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キンモクセイ endA 従うフリ

「もういいよ!私は貴女のいうとおりにするから命令でもなんでもすれば?」

「……命令など、そんな、わたくしはあくまでも貴女に仕えるものです!」


ヘマトは想像もしていなかったと困惑の顔。


「そっか……」


私はヘマトの額に銃を向けた。


「ひっ!」

「私ナイフを向けられてすっごく怖かったんだよね」


やられたら何百倍にしてやり返さないとね。


「僕は結局かっこいいシーンも無く終わりか……」


ヘマトはあっさり気を失って、私達は神殿から逃げられた。


「セイ様!」

「キンモクセイ!」


二人も無事に抜け出せたみたい。


「捕まってすぐにこのお姉さんが助けてくれたんだよね」

「マリー・カミラさん!」


なぜか神官服ではない黒いシスター風の服になっている。


「……カミラでいいぞ」


今の彼女は初対面の印象と真逆、気だるそうにワイルドな葉巻の煙を吹いてる。


「なんか一昔前のアニメにこんな感じのキャラ3人くらいいたような……」


よくわからないことをキンモクセイが呟く。


「……つまり、吸血鬼ハンターの貴女が神官長の調査をしていたらたまたま……と?」

「ああ、人拐い事件と吸血鬼事件は大体重なるんでな」


吸血鬼なんて都市伝説かと思ってた。


「アタシは本部に戻るよ70年ぶりに懐かしい顔も見られた事だしな」


カミラさんはポンと軽く私の頭を撫でて迎えの車へ乗って去る。


「70年ってあの人いくつだよ」

「地球換算でしょうか?」


遠くから威嚇発砲がきこえる。



「ああ、一日で色々あったなあ」

「人質にされただけなのに任務より疲れた」


あれからヨウヅキが報告に行くが、ハレビレス艦長は予想していたと言わんばかりに平然としていたらしい。


「どうかしたのキンモクセイ」

「普通ならピンチを颯爽と切り抜けて進展する展開があるはずだったのに、ぽっと出のハンターが全部かっさらってった」


現実はアニメみたいにはうまくいかないって事だね。


「でも銃を向けるキンモクセイかっこよかったよ」

「向けただけじゃん」


私相手にカッコいいことをしても仕方ないと思う。


「カッコいいシーンはいつかできる彼女にでも見せなよ」

「……鈍いやつ」


なにが気に入らないのか、余計にいじけだした。


「えっ?」


気がつくと私は壁に追いやられていた。


「物語は好きになる理由がわかりやすいし過程も長いけど……現実は違うみたいだ」


キンモクセイが目をじっと見つめてくる。


「……ち、近いよ!」

「これで僕のいいたい事は伝わった?」


普通の仲間にはやらない行動なので、私にもハッキリ理解できた。


「それは本気なの……?」

「こんな無駄なこと冗談でやらないから」


目を閉じると、額に口づけが落とされた。


「続きは一年後にしてあげるよ」


キンモクセイは私の指に指輪をはめてから部屋に戻っていく。


「なんで一年後……?」



『転校生のビジュナス君です。みんな仲良くしてあげてね』

『はーい』


両親のいない少年は兄達の仕事の関係で海外から日本へやって来た。


『おーいビジュナス~サッカーしようぜ』

『うん』


彼には海外からの転校生ということから、すぐに友人ができた。


『ほらほら捕まえてみろ~』


赤毛の青年が走っている。


『待ってよ~』


髪を二つに結った少女がすれ違って、青年を追いかけていた。



あれから一年が経ち、あのときの意味がわかった。


「結婚しよ」

「え、キンモクセイって何歳?」


彼は強引に指輪を奪い取って黄色い宝石(トパーズ)の指輪をはめた。


「今日で18歳、親も兄もいないからハレビレス艦長に承認してもらうよ」


私の一つ上だったなんて想像していなかった。


「う、うん」

「それから、僕の事は“ビジュナス”って呼ぶように」


――どこかで聞いたことがあるような気がした。


「わかった。ビジュナス」


名前を呼ぶと目をそらされた。


「……兄以外から呼ばれるの久々」


彼が照れているのを見るのは久々だが、印象的な日を思い出す。


「そういえば、ヴィテルの由来を聞かれたときにうっすら名前を呼ばれたことがあったよ」


“ヴィテルってなんでヴィテルなのヴィサナスとジュプスならヴィジュとかじゃないの”


あれは偶然だったのに、ほとんど合っていて自分でも驚く。


「ところで、返事は……」

「答えがわかってるんだから、する必要ないでしょ?」



【ハッピー:アイシテル】

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