱れぬ列を成している。
「創星記念日を来月に控えている。よって鋭気を養う為に今日から7日、自由に羽休めをするように」
「ははー!!」
配下達は一斉に休みを取りに走るが、実際は交代制で全員が星を出るわけではない。
「我々は城の管理をしますが、陛下はどうなさいますか?」
「市街地へ行くぞ」
ドルゼイは服装を変えて視察へと向かった。
■
チセイの到着した温泉とは、旅館ではなくホテルであった。
そこは洋式なんだと思いながら、登録手続きをヨウヅキに任せる。
「ありがとう」
「やはり、世話係を呼んだ方がよろしかったでしょうか?」
「おい!」
同室ならよかったのに、と言い出したのでヨウヅキがマルトにツッコまれた。
「いいよ、元々そういう世話係とか慣れてないし」
「了解しました。何かあればお呼び下さい」
マルトとヨウヅキは経費のため、仕方なく同室らしい。あまり仲はよくないみたい。
私は早速、温泉に入りに行くことにして、ついでにアイスでも買おうと思っていた。
するとどこかで見たような薄い紫がかった長い髪の男の姿を見かけて後をつけてみる。
「誰だ?」
「うひゃ!」
すぐに気づかれてしまった。
◆どうする?
→〔出る〕
〔隠れる〕
もうバレているので仕方なく姿を見せると彼は目を見開き驚いている。
「貴様は!」
「やっぱりドルゼイ!」
どうしてこんなところに星の偉い人が一人でいるんだろう。
「吾輩は視察で来ている。よって見逃してやろう」
「いいの?」
私むこうの仲間かなり撃破しまくったような気がするんだけど、いいのかな。
「ところで温泉はどうだ?」
「行こうとしてたらドルゼイがいたんだよ」
そういうと、なら早く入りにいけと急かされて彼は私を女湯の前に連れていき、自分も行くついでだからとそそくさはいっていった。
温泉は水着で入る洋式でサウナやエステもある。入口が別なだけで中は混浴。
「もはやプール?」
「お、そこのかわいこちゃん!あがったらオレらとあそぼーぜ!」
ナンパなんて初めて、本当にいるんだなあ。なんて関心をもっていると、後ろから誰か抱き着いてくる。
♦誰かな?
〔ロジン〕
→〔ドルゼイ〕
「ドルゼイ?」
「この女は先約があるんだ」
この声は間違いなくドルゼイで、首を横にするとやはり彼が私を背後から抱きしめていた。
「ちっ!」
「彼氏持ちかよ」
ナンパ男達があっさりさがってくれたので、騒ぎは起きなくて済んだ。
それにドルゼイはどう考えても戦闘向きじゃないだろうから、喧嘩にならなくて本当によかった。
「ありがとうドル……むぐ!」
「公ではディーと呼べ」
口を手で塞がれると、そういえばお忍びだった事を思い出し返事代わりにコクコクと頷いた。
「どうして助けてくれたの?」
「助けたわけではない。今は宇宙軍へ同盟を持ち掛けようとしていたところでな……」
偶然ナンパされていた私を利用しただけで助けるつもりはなかったという感じ。
それで敵対している軍との関係を取り持とうなんて、理由としては弱いんじゃないかな。
「そうなんだ。でも助かったから偉い人に話しておくね」
「待て、そんな小さな事は言わなくていい!」
ドルゼイはわたわたと慌てだし、私の前に立ちふさがる。
「でも同盟したいんでしょ?」
「それは、そうだが……」
“そうなんでしょ?”と私は目で訴えた。すると彼はどうしたのか頬を赤らめ、私と目を合わせない。
「あはは、きっとこの御仁は貴女を打算なく助けたんですよ」
いきなり黄緑髪の少年が表れる。そういえば戦艦内のどこかで見たことがあるような。
「貴方だれ?」
「ち、違うからな……!」
名前も教えてくれないまま、少年は去っていく。やれやれと、ため息をついてドルゼイは温泉に浸かる。
私も浸かるように促され、隣に入ると彼はさっと入っただけですぐ上がってでていった。
■
「フルーツ牛乳ください」
温泉あがりのフルーツ牛乳は世間的なイメージだからこれが初めてだった。
飲み終えたら日帰りなので明るい間にヨウヅキ達と合流して戦艦に戻る。
「あれ、ドルゼイ?」
「どうかなさいましたか、セイ様」
私はローブの怪しい人に追われているような彼を見かけて、気がつけば追いかけていた。
「くっ……!」
「ええかげん、観念してくれへん?」
ドルゼイは壁に追い込まれ、額に拳銃を突きつけられていた。
私は少し高いところに行く。私の銃はマシンガンで、単発に切り替えることができるもの。
しかしライフルではないのでスナイパーのような狙撃には向かない。
だから拳銃に届くギリギリを狙いにいく。さすがに近くにいる人間を殺すのは嫌だと思うからだ。
「ぐ!」
弾丸は銃に命中して刺客の狙いが彼から外れ、その隙にドルゼイは逃げることができた。
すると刺客はこちらに気がついたようで、私を見てにやりとしてこちらに別の長い銃で威嚇してくる。
挑発の弾が自分に当たらないようによけると本格的に打たれ、それをこちらも銃弾で相殺した。
「チッ!」
向こうは弾切れを起こし落とした銃を拾って撤退したらしい。
私の銃は自動で弾が転送補充されるシステムらしく切れることがないらしいのでよかったと思う。
「おい」
「うわあ!」
目の前の敵がいなくなって油断していると後ろから声を掛けられたのですごく驚いた。
私とドルゼイがしばらく沈黙しているとマルトが私を見つけたという声がして、ヨウヅキも来る。
「お前、なぜあんな無茶な真似をしたのだ?」
沈黙していた彼がようやく口を開いた。
「なんでってドル……ディーが追われてたから、放っておけなくて……」
「だが銃をもった相手だぞ。助ける理由はなかったではないか」
私は銃を持っているけど、ただの弱い一般人だから当然の反応だろう。
◆どうやら彼は喜んではいないみたい。
〔迷惑だった?〕
→〔もうしないよ〕
「もうしないよ。私みたいな小娘に助けられてプライドが許さないって感じなんだよね?」
「いや、そうは思っていない!」
ドルゼイは私の腕を軽くつかんで彼のほうを向かせる。何か言いたいことでもあるのだろうか?
「てかこの人」
マルトはディーがドルゼイと気づき始めている。ハラハラしていると、ドルゼイは腕を離した。
「感謝している……」
それだけ言うと走って屋上から飛び降りてしまった。私達は何もなかったかのように帰還する。
彼のことを話すべきか迷ったけど、何もされていないので聞かれるまで黙っておこう。
“地球の少女よ”
◆
〔声がする〕
→〔無視〕
■
「第一部隊に新メンバーが入ることになった」
「新入りですか?」
「といっても他の部署から補填に回しただけだ」
ハレビレスが指を鳴らすと、入ってきたのは黄緑髪の少年だった。
「なんだ。ロジンか、またキンモクセイの新人イビリが見られると思ったのにな」
「うるさいよ」
目が合った彼はこちらに微笑んだ。
◆どうしよう?
→〔目をそらす〕
〔微笑む〕
気まずいので会釈しておく。




